揺らがない

ああ、揺るがない

こんなに世界は揺らいでいるのに
君ときたら、どうしてそんなに
落ち着き払っているのか

私の心は大時化で、
私の体は何度もうねりに飲まれる

私の心には雷鳴が
私の体は何度もバラバラになる

荒れ狂う世界にこそ、
甘美は在ると、知ってしまい
常用

否、

それは、執着

私は、終着を拒否する

それ故、

君の揺るがなさに焦がれる

何度も嵐の中で
君のシャツへ手を伸ばす

君は変わらずそこにいても
私は私の波に連れて行かれる

君は変わらずそこにいても
私は私の炎に焼かれる

手を伸ばす、
そのことに、
快楽があるような

そんな気すら起こしている

揺るがない君を憎たらしく思う
そんな夜もある

揺るがない君を神様だと信じる
そんな朝もある

君はきっと呆れかえる
君はきっと私に背を向ける

嵐はカタストロフィを避ける
嵐は終幕から私を守る

カーテンコールの存在しない

世界は

優しい

揺るがない君への最期の抵抗

揺らがない

揺らがない

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-08-28

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