夢のメルトモ

はるのいずみ

  


     地下鉄の階段を駆け上がってきた少女は

     息を弾ませながら 腕時計を見て 辺りを見回した

     そして バックから ピンクのスマホを取り出し

     二、三タップした後 画面を見つめ 眼を輝かせて微笑んだ
     
     手鏡を出して 化粧をチェックし 目印の髪留めを付けて

     傍のベンチに腰掛けて その時を待った 

     
     夕陽を受けた川面のきらめきがやがて薄れ

     公園に夕闇が迫る頃 肩を落とした少女が

     涙を拭きながら 地下鉄の階段を下りて行った


     公園の隅にうずくまっていた 一人の男が

     よろよろと起ちあがると 破れかけたポケットから

     何かを取り出し しばらくじっと見つめていたが

     やがて弾みをつけて ポチャッとそれを水面に投げ捨てると 

     空き缶の詰まった袋を背に とぼとぼと 歩き去った

     

夢のメルトモ

夢のメルトモ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
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