いきなり私の中身がなくなった
ただただ空洞になった
風が吹くたび呼吸を忘れ
空洞の世界は年中冬で
私は何度も何度も風邪を引く

このままではかなわないと
空洞を埋める努力をした

緩衝材を詰め込んだ
緩衝材はちっとも優しくなかった
私のことを嫌っていた

真綿を詰め込んだ
真綿は文句ばかり言う
こんな筈じゃないって
毎日ブツブツ言っている

シャボン玉を詰め込んだ
シャボン玉はすぐに家出をする
出ていけないとわかると弾けてしまう

木材を詰め込んだ
金属を詰め込んだ
木材も金属もアレルギーらしくて
とてもじゃないが身に付けられなかった

約束を詰め込んだ
約束はひんやりしていて凍傷になりかける
その上 約束はすぐに消えてしまう

大好きなおもちゃを詰め込んだ
おもちゃで遊べなくなって毎日泣いてしまうようになった

思い出を詰め込んだ
思い出したくないことまでついてきて私のことを痛めつけた

何も詰め込めなくなったので
相変わらず空洞のまま
私は何度も何度も風邪を引く

それが常となれば
以前の私を忘れていく

痛いよりはだいぶ良い
それが常となっていく

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-08-16

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