君の伝説は時じくに伝えている
プロットまとめ
【君の伝説は時じくに伝えている】
〜時じくシリーズ 第2章〜
・原作
『君の伝説は時じくに伝えている』
・主題歌
op『荒野のヒース』〜AKINO...〜
挿入歌『ニケ15歳』〜AKINO from bless4〜
挿入歌『is』〜菅野よう子〜
挿入歌『Fallin’』〜ZHIEND Eng.ver〜
ed『fortification~最後の砦~』〜佐倉綾音〜
・キャッチコピー
『僕たちが繋ぐ、伝説の影と光』
・語り
『伝説は嘘をついている。…あの歴史から1200年、それは因果の理か愛の影か。伝説と血をかけて僕たちの物語が始まる』
・登場人物
【新人類界・ガイア】
桜舞 ハルカゼ→能力が感情に左右される青年
リエナ・ルージュ→ハルカゼを嫌う元気美人。実態は旧人類界よりセイジから遣わされた使者。愛の影に慈悲を与えるため遣わされるが、影狼たちに追われる身となり、セイジの手によって一時的に記憶喪失にさせられ守られる。だが愛の影ことアンデジェルにハルカゼのことで隙を与え身体を乗っ取られる。
アロウド・シン→研究熱心で喧嘩っ早い青年
劉・コウガ→3人を見守る無口な武闘美少女
(Sage信仰中枢暗躍組織『影狼』)
瀬戸山 ユイ→エリコヲール開発者の子孫天才
江堂 シデン→世界の真実を隠滅させる暗躍者
ルナード・シュレディ→影狼の美しき狂学者
五十嵐 ジュウゾウ→強靭な男にして優しき父
アロウド・レオン→影狼での暗殺の専門家
(当国家統治者と国連を統べる主な元老院)
ルナ・レイオクォルツ→若きガイアの女君
婆羅門→年齢不詳の謎めく美しき女元老院
臥翁羽→権力の裏を持つ影狼関係の男
ヴォルダム→長寿にして発言権の大きい男
ギデオン→敵のいないこの世界で力を誇る男
リンバウホウ→歴代四賢人に謳われる1人の女
(国際連合防衛機構の著名人物)
バリウス・ネルツ→20年前の大戦の勝利者。
ジュダ・レイオクォルツ→ルナを誘惑する男。レイオクォルツ一族の分家にして部下。
(国際連合開拓機構の著名人物)
リリシア・モローレ→ハルカゼ達を支える女
【旧人類界に繋がる者】
ニムロッド・ルージュ→エリコヲールに潜む愛の影ことアンデジェルが自らのヘヴンズドアの実験として初めて旧人類界へ不完全であれど送り込んだ男。東暦200年に送り込まれたニムロッドは共に平行する旧人類界の約1000年後の(ガイアで言う現代の東暦1200年)西暦3015年の旧人類界に来てしまった。それは未だ不完全だったアンデジェルの失策であり彼女が1000年ものあいだを待たなければならない結果だった。だがそんな未来の旧人類界にきたニムロッドをセイジは守った。そして彼とその世界でできた妻と娘を守り抜いた。ニムロッドは断ったが自らの意志で新人類界へ向かうことを決めた娘リエナ・ルージュはセイジの任務を果たすためガイアへセイジの力で飛んだ。以後、リエナは未だ家族と任務をセイジの力で忘れ守られている。ニムロッド本人はまだ旧人類界にいる。
レバイアン→空白の世代の提唱者。劉の義父
アンデジェル→雪解の意を持つ壁に住まう者
・物語用語
伝説→1200年前にセイジという力を手にした男が数多の世界をひとつに繋げ救った物語。
ロゴスフィリア→伝説の正式名。文字から生まれた友愛を意味している。伝説による噂。伝説の男が1人の女性だけではなく、全てを友として愛した証であるということ。
新人類界→生還者が文明を築いた新世界。
旧人類界→室馬が生還者を救うために自らを犠牲にして新世界と分け隔てた人類世界。
ガイア→生還者が創った文明の国。
第1世代目→歴史の真実として、この世界へ送り込まれた生還者の世代を言うが、現在ではそのことを知る者はほとんどいたい。
国際連合→生還者が後世に記録を繋げて伝えられるよう作った新しい国の連合議会。元老院の指揮下にあるも、その存在形態は国家の首脳に左右される。今や強国家となったガイア共和国が設立したものであるが、その力のバランスがあまりに他の諸国家と均等ではないため、現在では最も安泰の地とされる西アルノール王国の栄都エレンディルに本部が敷かれている。西アルノールの王は他国同様、国連の公事業以外は関与する権限はない。
開拓機構→国連の一部。ガイアの周りで今なお増え続ける人類の国土を開拓している。尚、ガイアを除いて今は35の国がある。かつて20年前のガイア奪還戦争でバリウス・ネルツと共に勇敢なる戦いをおさめた女戦士リリシア・モローレが、防衛機構が立てるバリウスの戦略的支配構築像を防ぎ、人々に安泰の国家関係を築く方針へ働いている。
防衛機構→国連の弱体化を防いだ組織。1200年もの間にその組織図はかつての旧人類界の国連とは全く異なる働きを持っているため、ガイアにおける世界的な統一力を誇っている。旧人類界を知らぬ現代のガイア人は今の国連をかつての戦争終結から組織編成された国際的秩序を目指す国家間団体の成れの果てだと思い込んでいる。そんな国連の統制力が増え続ける諸国家に追いつけなくなり多大なる犠牲と共に大戦を作り上げていたことから、ガイアの奪還戦争はこの防衛機構の立て直しに非常に貢献している。軍事的介入が主であり、防衛機構としての役割は元老院がほぼ仕切っているようなものである。
エリコヲール→新人類界の1200年続く次元の壁。エネルギー源としてSageを使用している。民はその真実を知っている。元老院やルナ女君は別名として沙羅双樹の壁と呼ぶ。かつてこの世界へやってきた第1世代目の生還者を束ねていた者の1人であった瀬戸山ユイの祖先によって開発されたものである。そのエネルギー源は人類の未来から抽出するSageの力から取り入れていたのだが、その裏にはアンデジェルと呼ばれる1人の憎しみを抱いた女によって書き換えられた真実があった。彼女は第1世代目の生還者すべてを子孫の繁栄後に彼らの記憶から親の顔を消すと共に、自らが望むヘヴンズドア開錠へのエネルギーの切り札として生きたまま閉じ込めているのだ。
ヘヴンズドア→伝説の男が人類を守り抜くために閉じたとされる他世界への干渉の扉。実際には、伝説の男がヘヴンズドアを開けて生還者を救済し自ら旧人類界に残って犠牲となってた。
Sage→伝説の男の名。時間集約エネルギーの名称。世界時間の10年を1年として集約し生きることで発生する凝縮された結果で発生する高エネルギーをエリコヲールや新技術の応用に使用している。この集約の副作用により通常ありえない特殊な現象や能力を人間が直に体験し操れるようになってきている。
影狼→生還者の真実を知る暗躍組織。
元老院→国連を統治する最高権力機関。
女君→ガイア統治者にして元老院を司る女子。先代である父の不自然な消失事故により若き女君が誕生した。アルビノの病を持っており、日の元へ出ることを許されていない。
国民→生還者の子孫で真実を知らぬ者達。近年その平均寿命が160歳に延び、現在は約240歳の男性が最高年齢とされている。
壁に住まう者→後々わかることであるが、アンデジェルという度々精神的に人々をそそのかして、壁をこじ開けようとさせる謎の多い女。その実態は1200年前に子孫を残して死を待つのみとなったボダイ生還者すべてを生きたまま壁の力へ無理矢理転換させ自らもまた壁の中へ沈んだ脅威の女。かつて雪解 沙樹の名を持った人間にして、今は蓄積させた生還者すべての力を旧人類界へのヘヴンズドアとして開錠させようと企む、愛の影そのもの。その想いの醜さ故にセイジの唯一の弱みの存在でもある。彼には彼女を認識できないためにリエナを送り込む形となった。
空白の世代→約20年前にこの世界の一部で起きた万民消失現象。これによってガイア奪還戦争は終結に至った。同世代の国民が男女を問わずに忽然と姿を消したことで、今成人を迎えようとする者の前後の若者たちの大部分に親がいない。だがその実態は、空白の世代の提唱者レバイアンなる男によってもたらされた、新人類界バランスの調律を目的とする器に収まりきらなくなった世代人の空間移送転移による新人類界からの消失だったのだ。
ガイア奪還戦争→今なお増え続けるガイアの分国は独自の文化を持ち合わせるようになり、一部でエリコヲールの力を手に入れようとした諸国家たちがガイア共和国に侵略を行使した残虐な戦争時代があった。この時にガイアの押し迫る最前線で無謀な戦略を成功させたのがかのバリウス・ネルツである。現在では国連の防衛機構で軍事的諸国家統一を図っている。だがその身は1人の父親でもある。
・世界観
中世ヨーロッパを漂わせる現代人の集落
和をもつ文化も所々見られる。
文明は旧人類界の面影を残すも、科学に頼り過ぎることを禁忌のように扱う面がある。
巨大建造物群の町でありながら、蒸気機関車や空中庭園などが混在し、現代社会を帯びた情緒あるモダン風レトロポリスとなっている。
統治者は王としての座であり、他国との関係が未だ曖昧であるため、政府体制は禁忌とされてている。
ガイア共和国家は建国されているが、他の35の諸国家もひとつにガイアと呼ぶことの方が多い。
元老院が国連の指揮をとるも、あくまで国民の歴史的記憶に異変が起こらないための措置による形としての組織であるため、女君が上に君臨していることに変わりはない。尚この事が生還者たちによる初めに行われた世界的歴史改ざんを隠滅するために行ったシステムだとは影狼と女君を除けば誰も知らない。
旧人類界はボダイ生還者の消失後、自らを犠牲にした室馬醒司のかたちをしたボダイエネルギー光を放つ超エネルギー体を他世界への侵略戦争のエネルギー源としている。戦争は激化を増し、地球規模の崩壊へ向かっている。
・あらすじ
1・東暦1200年。伝説の男セイジがこの世界を救ってから世界は平和を団結した。他世界の存在が実証されたことにより、人類は様々な世界で多次元への侵略戦争が勃発していることを知り、戦わずに愛する民を救う道を選んだのである。だが現代科学だけではそれを叶えることは難しいという事がわかっていた。故にかつて万能性科学の犠牲となりボダイという人為的統一夢から人の域を超えた力を手にして生還したセイジ達の協力で、世界は時間を集約することで起こる巨大なエネルギーを世界と他世界との間に立てる次元の壁に変えたのであった。それはいつしか勇敢なる英雄たちとして伝説に伝えられていくようになった。10年なる時間を1年に集約することで世界は永続的な平和をこの1200年に至っても維持していた。そんな集約の影響が関係し、規格外の時間の累積を貯めるようになった人類の身体にはかつて1200年前の時ほどまでとはいえ、少なからずも小さな特殊能力を持ち始めていた。体感時間をかつての1年としてもその負荷は大きく初めこそ様々な身体現象に苦しんでいた人々も次第にその身体を受け入れるようになっていったのであった。いわば人類の進化であった。そんな文明を発達させて今なお古めかしい中世の建造社会で暮らす桜舞ハルカゼは両親を幼少期になくしている為、1人で商売の都オルメスの外れにあるガイエンの町で何でも屋を開いていた。ガイエンの町ではその気性の良さから誰からも親しまれていた。そんな彼だったが、その身に宿る不可解な能力は感情に左右されるため、迷惑をかける毎日だった。そんな日々のなか、ハルカゼはガイエンの町の反対側にいるもうひとつの何でも屋のアロウド・シンという熱い青年とよく喧嘩をしていた。古くからの知り合いで彼らは仲が良くなかったのだ。そんな2人がある日王都の絢爛な大建造物の下にある王都街フィガンローナへ何でも屋の仕事探しの競争へ向かった時に、空中庭園から落ちてきたある少女を鉄橋型蒸気機関車の上から飛び降りてハルカゼは彼女を助けた。彼女は自分が何故ここにいるのかを理解できず記憶を喪失していた。このままでは王都のはずれにある売春街に引きずり込まれかねなかったため、ハルカゼたちと3人で過ごしていくようになった。帰ったガイエンの町で大家から借りた部屋で暮らすようになった彼女は自分の名前であるリエナ・ルージュだけを唯一覚えていた。そんな彼女は仲を深めるほどによくハルカゼを嫌うようになった。偽善的優しさに見えていたようだ。そんな彼女も自分を救ったハルカゼ自信をどこかで認めていたことに変わりはなかった。
2・ハルカゼとリエナとアロウドの3人組の喧嘩がガイエンの町でも有名になると、しだいに彼らは人気のあるひとつの何でも屋『L's』を結成することにした。そうして暮らしていたある日、1人でいたリエナに臥翁羽と名乗る一見一般市民の飄々とした男が依頼を申し込みに来た。用を求めるリエナに臥翁羽という男は、君がリエナ・ルージュであるかを問いただしてきた。町でも有名であった彼女はいつも通りに肯定した。何事もなかったかのように依頼『気になる壁がある。見て欲しい』を注文してから去っていった。その日のうちにこの怪しげな出会いは残酷さを持って帰ってきた。リエナを観察して続けていた幾人かの黒い強者たちが彼女を無様なほどに叩き潰すと連れ去って行ったのである。後からそれを知りこれに動揺したハルカゼとアロウドは何も助けられなかった己たちを憎み、共に彼女を助ける覚悟を決めた。赤の他人とはいえ、救うべきだと直感したからだ。書き置きの通り、再度王都フィガンローナへやってきた2人はそこでリエナを監禁する影狼と言う王都を根城にする王政の暗躍組織と会うこととなる。アロウドのパルス能力やハルカゼの奪われた憎しみからくる不完全体の怪力を前にしても彼らの1人ですら倒せることはなかった。影狼という強者の集まりである彼らの中にはかつて伝説の男セイジと共に戦った者の血を引くという瀬戸山ユイという天才少女と江堂シデンというリーダーに出会って行く。そこでハルカゼたちは影狼の拘束生活を共に過ごすうちに、間違ったこの世界の真実を次々と知って行くようになる。伝説の逆転。セイジという存在が伝説ではなく実在し、彼と共に大いなる人類の過ちたる夢の狂乱劇から人の域を超えた力を手に生還したことを。そしてこの世界がその人類の未来では無く、セイジが地球規模の野望から仲間たち生還者を守るために自らを犠牲に生還者を新たに創造した新世界へ送ったこと。自分たちがその生還者の子孫であるということ。時間集約のエネルギーたるSageの力によってエリコヲールを開発した瀬戸山ユイの祖先が親友であった江堂シデンの祖先やかつての仲間たちと共に過去の記憶を消して我々に伝えてったこと。それでもなおどこかではSageの存在と世界の真実が影を伝い、今もここに隠されているということを。王政府のごく限られた重要人物たちはこれを知っており元老院と共に自らの利権のために世界の真実を封印させようとしていること。そんな中で世界の真実を求め、正そうとする影狼のような暗躍者たちの存在。多くのことを知っていった。様々な意図が飛び交う中、ハルカゼは何のためにいるかもどこにいるかもわからない大いなる敵を前にして足がすくむことしかできないでいた。そんなハルカゼを瀬戸山ユイたちは放っていたものの、自分たちが本当の世界を知りつかむために今本当に存在する倒さなければならない相手が誰なのかをハッキリさせるために追い続けていることを話した。こうしてハルカゼは何の取り柄がなくとも真実を知るために世界の真理の闇へ足を踏み込む決意をしたのであった。
3・一方、王宮殿では現ガイア共和国の若き統治者であるルナ・レイオクォルツ女君を狂言じみた元老院が苦しめていた。権力の横暴が行き来する元老院はここガイア共和国を含む36の国々を各々の首脳たちが会議を持って物議を決め連結統治する国際連合、それを上から支配する代々の賢人たちの集団である。そんな元老院とガイア共和国の統治者は代々深い仲でありそれは今もなお続いている。だが婆羅門やヴォルダムなどの元老院の主たる人物たちのような名君も仲にはいたため、消失した父のように親しみを持って関係を築ける者もいた。影で暗躍する恐ろしき権力者たちが王都には至る所にいた。同時に元老院の名だたる面々では臥翁羽の姿もあったのである。そんな影知らず元老院がエリコヲールの真実を隠し、帝権支配を確立させようと図る中、レイオクォルツ一族の本家ルナとは別に分家ジュダが国連は防衛機構のバリウスを持ち上げルナをそそのかそうとしていた。ルナは代々続く王家を守り、世界に安泰を求めるため、リリシア・モローレへの手紙を残して王宮殿をしばらく去ることにしたのであった。未だ少女故の反抗期である。こうしてアルビノの病を持ちながらも日の元へ出た若き女君はいつしか自分の知らない町へ迷い込むようになり、弱ってしまっていた。だが思わぬ失敗で能力を雑に使ってしまった何でも屋のハルカゼに出会ったことで偶然救われることとなる。この広き強大なガイア共和国の若き女君であるとも知らず、ハルカゼはリエナやアロウドらに頼まれたパシリを1人でこなしきれず、ルナ女君に手伝ってもらっていたのである。すっかり打ち解けあった2人はガイエンの町で平和な時間を過ごした。そんな時、少し目を離した時にハルカゼはふと隣に現れたあの日の臥翁羽という年齢不詳の男に依頼の再確認をされたのであった。気になる壁を見て欲しいのだと。ハルカゼが気づいた頃には周りにはついさっき帰ってきたルナと町の人以外には誰も見当たらなかったのである。そんな時に影狼の1人にして強靭な肉体を備えた男がハルカゼに話しかけてきた。が、横にいるお方に気づきすぐさま人気のないところへ2人を連れて行く。真実を知らせようと強靭な男の五十嵐ジュウゾウが口を開けた瞬間、3人の場所へ殺気と一撃必殺の能力が飛び込んできた。2人を守った五十嵐の前にはルナであることを認めてか、あたかもルナを追ってきたかのように刺客がいた。その刺客はルナに殺意を向けて殺しにかかるも五十嵐の強さに難なく倒されてしまう。だが強敵には変わらぬ相手にハルカゼはルナを守って五十嵐が倒れた隙に刺客を倒して見せた。ルナに対する感情の上昇によりハルカゼは前のように力をふんだんに出す事ができたのである。容赦のない刺客はそれでも対抗しハルカゼを殺す寸前まで行ったが、怒りの逆鱗に触れた若き女君の覇気により全ての空気が変わった。自らを名乗るその姿に誰もが口を開けられるずに身を地に固めた。こうして騒乱は治まったものの、刺客はというと相手は思わぬことに同じ年頃の青年だった。無口のようでギャグくさいその少女の名は劉・コウガと言い、後に彼女は影狼として、ハルカゼの友として世界の真実への探求へ迫っていくようになったのである。彼女の目的は自分たちの都を苦しめた上に、全員を村襲いとして処罰した国への反抗だったのだ。これは後に明かされることであるが、ルナの分家たるジュダが悪用した事件だった。ルナにもその話は別の形にすり替えられて教えられていたため、誤解はすぐに溶けたのであった。こうしてルナは厳粛に五十嵐とハルカゼと劉だけの秘密としてひとときのあいだは、ルナ自身がこのガイエンに身を潜めておくことにしたのであった。新たな仲間を迎えた影狼はそれでも多くの思考を持つ異分子が多く、女君を連れ帰ろうものならどんな目に合うかはわからなかったからである。影狼の面々は多い。身を隠す暗殺者も工作者も数え切れないために、未だハルカゼたちをよく思わない者もいたのだった。
4・王宮殿や各諸国家、そして国連に元老院はパニックだった。若き女君が消えたことによりジュダは猛威をふるって権力による支配体制を強化させていた。リリシアは自分だけに送られた女君の内なる心を知りそれを誰にも秘していたのである。こうして女君が異国の者によって捕らえられたのだとジュダの誤報によって誤解した王宮殿は戦争を叩き込む算段をつけ始めたのである。これにガイア奪還戦争の英雄バリウスを先陣に切らせて事を推し進めようとジュダは元老院でも武力を好むギデオンの指示を仰ぎ、ことをすすめはじめたのであった。一方で瀬戸山ユイと対抗するように影狼にはもう1人また別の天才がいた。美しき狂学者と謳われるルナード・シュレディは江堂シデンと既に体の関係を持っていた。そんな事を知っていてもルナード・シュレディと江堂シデンを殺さんと影狼のメンバーとして影を潜めていたあるスパイがいた。そのスパイはレバイアンを名乗る人物から依頼を頼まれていたのである。こうして始まった戦いに強者の集まりである影狼ですら、そのスパイの力には敵わない何か別の力を感じていた。自らの意思だけではない何かに動かされるようにスパイはルナードと江堂を殺そうとするも、駆けつけたアロウドによって、ギリギリなところを食い止められる。そんなアロウドに動きを止めたそのスパイは、後々になって、自身の兄であることに気づいた。生き別れたはずのレオン・シンにアロウドは動揺する。こうして再会を果たした2人はレオンの後ろにあった別に力が消えると同時に気力を取り戻したことで、安静に終わった。どうやら自分の憎しみにつけこまれたようで、ガイア共和国の隣国であるマナライゼン連邦国家の暗殺者であったようだが、闇の声に付き従ったためにいつしかここへきたようだった。そんなこんなで影狼にはまた新たなメンバーが加わり、大きく進歩したのであった。残存勢力が次第にまとまり始めたことで、王都を拠点とするSage信仰中枢組織である影狼は大きく変化していたのであった。一方で王宮殿に帰らぬと意気込んでいたルナ女君もハルカゼたちとの成長を見て自らも王宮殿に帰ることを決意したのである。初めて名乗り上げたルナに誰もが驚愕するが、ハルカゼに恋をしていたルナはそこでゆっくりと影を消していったのである。
5・アロウド・シンの兄であるレオン・シンにはある者の捜索を頼まれていた。それは約20年前に消失したレバイアンという男だった。それは劉の義父でもあり、劉が探していた人物でもあったのだ。こうして研究と探索を重ねていくうちにそのレバイアンがかつて消え去ったルナ女君の先代の父やハルカゼの両親に関係していることがわかるようになり、それと同時に元老院の火の粉が降りかかることとなったのである。知ってはならない真実を知った影狼はジュダとバリウスの手によってほぼ壊滅させられたのである。大きな犠牲で始まった他の諸国家マナライゼン連邦国家や周囲との国々との、戦争によりその大きな都ばかりで市街戦が繰り広げられた。始まった戦争にジュダやバリウス、それに元老院の面々をそそのかし影で動かす謎の女の手によってガイアは混沌に突き落とされることとなった。誰と戦っているのかも知らずに世界は戦争を始めた。ルナを守り、世界の壁たるエリコヲールの所在地を狙った各諸国の標的たる王都を守るため、影狼の残存勢力は死に物狂いでその戦争に立ち向かうことにした。戦争に駆り出されるようバリウスの名において指示したのはまたも謎の女であった。その時、レバイアンの空白の世代の理由を当初から王宮殿でハルカゼを気に入っていた婆羅門という女が別れ際にその事実を述べた。ハルカゼたちは訳も分からずに大いなる世界の闇をのぞきこんだのである。それは世界のバランスのためにと謎の女が当時学者だったレバイアンにけしかけた嘘だった。それを通して無理に空白の世代の消失をエリコヲールへ取り込んだことで、彼らは消えていったのである。大戦が激化し元老院が国連ではなく直に介入せざるをえなくなった時、限界へ達し始めていた人々の累積した能力が爆発したのである。能力を使い戦いに進み始めた人類は目にも留まらぬ勢いで世界を闇に落としていった。これが後の『炎のガイア』である。
6・繁栄を喫した栄光の都フィガンローナは惨劇とともに灰と化していた。そんな地をハルカゼは何とか生き残っていた影狼の面々と隠れて生きていた。だがレバイアンの研究結果を知り、エリコヲールに謎を見つけたアロウドたちによって、物語は急展開へ繋がる。世界を混沌に落としめたガイアの次なる支配者は完膚なきまでにジュダだった。元老院の言葉を聞き入れずに軍国主義を固めた彼は耳元で囁く魔物の言うがままにその力を手にしていっていた。リリシアの手によって守られていたルナは影狼と合流することでともに手をつなぐことを決意した。この世界の本当の敵は人間でありにんげんではない。そう言い残して息途絶えた四賢人の1人である元老院のリンバウホウの言葉によっていよいよ彼らはレオンやレバイアンやジュダを突き動かす存在を突き止めることにした。それは影のようであり、人であった。そんな彼らを戸惑わせる影に触れられたリエナはなんと記憶を取り戻したのである。それはかつて旧人類界で託された思いだった。影が彼らの前に現れた瞬間、それを待っていたかのように光が天地を覆った。地響きのように世界が唸る。神の如きその光を帯びて語る者は伝説の男セイジだった。影と光が相対した。記憶を取り戻し混乱するリエナに光は父親が待っているぞと伝えた。ハッとしたリエナは影に胸にあるもうひとつの光を取り出そうとしたが、その影は素早くハルカゼを殺そうとした。自害行為に見せかけたその非道なる力にハルカゼはなんの力も使えずにいた。こうしてら心に隙を与えられたリエナの身体へ影は自らをアンデジェルと名乗り、のっとったのであった。影に対して伝説の男は光を天に上昇させた。こうして生身を手にしたアンデジェルはリエナの身体で大いなる殺戮を始めたのである。逃げることしかできなかったハルカゼは五十嵐の命を犠牲に生き残ったのであった。世界の崩壊が進み、暗黒がガイアを支配していた。レナードは江堂を守り死んだ。江堂や瀬戸山は共にハルカゼやアロウドやレオンたちと走り続けたのである。無常なる惨劇を前にして彼らに力はなかった。失うものを失い、ルナとリリシアに手を引かれて走るハルカゼは呆然としていた。あの時彼女に触れたハルカゼはリエナとあの闇の女アンデジェルの世界を覗いたからである。旧人類界から来たリエナ。そのリエナの父を旧人類界へ送り込んだアンデジェル。彼女の存在とは。アンデジェルは燃える世界の中心でセイジへ愛を告げた。天にある光はアンデジェルを哀れに寂しく見つめていた。
前編・完
・構成用語
【時じく Re:awaken】より1200年後
時じく世界観における新章物語。
室馬醒司たちが伝説扱いとなった世界。
継続性はあるも主要人物は総書き換え。
1200年前、人類は10年分の時間と、10年分の因果消費エネルギーを、1年という時間に集約することで1年365日を他の因果から守り強固な壁とする技術を獲得してきた。
1200年前に起きた伝説『ロゴスフィリア』によって生じたそれまでの常識を覆す因果論が歯車をかけ、地球規模で起きる因果戦争の火が現人類界へ及ばぬよう、人々は世界と世界の狭間に人類史上最強のエネルギーの源となる時間集約のエネルギー『Sage(伝説の救世主)』を用いた『エリコヲール』という世界線の壁を作ったのであった。
世界平和は守られることなく様々な紛争が未だ絶えぬが、国連はエリコヲールを指導するようになったことから、国際連合直轄の地球防衛軍を通して人類を幅広く守るようになっていった。
主人公たちの世界では10年分の時間を1年で過ごすようになったことから時間を収縮エネルギーによる体感時間の累積により、約1000年を経てその身に特殊な能力を宿す者が増え始めていた。言わば人類の進化である。
国連はこれを危険因子とみなすも世間は賛否両論で未だことは大きくなることには至っていない。
人類はエリコヲールを1200年前からの伝説以来の副産物として尊んでいる。
伝説はあくまで伝説扱いである。
という設定であった…。
歴史の真実は以下の通りである。
1200年前、人類は因果論を万能性科学の大いなる過ちによって知ることとなり、それ以後、この世界の未来を選び、すべての能力を使い果たしたことによってすべての記憶を犠牲にした室馬醒司と彼に続く生還者たちを筆頭に人類の一部が人間の持つ未知数のエネルギーを保護し、欲に囚われた者たちの手から守ろうと動いていた。
やがてDOOMの副作用によって多能幹細胞を宿していたボダイの生還者はそのすべてが歳をとらなくなった。その驚異的な生態を恐れた強国家たちはボダイの生還者を徹底的に排除しようと動き始めた。能力を持つ生還者に正面からは勝てないことを知っていた強国家たちは、未来人を名乗る人物の助力もあって、かつて使われていたDOOMによるボダイへの干渉発生装置を通して既に他世界への侵略を考えていた一部の強国家と連携した。後にわかったことだったが、侵略するための多次元世界への平行空間転移には、高能力のボダイエネルギー光が必要であることだった。そしてこれは今は無きボダイへの直接干渉を経た生還者にしか無い、言わば個々の能力の発生源たるものだったのだ。こうして室馬醒司たちは平行空間転移エネルギーの要として6万人の生還者もろともエネルギー源の犠牲になることとなった…はずだった。
DOOM技術から応用された強制空間転移によって、6万人のボダイ生還者が転送された先はボダイエネルギー光を瞬時的に取り込むことで彼らが瞬間的に死にゆく墓場そのものだった。取り押えることもなく始まった殺戮の光景に室馬は我を忘れ絶望の声を上げた。記憶を犠牲にした室馬にとってその光景は自分が見てはならないものだった。絶望は過去を呼び、記憶の創生が彼自身に翼を与えた。憎しみではなく、かつて守ると決意したものをもう一度守り抜くために室馬は室馬自身のその決意そのものによって全エネルギーを再臨させたのであった。こうして発生したボダイエネルギー光は一度死んだ生還者たちを復活させ、未知なる世界へ送り込み、その想いの強さから、新たなる創世を成功させたのであった。発生源の生還者たちを失ってもなお力を発し続ける室馬の形を宿した超エネルギー体を強国家は待っていたかのように使おうとした。それだけのエネルギーが無限に発光し続けることは、彼ら強国家の大いなる侵略戦争の視野に入っていたからである。だかそれと同時に人間性を失い空間で発光し続けるだけになった室馬の身体は、そこからエネルギーは吸収できても自在に操ることはできなかった。彼らの文明ではまだこの超エネルギー体を手にすることすらできなかったからである。故に、新たなる新世界へ送られたボダイ生還者たちの生存の有無も皆無だったのだ。
だが、この世界はこうして干渉世界同士の戦争を呼ぶ幕開けに入っていったのである。
結果的に、生還者たちだけが、救われたのであった。
救われた生還者たちには、これまでの記憶が消えることなく残っていた。雪解や瀬戸山や八神たちは、彼が自分たちを生涯守れるために作った新世界で、新たな人生を歩むことをそれぞれに決意したのであった。室馬の想いを守るため、生還者たちは各々に新たに生まれる子孫たちへ、嘘をつくことをきめたのであった。(子孫からの能力は一般的に出ないようになっていった為、生還者たちの子供たちからは多能幹細胞も消失し、生と死を分け隔てるようになった)この世界の真実と、自分たちを守り抜き、自分を犠牲にした1人の伝説を作って。
彼らが残し伝えていくようになった物語はやがてこの世界の古き伝説として生きていくようになった。
君の伝説は時じくに伝えている