バラバラにならなくても

砂のように
そして砂より細かい砂塵になって
すべての終わりがくる

大文明が栄えた古城も戦争と風化で廃墟となり
雨風に打たれ日光に容赦なくさらされ崩れ
いつのまにか土にまみれ埋もれ地表から姿を隠す

物だったらそんなふうにバラバラになって
また地球の一部になる
人も動物も植物も同じように
また地球の一部にもどる

精神はどうか
人がたえまなく地球上をうごいて
食べて飲んで作って壊してきた
この強い意思と精神は
はたして砂のように細かいバラバラになって
さらにもっとバラバラになって
どうなるのだろうか

暴力と暴言
屈折した精神
憎しみに妬みに怨み
無視と隔絶
無知と無智

あらゆるところにみえる
人間荒廃のいく先には
みんなすきかってなことを言って
みんなすきかってに振る舞って
そして人類というものを破壊して
人がただの砂粒になり
散り散りばらばらになり
個々で生きるすべをみつけられず生きられず
錯乱と恐怖で発狂し
人間たる人間の価値が
天に昇華されきったとき
一体の人の身も存在しない日がくる

必然的に
あまりにも必然的に

それから時が経ってしばらくすると
天からお声がかかり
新しい徳がこの天体に降りてきて
また最初からすべてがはじまる

たのしみだ
新しい徳
どんなだろう

今の人の構造だから
なりたっている今の徳

こんどのは
新しい構造に宿るのだから
いまのとは違った
わたしたちには想像もできない徳にちがいない

そうかんたんに
飽きない長持ちするやつがいいなあ
今度の徳

そして
いまのやつみたいに
悪意にかんたんに侵されないやつが

ということは
ちょっとまって
宿を貸す方の構造が変われば
いますぐにでも
新しい徳が発現できるのかもしれない

たぶんきっとそうなんだ
新しくなにかをするために
今あるものを壊して消滅させることはないのだ

そんなことに無駄なエネルギーを使わなくても
今あるこの体を
今宿ってるこの精神で変えてみるんだ

この顔をもっと美男美女にできる
がんばってもっと早く走れるようになる
楽器もうまくなる

なにも難しくはない
ただこの世は一見とらえどころがなくて
わかりにくいから迷うんだけれど
ちょっとした気づきでよくなるようにできている
そんなヒントをいつもだしてくれている

バラバラにならなくても

バラバラにならなくても

もう終りか、と思っても、まだやりのこしていることがあるもんです。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-08-11

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