I&W

この会話はお茶の時間に甘党の私が「このコーヒーは苦くて美味しいね」と妻に言った時に始まった。「お砂糖たっぷり入れたのに変ね、充分甘いわよ、あなた言い方間違ってない?」と言われて、気が付いた。不覚にも「甘くて」と言うつもりが「苦くて」と言ってしまったか。妻はチャンス到来を待っていたようだ。更に続けて「あなたは自分の言う事は何時も正しいと言うけど、それがカチンとくるのよ」と攻勢に出た。たまには鬱憤晴らしも必要だろうと思って妻の話しを黙って聞いてやることにした。私にとっても自己反省になるかも知れない。妻は話題に「私の変わっていること」や「常識のなさ」を拾って、これまでのエピソードを語り始めた。以下、I は私でWは妻(Wife)である。
Ⅰ.I ; 僕は冷めてふやけたラーメンがいい。
W ; のびたら美味しくないわ。あなたは猫舌だから仕方ないけど。そんなことを言ったら笑われるわ。
Ⅱ. I ; 僕は君の料理で生卵ご飯が一番好きだな。
   W ; じゃ、わたし何も作らなくていいわね。
Ⅲ. I ; つまらない物ですが、と持って来るけれど、つまらないものなど欲しくないね。
   W ; 謙譲、謙遜が分かってない。あなたのような人をKYっていうのよ。
Ⅳ.I ; 今度あの人にこれあげよう。殆ど使わなかったが、もう要らないから。
   W ; あなたに言われたら断れないでしょう。迷惑かけるからやめましょう。
Ⅴ.I ; あの人にまた町内会長やってもらおう。喜んでしている様だし。
   W ; 好きでやる人なんていないわ。代わりが居ないのよ。
Ⅵ.I ; 耳障りだね。「すごイ可愛い」じゃなく、「すごク」だろう。アナウンサー、タレントまで使っている。文法でたらめだ。
   W ; 悪貨は良貨を駆逐する、だわね。善し悪し判別しないうちに広がってしまうのよ。気にしないことね。
Ⅶ.I ; 女性の化粧やおしゃれ、特にミニスカートは男を意識してやっているのかな。
   W ; 一部には居るかも知れないけれど、大部分の人はファッションを楽しんでいるのよ。男の為ではないわ。
Ⅷ.I ; 今日は寒いね。
   W ; じゃ、どうしてセーター脱ぐの? 時々反対のこと言ってるのがこれで分かったでしょ。年のせいかしら。
Ⅸ.I ; これは里芋の葉っぱかな。
  W ; ポトスよ。さっき教えてあげたばかりでしょ。知ったかぶりして、お客様に里芋なんて言わないで頂戴ね。
Ⅹ.I ; ……………
W ; …………………
おしまいかな。まだ有るのなら次回にしてほしい。耳が痛くなって来た。要するに、私は変人、非常識と思われないように人前で話す時は気をつけたほうがいい、ということだね。ハイ、ワカリマシタ。
 今日のコーヒーは妻の話で本当に苦くなった。それに調べてみたらポトスはサトイモ科だ。が、些細な事で妻に反撃するのは大人げないからやめよう。「あなたは優しいのね」と言われたほうが嬉しい。      2016年7月3日

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