ひきょうなわたし

安全地帯より

あなたを遠くから思っている。
ここは安全地帯。

ここからあなたを思っている。

あなたはわたしに言葉を投げる。
わたしはそれを拾って大切にしまうばかり。

あなたに会う勇気がなくて、ただ、あなたからもらったいつかの言葉をいつまでも愛でている。

不意にあなたに鉢合わせたら、わたしの声は強張ります。

微笑みの1つぐらい浮かべて会いたかった。いつもそう言って泣いているのです。
安全地帯で。あなたを思って。

まぼろしの春

あなたが微笑むから、春だと思ったの。

あなたの微笑みを確かに見たの。
心はぽかぽかして、どきどきして、ああ、春だと思ったの。

通じ合えたとすら思ったの。それが春の気配だと、信じていたのに、あなたとの距離を感じれば忽ち、木枯らし、吹き荒れる。

距離を知れば、隙間風。
わたしの心臓めがけて差し込む隙間風。

酷く寂しくて、今日は風邪を引きました。
ああ、あの春は、悲しき妄想で、今は冬で、厳冬で、わたしは布団をかぶりあなたの名前を呟いた。

今度こそは

あなたがくれた、こそばゆさ。

あなたは知らない、わたしが幸せであるということ。
上手に笑えなくても。
柔らかな挨拶ができなくても。
会話がなくても。

目を見ることができなくても。

あなたがくれた言葉をまだ、大切に持っていますよ。

今度こそは、あなたに、拙いなりにも、言葉を返したいと願います。

あなたの名前を呟いたあとに、ひっそり言うのは「ありがとう」。

どうかいつか今度こそは

呟くだけの名前をあなたの背中に押し付けて、ありがとうと伝えてみたいものです。

ひきょうなわたし

ひきょうなわたし

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-13

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  1. 安全地帯より
  2. まぼろしの春
  3. 今度こそは