絵の中の湖
ふるさとに湖の絵がある。暗い森に囲まれた黒い湖。くもり空に数羽の水鳥が飛んでいる。僕はその森で恋人に逢った。純白のワンピースが陰鬱な景色に映えていた。肌まで光り輝いていた。
僕たちは抱き合うことも手をつなぐこともなかった。密集する木々がいつも僕たちの間にあった。僕たちは並んで歩いてーーいつの間にかお互いを見失った。振り返った僕は落ち葉の音だけを聞いた。
僕が成長するにつれ絵はほころび、すっかり穴があいてしまった。絵から出ることのできない僕は、右目で穴を見つめながら、左目で恋人の面影を探している。
絵の中の湖