虚に芽吹く

積った雪を払おうとして
余計に積もるのは私だけですか?

ほっとけば溶けるものを
どうにかできるというのは

思い上がりでしょうか?
それとも好奇心と呼べますか?

月の下、積った雪を
呆然と見つめる薄着の女の子

寒くないのだろうか
やけに冷静に私はそれを見ている

掌を雪に当てる
溶けることを信じている

頭の上から余計に降る雪を
あの女の子は気が付かない

春を待てない女の子
虚しい虚しい雪の上
虚しい虚しい掌の温度

溶けるどころか余計に積もる
それは虚しさだ

雪も積もって
虚しさも積もって

女の子は下敷きだ

春を待てない罰だろうか?
春が来る保証は?
春が来ない可能性は?
木枯らしと吹雪だけで人生を終える
それだってあり得る話だ

虚しくても抵抗した女の子
偉いなぁなんて呟いて

救うこともせずに
女の子の白さと雪の白さと
虚しさの白さが全部曖昧になるのを
見ていた

ただ、見ていた

だってその女の子は私だったから

私を止めることは私は出来ない

それこそ可哀想だと思うから

虚に芽吹く

虚に芽吹く

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-09-09

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