生まれ変わり

私がフラフラしてた頃
まだ塔の上にいた頃

大気圏がすぐそこで
平行世界もすぐそこで

曖昧な厳しさに満ちていた

誰かが空から落ちたり
誰かが空を飛んだり

塔の扉から急に飛び出して
塔の扉を乱暴に閉めたり

大きな大きな積乱雲が前方に見える
大きな積乱雲の近くを
浮遊物がくるくる回る

それは、衛星のようであった

大気圏から焔が落ちる
この間誰かが作った
金属の塊だった

わたしはフラフラしながらも
誰かを探していた

来る日も来る日も探していた

「ここにいないよ。下の方だよ。」

私の足元を行ったり来たりしてた兎が私に言った。

「じゃ、降りるの?」

「もう、落ちちゃいなよ。」

兎は片足で飛び上がった

「きっと違うところに落ちちゃうよ。」

わたしは拒否した

唐突に、突然に、
数字が浮かんだ

眼球の奥の方で
数字が燃えている

6

2

5

5

7

「猫が来るよ。数字が見える。」

扉から出てきたおじさんに言われる

風が強くなってきた。
積乱雲はどんどん大きくなる。
浮遊物は笛を鳴らした。

「会えないなら、そういうものなんだよ。」

兎の言うことは

そういうものなんだよ。

そういうものじゃないよ。

の2つであった。

地球の外でゴロゴロしていた頃からそうであった。

「月がないよ。」

猫が呟いた。

「落ちちゃいなよ。月もないし。」

兎はわたしの背中を蹴り飛ばした。

「あ」

それがオゾン層を認識したあたりの話で、それからどうしていたかはここで書く必要はない。

探してた人を探し続けるうちは多分、
わたしは何度も兎に蹴られて
落とされる

落とされるうちは多分駄目だった

何がどう駄目なのかは、
猫が知っているはずだけれども、

会いたいという気持ちは
駄目ではないんじゃないかって

2000年ぐらい前に会った賢人に言われた


2000年前に言われたのか2000年後に言われるのかだけははっきりしない



会いたい、それだけだった、
会いたい、それしかなかった

兎に呆れられている
猫は諦めている

たまに扉の中に入ってみるけど、
そこには何もなかった
空気も無くて誰もいなくて

私の声と私の思いが圧縮される

会いたいから会いたいの

落ちても降りてもいいの

会いたいの

それしかない。

塔に来る度、成長できない私は
兎に蹴られて落とされる

生まれ変わり

生まれ変わり

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-09-13

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