絵の中の湖

ふるさとに湖の絵がある。暗い森に囲まれた黒い湖。くもり空に数羽の水鳥が飛んでいる。僕はその森で恋人に逢った。純白のワンピースが陰鬱な景色に映えていた。肌まで光り輝いていた。
僕たちは抱き合うことも手をつなぐこともなかった。密集する木々がいつも僕たちの間にあった。僕たちは並んで歩いてーーいつの間にかお互いを見失った。振り返った僕は落ち葉の音だけを聞いた。
僕が成長するにつれ絵はほころび、すっかり穴があいてしまった。絵から出ることのできない僕は、右目で穴を見つめながら、左目で恋人の面影を探している。

絵の中の湖

絵の中の湖

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-04-18

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