リラン

リラン

木も生えぬ荒れ果てた一本の道。両脇には瓦礫が積み重なり、踏み入るのは危険である。
一年前のあの惨劇で、私の知っている町は消え失せてしまった。
本当ならば私がいつも寄っている古書店があり、適当に店内を見回っているはずなのに。
思いを巡らしながら、することもなく崩れた町の中を歩き続ける。
秋風が頬を撫でる。確かな寒さが混じり込み、そろそろ厚手の衣服を着る必要が出てくるだろう。

彼女を見つけたのはその崩れた古書店から少し先にある、公園だった。
あの惨劇の中でも生き残り、瓦礫に埋もれることもなく遊具が自然と朽ちるのに任せている。
手入れをする人がいるはずもなく、生い茂る雑草は枯れ葉に彩られ、その中に彼女は立っていた。
全身を包む厚手の紺のコート、髪は白色、背は低い。空を見上げ、目を閉じている。
なぜその人はそこにいるのか、私以外にこの町で生き残っている人がいたのか。
嬉しくも疑いの目を向けると彼女は私に気づいたのか、ゆっくりと顔を動かし私を見た。
美しい、アルビノの少女だった。

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彼女はリランと名乗った。リランの意味を尋ねると、彼女は左右に首を振った。

「意味は知らない」

声にならぬ声。どのように表現すれば良いのだろう、聞こえるような聞こえないような、微かな声。
例えば蝶々の羽ばたき、例えば綿毛が擦れ合い、例えば波紋が広がるような。
静かで、決して聞き取りやすくはなく、少しの騒音で掻き消えてしまうような、そんな声色。

「でも名前には意味がある」

そう尋ねると、彼女はやはり左右に首を振る。

「意味のない名前もある。私のように」

微笑まず、これからやってくるのであろう冬のように固まった表情。
きっとこの表情が溶けたことなんかないのだろう。表情の作り方なんて、知らないのだろう。
そう思わせる顔と口調だった。

「……旅人?」

私はこの崩れた町に残り続ける。でも彼女はどうなのだろう?
少なくともこの一年で、彼女を見かけたことはない。私以外の人を、見たことさえもない。
尋ねると、彼女は肯いた。

「ええ、旅人」

動きにくそうな服装を翻し、彼女は私に背を向ける。

「貴女は大変ね、こんな町で一人なのだから」

ただでさえ聞き取りにくい声が遠くなった、気がした。

リラン

リラン

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-10

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