*星空文庫

あなたとココアを

大野 朱鷺 作

あなたとココアを

べた甘のラヴストーリーです。
お砂糖のたっぷり入ったココアのような風味を感じてください。

虫歯にはご注意を!(笑)


「まったくせっかくの週末なのに。」
 そんな事を呟きながら、知美はテレビのリモコンを手にした。画面の中では、ニュースキャスターが外国での暴動のニュースを伝えている。
 酒に弱い知美は、部屋で飲む習慣は無いし、部屋にアルコール飲料も無い。文彦が来る時にだけ、缶ビールを数本買う程度だ。
「こんな夜はヤケ酒だ。」
などと口に出しても、飲むつもりも無ければ、飲む酒も無い。
 カップに粉末を入れ、ポットのお湯を注ぎ、ココアを作る。
「これを飲んだらゆっくり眠れるかな。眠りに良いのは牛乳だっけ。」
 暖かいココアは、とりあえず気持ちは静めてくれるようだ。

 いつも仕事が忙しい文彦と、曜日に関わらず仕事が入る知美とで、予定が合ってゆっくりできる週末なんて、久し振りのことだった。もう付き合いだして二年半。お互いの生活のペースも、性格も解り合ってはいるが、それでも淋しいものは淋しい。
 しかも、その約束は文彦が言いだしたことなのだ。
「今度の週末、仕事はどうなの。俺もゆっくり出来そうだから、土曜の夜から一緒に過ごして、日曜にどこかに出かけようか。」
なんて、嬉しいことを言ってくれたのに。
 友達の誘いも断って、週末の予定を丸ごと空けておいたのに、昼すぎに文彦からメールが入った。顧客にトラブルが有って、至急行かなくちゃならないって。

 文彦は小さな計測器メーカーのエンジニアをやっている。設計や企画開発にも絡むが、メインの仕事は装置の設置や定期点検、調整、そしてトラブル対応などだ。
 だから、文彦の会社の装置が入っている客の工場に行ってばかりいる。日本中を飛び回っているのだが、その分、知美と会える時間は少なくなってしまう。
 基本的には週休二日なのだが、月曜の朝から四国で仕事なので前泊とか、金曜の夕方に北海道の仕事が終わって、帰って来たら土曜の夕方とか、予定も厳しい。
 知美は、文彦のお土産と土産話を、東京で待っているだけだ。

 今日は茨城の顧客の処で、装置のトラブルが有ったらしい。二十四時間週七日操業の工場なので、週明けまで待てないでどうしても来てくれと言われたそうだ。

 知美のスマホが小さく震える。着信表示は文彦からだ。
「もしもし、ホントにごめんな。ようやく解放されたよ。」
「いままで仕事してたの。」
 時計を眺めるともう十時半になる。
「九時過ぎまで装置をからかってて、ひと区切りついたから、後は明日っていう事で。その後にお客さんの方の担当の人が、誘ってくれたから一緒に飯食って、ようやく今ホテルに戻ってきたところ。」
「大変だったのね。」
「そうだよ。いきなり今日の昼に出張に行けって言われたんだから。」
「仕事の方は上手くいきそうなの。」
「ああ、持って来た部品は交換したから、明日午前中に調整をすれば大丈夫だろう。」
「じゃあ、明日には帰って来るのね。」
「うん。本当なら今頃は知美の隣に居られたのに。こんな見知らぬ駅前のビジネスホテルで一人ぼっちだ。」
「私だって部屋でひとりぼっちよ。週末は何にも予定が無いんだから。」
「そうか。今は何してた。」
「テレビを眺めながら、ココアを飲んでたの。」
「ココアか。」
「ココアがどうかした。」
「ほら、お前、コーヒー飲むと眠れなくなるって言うじゃないか。ココアだってカフェインが入ってるんだよ。一人っきりの晩に眠れなくなっちゃ困るだろう。」
「そうなの。嘘でしょう。」
「まあいいか。そんな事心配して、余計眠れなくちゃ困るものな。明日はお土産もって行くよ。一緒に夕飯でも食おうよ。」
「何時頃に帰れるの。」
「高速走れば二時間くらいだろうけど、電車だと乗り継ぎやあれこれで、やっぱり夕方くらいになっちゃうな。」
「仕方ないわね。なるべく早く帰れるように、お仕事頑張ってね。」
「ああ。明日帰りに向かったら、また連絡するよ。」

 文彦の声が途切れると、テレビの音がやけに煩く感じられる。番組はドラマに変わっているが、眺めていても内容なんて頭に入ってこない。
 知美は大きくため息をつき、テレビを消した。

 シャワーを浴びてベッドに入っても、眠りは訪れない。
 明日の予定も無いし、読みたい本も見たい映画も無い。ショッピングなんかに出かける気も起らない。

 ぼんやりと部屋の中を見回していると、車のキーが目に留まる。
 高速で二時間か。今から行っても真夜中過ぎだし、文彦は明日も仕事だし、駄々っ子みたいな無茶な真似して、文彦を困らせるのも嫌だ。
 でも、やっぱり、会いたいな。
 ココア二人分、ポットに入れて、真夜中に文彦の部屋へ。
「ちょっと一緒にお茶したかっただけ。」
なんて言ったら、驚くだろうな。

 そんな事を思っているうちに、一つの考えが頭に浮かぶ。
 そうだ。明日、仕事が終わった文彦を駅で待ち伏せしよう。
 一日そっくり予定は空いてるんだから、午前中にここを出て、お昼頃に落ち合って、一緒に東京までドライヴして帰ってこよう。
 もちろん、ポットにはココアを詰めて行こう。

 そんな事を考えると、とても幸せな気分になる。
 ベッドの中で一人ニコニコしながら、やがて知美は眠りに落ちて行った。


 翌朝、快適な目覚めを迎えた知美は、文彦の手が空いていそうな頃を見計らって、電話をかけた。
「おはよう。よく眠れた。寝坊しなかった。」
「ああ、もう起きて朝食を済ませたところだよ。どうしたんだい。」
「今日は何をしようか、考えてたの。あなたはいつ頃帰れるのかな、と思ってね。」
「そうだね。夕方って言ってもはっきりしないものね。」
「今居るのは、なんていう所なの。茨城だけじゃ解らないわ。」
「今は勝田っていう駅の駅前のビジネスホテルに居るんだ。お客さんの工場は、ここから駅の中を通り抜けて何百メートルか先の平田電子工業っていう会社。」
「じゃあ、そこまでは歩いて行くのね。」
「そうだよ。工具箱を持って歩いて行って、終わったらこの駅まで歩いて来て、一番早い列車でそっちに向かうよ。」
「解った。終わる時間はお昼頃ではっきりしないのね。終わったら、お客さんの会社を出る時にメールをくれるかな。そうすればこっちに帰って来るのが何時になるか判るから。」
「そうだね。十一時に終わるか一時に終わるかで、かなり違ってくるからね。連絡するよ。」
「連絡待ってるからね。」

 今の会話で、文彦は知美がこの部屋で待っていると思っただろう。
 どこで待っているなんて、一言も言わなかったから、勝田の駅前にいきなり現れれば驚くだろう。その時の文彦の顔を思い浮かべて、思わずニヤニヤとしてしまう。

 昨夜考えた通りに、ココアを作ってポットに詰める。お昼とは言っても、昼食はどうなるか判らないから、お弁当は作らない。ネットで行先の地図を眺めてみる。お客さんの会社の位置まで、はっきりと確認できる。これなら、会社から出て来て、駅に行くまでの間に捕まえられる。
 ポットとバッグを抱え、車のキーを手に取って、知美は部屋を出た。


 日曜の朝の高速道路は空いている。行楽シーズンでもなく、時間帯も良かったのだろう。カーナビの案内に従って、順調に目的の勝田駅前まで車を走らせた。
 まだ十一時の少し前だ。
 駅前のコンビニでペットボトルのお茶とおやつを買って、車を停められるところを探す。ゆっくりと文彦の来ている工場の前まで来ると、道路の向かい側に平田電子工業の従業員用の駐車場が見えた。チェーンなどで閉めてもないし、日曜だからだろうか、車もほとんど無い。ちゃっかりとそこに車を停めさせてもらって、エンジンを切り、コンビニで買ったおやつをつまみながら、バッグの中から取りだした雑誌を眺める。
 もうそろそろ出てくるだろうか、二時間くらいは待たなければいけないだろうか、
 どんな顔をするだろうか、ワクワクしながら時間は流れて行く。

 日曜でもあるし、社員の出退勤の時間でもないからだろう。会社の門を出入りする人間は、ほとんどいない。十二時をちょっと過ぎ、雑誌も一通り読み終わった頃に、スマホにメールが入る。
「今から顧客の工場を出ます。列車に乗ったら着く時間も分かるから、またメールします。」
 その数分後に、会社の門から出てくる文彦の姿を見つけることができた。
 電話で話したように、鞄を肩から下げ、反対の手には工具箱を持っている。
 どうやって声をかけようかと知美が思った瞬間、文彦の隣にもう一人の人影が現れた。すらりとした髪の長い美人だ。二人は親しげに話しながら、駅の方角に歩いて行く。

 誰なんだろう。やけに親しげに話している。同僚と二人掛かりの修理とは聞いていない。文彦と同じ部署に女性も居るとは聞いているが、一緒に出張して来たのだろうか。私にはそんな事を一言も言わないで。あんなに仲良さそうに歩いてる。まさか。
 知美は迷った。ここで声をかけて良いんだろうか。あの人がどういう人なのかも判らない。もしかして、二人一緒に東京まで帰るのだろうか。
 脳裏にそんな疑惑を持ちながら、知美は車を発進させた。歩く二人の後を、ゆっくりと尾行するように車を進める。
 次の曲がり角で、その女性は文彦と挨拶を交し、角を曲がって行った。角の先には、平田電子従業員用第二駐車場という看板が有る。女性はそこに停めてあった車に乗り込み、文彦に車内から手を振ると、駅と反対方向に走り去った。
 文彦は軽く頭を下げ挨拶をすると、また駅に向かって歩き出す。

 知美はとりあえずひと安心して、文彦に電話をかけた。
「もしもし、ああ、今、駅に向かってるところ。」
「うん、知ってるよ。ちょっと立ち止まって後ろを振り返ってみて。」
 文彦は言われたとおりに振り向くと、そこに知美の車を見つけ満面の笑みを浮かべる。

 知美が歩道に車を寄せると、文彦はすばやく助手席に乗り込んだ。後ろのシートに工具箱とバッグを置き、シートベルトを締める。
「ここまで来てくれたんだ。」
 嬉しそうに知美に話しかけるが、知美としては先ほどの光景が頭に有り、わだかまりが融けない。
「何の予定も無くなったからね。ここまで来ちゃった。来ない方が良かったかしら。」
「何を言ってるんだよ。来てくれて嬉しいに決まってるじゃないか。」
「そうかな。さっきは美人と二人でニコニコしながら歩いてたようだけど。」
「ああ、見てたんだ。」
「あの人は誰なの。」
「あれは、この工場の担当の人。自分の担当装置が壊れちゃったから、休日出勤して立ち会ってくれてたの。」
「そうなの。やけに嬉しそうに話してたけど。」
「そりゃあ、担当装置が治って、無事動くようになれば嬉しいだろう。」
「あなただって、嬉しそうな顔してたし。」
「お客様だし、一緒に修理に立ち会ってくれた人だもの。」
「それに美人だしね。」
「なに、お前。やきもち焼いてるの。」
知美はその言葉には返事をせず、無言で車を走らせる。

 高速のインターまで数キロの看板が見えた辺りで、文彦が言う。
「ところで、お前。お昼は食べたの。」
「未だだけど。」
「じゃあ、高速に乗る前に、どこかで食べようよ。俺もお腹空いたし。」
「そうね。あそこで良いかな。」
知美は道路沿いのファミレスを指す。全国チェーンのどこでも見かける店だ。
「それより、その先にあるあの店の方が良いよ。」
地元の店らしい、見慣れない看板だ。
 知美は、文彦の指した店の駐車場に車を入れた。
「昨夜も、この店に連れて来てもらったんだ。」
 二人で店に入ってメニューを眺める。地元の魚や野菜を使ったメニューが、全国チェーンのファミレスと違い美味しそうだ。二人ともおすすめパスタランチをオーダーする。

「じゃあ、昨夜もさっきの人と一緒に来たの。」
 知美はまだ拘りを捨てきれない。
「違うよ。昨日は別の担当の人。男の人だよ。」
「男の人と二人で、こんなおしゃれな処に。」
「ああ。駅の周りは居酒屋ばかりだからね。その人は車通勤だから飲めないし、俺も一人で居酒屋に行こうっていう気分でも無かったんだ。一緒に晩飯をどうですか、私は飲めないけど、って誘ってもらったから、その人の車でここまで来たんだ。」
「それでこんな店を知ってたんだ。」
「こんな店なら、お前と一緒に来たいな、って思ったけど、まさか実現するなんてね。」
 お腹が満たされるのと同時に、なんとなく和やかな空気になって行く。
 もっとも、わだかまりが有ったのは知美の方だけで、文彦は知美の気持ちなど気付いても居ない。
 一瞬見かけた美人に動揺するなんて、なんだか変だと、自分でも思ってしまう。
 食事の後のコーヒーは飲まず店を出ると、今度は文彦が運転席に座った。


 高速に乗ると、知美は後ろのシートからポットを取り上げた。中身をカップに注いで、文彦に差し出す。
「いい香りだね。ココアか。」
「ねえ、ココアにカフェインが入ってるって本当なの。」
「昔、何かの話でそう聞いたんだけどね。」
「やっぱり眠れなくなるのかな。」
「昨夜、飲んだんだろう。どうだったの。」
「ちょっと眠れなかったけど。あなたがあんな事言ったからよ。」
「けっこう、そういう自己暗示にかかっちゃうからな。知美は。」
「でも、楽しい事考えてたら、よく眠れたわよ。」
「楽しい事って。」
「今日、どうやってあなたを驚かせようかって。」
「そうか。そんな計画を立ててたんだな。」
「だって、今日一日暇が出来ちゃったんだもの。どうやって一日過ごそうかなって思ったの。」

 車は順調に東京への道を走って行く。昼すぎのドライヴで渋滞も無い。
「このまま帰っても中途半端な時間だな。ちょっと遠回りをしないか。」
文彦がそんな事を言いだす。
「良いわよ。どこに連れて行ってくれるの。」
「いつもの処。富士山を眺めながら夕食なんてどうだい。」
「私は良いけど。大丈夫なの、仕事の後で疲れてない。」
「このくらい平気さ。明日は午後からの出勤で良いって言われてるしね。」
「私も仕事は午後からだから大丈夫。」
 首都高に入って、時計は三時を回った頃だ。文彦は四号線から中央道にノンストップで車を走らせる。本来なら降りるインターも過ぎ、やがて周囲の景色は山に囲まれるようになる。


「もう、何回もここを走ったよね。」
「そうね。最初は『かいじ』だったけど、最近は車ばっかりね。」
 二人の最初の出会いも『かいじ』だった。正確に言えば、八王子駅で『かいじ』を降りたホームでの事だった。

 二年半前、帰省から戻る知美は富士急行線の電車の中に居た。車内は空いていて、のんびりと車窓を眺めていた知美に、見知らぬ男が声をかけたのだ。
「あの、これ、落としましたよ。」
 手には知美のハンカチが有った。さっき、ペットボトルを取りだした時に、バッグから落としたのだろう。
「ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
お互いににっこり笑って、それきりの筈だった。
 ところが、同じ車内の少し離れた席に座った男は、知美の降りた駅で一緒に降り、同じ列車に乗り換え、また同じ駅で降りたのだ。
 まさか、私に目を付けたストーカーじゃないよね。そんなことまで考えながら、見知らぬ男が付いてくる漠然とした不安を覚えていた。

 中央線の次の電車を待っている間に、知美は意を決して、男に話しかけた。
「ずっと私の後を付いて来てるんですか。」
 男は笑いながら答えた。
「こんな美人に誤解されるなんて困ったな。実は、あなたが私の行く方向の、目の前を歩いているんですよ。」
 知美は偶然の一致と知って、すっかり恥ずかしくなってしまった。
「ごめんなさい。自意識過剰でした。」
そう謝る知美に、男は笑いかけた。
「良いんですよ。ちょっとくらい自意識過剰気味でも。僕も美人の道連れが居るような気分で、ここまで戻って来たんですから。」
そして、二人で並んで目の前に来た電車に乗り込んだのだ。
 男は名刺を渡して自己紹介をした。
「実は、あそこには僕の実家が有るんですよ。」
「山梨県人なんですね。私もですよ。」
 話をしてみると、出身も隣町、今住んでいるのも、中央線の隣の駅だった。出身高校も同じ、独身で一人暮らしも同じ、似た者同士の二人だった。
 降車駅に来ると、にこやかに手を振って男は降りて行った。
 なかなか良い感じの男だったな。また会おうって約束しなかったのはもったいなかったかな。まあ、名刺も貰った事だし、今度連絡取ってみよう。
 部屋に戻ってから、知美はそんな事を思った。
 それが文彦だったのだ。

 その後、誤解のお詫びという口実で文彦と会った知美は、
「また、会ってくれますか。」
という言葉に頷き、二人は次第に親しくなっていったのだ。


 車は大月のジャンクションから富士五湖方面に向かう。文彦が行こうとしている場所は見当がついた。湖の北側の高台から夕景の冨士を眺め、その後に何度か行ったことのあるお店で夕食にするつもりだろう。
 故郷の懐かしさと、冨士山の雄大な景色と、両方が素敵なデートコースだ。
 日没の前に駐車場に車を停め、二人は大きく息を吸い込む。
「やっぱり、この景色は良いな。」
「そうね、空気も東京とは違うし、景色も山の中だものね。」
「やっぱり山梨県人は富士山を見てると安心するよ。」
「そうそう、山梨県人同士だと言葉も通じるしね。」
「俺、何か言ったかな。」
「うん。昨夜、装置をからかうって言ったでしょう。甲州弁だよ。」
「そうか。ついつい出ちゃうんだよな。」
「からかうのは、可愛い女の子だけにしなきゃね。」
 二人はそんな他愛も無い話で笑う。
 暮色が少しずつ深くなっていく。

「ところで、明日は午後から仕事なの。お昼までに帰れば良いのかな。」
「そうだけど。それって、今夜は帰らないっていう意味。」
「うん。せっかくここまで来たんだから、そんなのも良いかなって思ってね。」
「そうね。あなたも仕事の後でここまで運転して来たんだし、中央道の上り線は毎週日曜のいつもの渋滞だろうしね。」
「ここまで来て、実家にも寄らずにっていうのも、ちょっと気が引けるけどね。」
「まあ、それは言わないことにしてね。どこかに泊まって朝起きて帰れば、時間は充分間に合うものね。」
「昨日一緒に居られなかった埋め合わせっていう事で。」
 文彦はさっそく知っている宿に電話を入れて、泊りの予約をする。

 湖畔にひとつふたつと、灯りが燈り始める。冨士の姿も闇の中のシルエットに変わって行く。
「じゃあ、美味しい御飯を食べて、宿に入ってゆっくりしようか。」
 文彦にそう促され、知美は文彦と手をつないで車に戻る。
 今晩は、ココアを飲んでも良く眠れそうだな。知美はそんな事を考えていた。


                        了

『あなたとココアを』

このストーリーは、私の友人たちのネット上での会話が種になっています。

眠れない夜にココアを飲みながら、他愛もない話をしているうちに、
それを歌にしようと言う人が現れ、私が詞と曲を書きました。
その会話の輪に加わっていた女性二人組「いちこ」(ヴォーカル+ピアノのユニット)が唄うように
女性目線からの歌詞です。

さらに、その歌詞のバックボーンストーリーとして、このお話の前半部分を書き、
ローカルワードが入っているというチェックから、後半の馴れ初め等の部分まで拡がり・・・
こういうお話になりました。

きっかけをくれた「かっぱ友の会」の皆さん、そして曲を唄ってくれる「いちこ」の二人には、
とても感謝しています。

今後、何かの機会に音源を作って、曲の方も披露出来れば良いな、なんて考えてもいます。
(「ココアはやっぱり××」でしょうか。××のココアのCM曲にでも使ってもらえないかな・・・(笑))

『あなたとココアを』 大野 朱鷺 作

せっかく週末の予定を空けておいたのに! 恋人が急な仕事で会えなくなってしまった知美は、一人きりの夜にココアを飲みながら素敵な計画を思いつく。 ポットにココアを詰めて、車のキーを手に取って・・・

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2015-04-18
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