忘れもの

倦怠

生きていながら<雨>となる

しとしと 降る

彼女が<雨>になって
何日目?(眠くなる)

「ごめん」

いつも そうだ

<雨>になる日は
朝からぐったりしていた

「つかれたの?」

かじられたパン

「ごめん」

笑った。

それが 最後

ずっと降っている

しとしとと

「言いたいことは?」

「マーガリン、もうないの」

シーツを撫でる

<雨>になった彼女の指

「かなしいの?」

金魚が跳ねた

雨が降る(しとしとと)

彼女の椅子は形が変わっている

「もう ないの」

コンビニに忘れられた傘

こわばる部屋

書類が濡れた

はるかぜ

スカーフをつかむ

それは花びらだった

春風にさらわれる
スカーフを
つかむ

それは花びらだった

指先に残る
上品な感触

(濁った空気に割って入る

世間知らずの おじょうさん !)

スカーフをつかむ

つかんだ瞬間 散ってゆく
花びらだよ。 ほら。
これは 花びらだ。

絹の上品さ

昔包まれた布団のにおい
グラウンドの芝のにおい

アスファルトに散らかる土
ランドセル
赤と青

おいてけぼりの女の子

スカーフが撫でる
頬を

「感 傷?」

まるで生傷

上品なスカーフは見ないふり

花びらを踏みつけて歩く

忘れもの

頬をこする
乱暴な風

「あっ」

忘れもの

ひどく心細い

問いかけは残酷

向かい合う人たち

何もないのに
(ひどく いたい)

「 」

聞き飽きたと言われた

もう 言えない

救いの 言葉

忘れもの

忘れもの

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-02-15

Copyrighted
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  1. 倦怠
  2. はるかぜ
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