夢のワクチン開発か

犬棒あたる 作

(仮定の話)

      
                                        
遺伝子工学の技術を使って作られたこの薬の添付文書には以下のように書いてある。
  名称: ヨクバラナーイ                    
  効能: 欲張り、嫉妬、見栄はりをなくす。
  用法: 皮下注射一回。
  使用上の注意: 乳幼児、妊産婦は適応外。                
  副作用: 思考過程、感情、感性が影響され、謙虚になり、同情や慈悲の心が芽生る。意欲、性欲、その他の欲が低下する。重篤な場合はお釈迦様のようになる。                   
  薬理作用:大脳に作用して、欲張り、嫉妬、見栄はりの遺伝子が破壊される。
 
 さて 、この様な薬が実際にできたら我々の世界はどうなるだろうか検討しよう。                   
まず、心配なことから考えていきたい。もし全人類が接種したら、金メダルやノーベル賞、天文学の大発見は少なくなるかも知れない。女性は高級化粧品やブランド品を買わない。子供達は有名大学や一流企業に憧れなくなる。株取引をする人はどうか。色々困ったことが起こりそうだ。これでは文化も経済もメチャクチャになり、崇高な努力も人類の夢も無くなるではないか。それでは困ると猛反対がおこって、欲張り、嫉妬、見栄はりは必要だ、と滑稽な街宣や署名活動を見ることになる。                   
 そうなると、このワクチンは任意接種に限られる。
この薬に希望がないかといえば、そうでもない。もし、各国首脳が使ったら国際会議もうまくいき、戦争もなくなり、全世界平和条約が成立するかも知れない。これを見て平和を望む人々は協力を惜しまない。反対する人には接種をお願いしよう。                    
さて、あなたならどうしますか。妻(夫)や他の人には使ってもらいたいが、自分は使いたくない、と思いますか。その理由は何ですか。自分は欲張りでないから必要ないということですか、はたから見るとみっともないほどの欲張りに見えますけど。それとも、副作用が心配ですか、しかし、異性問題をおこさなくなりますよ。
実は私もすぐに使用することは迷っている。私は欲張り、見栄張りの部類にはいっている。病気を治してもっともっと長生きしたい。100歳を超えても元気にしている人は羨ましい。もう一度釣りに行って1メートル級のスズキを仲間に自慢したい。私の欲望はそれだけではない。このワクチンが世に出て人類が欲張り、嫉妬、見栄はりの遺伝子を持たなくなったら世界はどう変わっていくのか是非みてみたい。もともと生命の発生時から繁栄するために必要とされ、備わってきたであろうこれらの遺伝子が無くなったら、ヒトの概念が変わるかもしれない。優れたほうに進化する可能性もあるが、反対に、絶滅までは行かないにしても退化の道をたどるかも知れない。地球環境にも何らかの変化があって動植物はたすかるだろう。地球温暖化も収まり格差社会もなくなるだろう。非常に興味深い。その時になって検証する意欲が低下していたら残念だ。時期を見ての接種としよう。
 結局この薬が承認されるには、強さを加減できたほうがいい。できたら元に戻す薬があれば一応安心だ。戻りたい人がいるかどうかわからないが、開発者の責任のがれになる。すくなくとも副作用は強くないほうがよさそうだ。社会問題になるからだ。そのうえで接種する人を限定することだ。接種すべき人はかなりいそうなので開発会社は採算割れしない。そうすれば画期的な薬となるだろう。
私個人的には、お釈迦様のようになれるなら、その副作用はあっていいと思う。この薬の開発者にはスーパーノーベル賞をあげたい。
                      2016年5月5日

夢のワクチン開発か

夢のワクチン開発か

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2016-06-13

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