演者

あのとき時間が止まった
それから私は今の自分でなく
過去の自分のなかでいきている

目標をたて
それを遂行し結果の出来具合を考えるとき
過去の止まったスクリーンにそれを重ねあわせて
はみだしたところがないかながめる

あのとき自分がおもったことが
今も正しいはずだし
それはかわらないはず
まずそう思わないと前へ進めない

絶えず頭のなかの情報をアップデートして
今にへばりついてゆくのはできない
それにはとてつもないエネルギーがいる

かといって先を超えて自分で世界を創造していくには
勇気と能力と知恵がおいつかない

過去の決定が今の決定につながっている
あのときはそうするよりなかった
そして今はこうするよりほかない
一線上の因果の連鎖が
また次の決定につながる

そんなことはよくわかっている
未来の確かさのため
過去に安住している
だから
いつも現在に満足できている

古い観念で生きようとすると
気ばかりつかって頭脳を働かせることをわすれてゆく
新しいことはしなくなるし
退屈さで頭が腐りそう
そして気がついてみればいつのまにか
自分の人生の傍観者になっている

大きな玉の上に乗って常にバランスをとる笑顔の曲芸師
観客は滑って落っこちて怪我するかもと冷や汗をかいているが
演じている当の本人はスリルを味わいながら楽しんでいるにちがいない

脳力を信じ
常にそれを向上してゆく喜びを感じる
演者になる?

それとも
ただの観者になる?

演者

演者

演者になるか観者になるか、それが人生の分かれ目になるかもしれません。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-07-23

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