電球がない

 浴室の電球が、ばちっという音を立てて切れた。点灯スイッチを押した瞬間のことだった。一瞬何が起こったのかと思った。
 ただ電球が切れただけだと分かると、自分の気の小ささが可笑しくなる。そして次に、買いに行かねばだの面倒くさいだのと思う。電球の形はどんなものだと調べるのも億劫だ。
 しぶしぶ電灯のカバーをはずして電球を抜く。カバーの上部はうっすらとほこりが積もっている。それが指につくのも嫌だなと思う。電球を見れば型番が記されている。メモを取ったところで、ふと写メを撮ればいいことに気づく。やれやれ、である。
 そして近くのコンビニやスーパーへ行くも、目当ての電球は見つからない。では電気屋に行くかとなると、思いのほか近くにはなかったりする。現代の便利さに慣れてしまうとこれだけでがっかりする。
 電球一個で思うことは色々あるものだと妙に感心してしまう。それだけ暇なのだと言ってしまえば、そうかもしれない。
 よいではないか。これだけ何やかやと思う暇があるなんて贅沢だ。
 それにしても電球一個がないだけで今晩のお風呂に支障が出るというのもまた可笑しい。真っ暗なお風呂は勘弁だ。
 光はなんて尊いのだろう。と、こうこうと照らされる浴室を見てしみじみと感じるのだった。

電球がない

電球がない

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-08

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