与謝野晶子幻想/敬愛する歌人に捧ぐ

波や知る 松の緑の大浜に 熱き歌人の住みし昔を

大浜の 波音響く菓子庵に かの歌人は生まれ出にけり

疎まれて 寂しき心を胸に抱き 今日も来たりて海と語れり

遣る瀬無き 胸の想いを徒然に 歌に託せし店を守りて

大浜の 寄せ來る波に歌人は 何を夢見て乙女となりしか

大浜に 寄せる夕波赤々と 煌めき歌人の胸は燃えゆき

浜寺の 松の緑の夕影に 遥かに寄する波や あの歌

(海恋し 汐の遠鳴り数えては 乙女となりし 父母の家   与謝野晶子)

大浜の汐の遠鳴り消えにしも 歌人の詩に永遠の波音

松影に 清き潮の寄せる波 砂利の大浜入りて貝採り


*この愚作の数々は、私が知り得た限られた知識で思いついたものであり、
事実と異なった点があれば、平にお許しください。

なお、与謝野晶子(本名 鳳 志よう 敬称略)が生まれた大阪府堺市の大浜にあった美しい渚は埋め立てによってとうに失われ、現在は浜寺公園となっていて、松林だけがわずかに残り当時の面影を忍ばせております。最後の一首は私が子供の頃に大浜にあった水族館(現在はありません)を訪れたときに、実際に眼にした光景です。漁師の方が胸まであるゴム製の防水具を身に着け貝を採っている姿を、浜の砂利を踏みしめながら見たのを、いまでも鮮明に覚えています。今はコンビナートに埋め尽くされていて当時のみる影もありません。あのしかった白砂青松の海は永遠に失われてしまいました。私たちは一体何を失い、何を得たのでしょうか。いつも、晶子の歌を思うたびにそう考えずにはいられません。又、大阪市内の難波(なんば)と和歌山市を結ぶ南海本線堺駅前には晶子の色紙と筆を手にした銅像が立っています。浜寺公園も市民の憩いの場となっており、庭園や花壇、子供の遊び場もあります。晶子の歌集を片手に、一度訪ねられては如何でしょうか。俳句のコーナー( 花籠 )にも、晶子を偲んだ八首を載せさせて頂きました。興味のある方は、ぜひご覧ください。

                                            ( 筆者敬白 )

与謝野晶子幻想/敬愛する歌人に捧ぐ

与謝野晶子幻想/敬愛する歌人に捧ぐ

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-05-01

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