秋晴れの下の献身

フィルムの最期


灰色になった世界の中で
君への想いだけは、
桜色に、発光していた

その、事実だけが、わたしの生存を知らせている

宇宙の密度と、信号機は、荒唐無稽

桜貝と同じ形の、わたしの思い出が、紫外線に焦がれている

わたしは、すっかり、無くしてしまった、中心部を、すっかり、無くしてしまった、

ここに、いる、その事実は、何の足しにもならない事象であった

秋晴れの下の献身


君の顔すら見れなくなるなら
あんなこと言うんじゃなかった
頭を垂れる稲穂の中で
秋晴れの空に痛々しい自分を見つけた

君を見れないのは私が受けた罰であって、君が私のことを好きじゃなくても、嫌いになってしまっても、私はまだ君の味方でいたいし、罰を受けたまま君を守ることだって厭わない。

君が傷付いたなら理不尽に私を傷付けて君の傷を癒してほしい。

私を見たくないなら、私は自分のキリトリセン通り、のりしろだけを綺麗に残して、他のところは全部、生まれる前の日に返して来たって構わない。

君への思いは折り目正しく、実直に、第何段階にも、進行していくってわかっている。

君が私のために足を止めたって、その幻で、精々私は定かではない寿命まで生きるよ。

君が、ただならぬ君が、私の全てを終わらせて、私の全てをスタートさせたことは、まぎれもない、今の私の事実であって、それはどんなに痛くても、始まってしまったら、あとは終わりまで進めないと、次のゲームを買うことは出来ないのと同じだった。

空気が澄んでいると、胸の痛みは鮮明になる。

絶望は、終わりであって、完結だった。私は、絶望するわけにもいかなかった。

私が明日、どんな姿になっても、君が始めた私を、終わらせることを、私が、選ぶわけがなかった。

秋晴れの下の献身

秋晴れの下の献身

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-10-19

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