◽️プチストーリー【吉村さんと佐倉さん】(作品No_06)
【作者便り:家族、恋人、友達――
”人と人との距離感”には、どうしても“すれ違い”が生まれることがあります。
今回のストーリーは、吉村さんと佐倉さんという夫婦が主人公。
ほんの少しの”違和感”から始まったこの物語が、
あなたの“誰かとの距離”にも、そっと触れるかもしれません。】
最近、夫の吉村さんの様子がヘンだ。
家でやたら携帯電話をいじってることが増えた。
もともと、吉村さんはわりと寡黙な方だし、まぁ新婚って時期も過ぎて、お互い慣れきってきて、こんなもんと言えばそうなのかもしれない。
しれないのだが、妻である私は気になり始めた。
最近、私が寝た後で吉村さん、昔のテレビドラマをわざわざ動画のサブスクに加入して見てるみたい。付き合ってたときからドラマとか見る人じゃいし、好きとか聞いたことないし。何かヘンだ。
些細な変化かもしれない。だけど、、、。
別のある日、私が夜中トイレに起きたとき、暗いリビングで吉村さんの小さな声が聞こえたの、名前が聞こえたような。
誰かと遅い時間に電話でもしてたのかも。
あー、気になる。気になるよ。
でも、聞けない。聞いてしまったら、、、。
私の思い過ごしであって欲しい。
吉村さん、最近、朝昼晩と、ありがとうをよく言うようになった。
それはそれで嬉しいのだけど、なんだろ、そろそろ1日が終わり、寝る時間になったところで急に、吉村さんが結婚してくれてありがとう、とか。
いまこのタイミングに言う!?
もう2人でお布団に入って、寝かかってる時に、吉村さんが今日の夕ご飯のきんぴら美味しかったありがとう、あと、牛乳の買い足しありがとう、だって。
だから、今それ言う?!
吉村さん、かわいい二頭身のクマちゃんがプリントされたマグカップをお揃いになるように仕事帰りに2つ買ってきて、コーヒーを淹れてくれて、少し牛乳多めだったけど、、、。急に一緒に飲んだり。
今までそんな習慣なかったのに。。
嬉しいけど、けどさ、そのまま受け止められなくて引っかかってしまう私。
そして、さらに月日が経ち、ついに、、、
吉村さんがめっきり話をしなくなった。あれだけ急にだけど、ありがとうを言うようになってたのに。なんなのいったい。
私の作った食事を残すようになった。
きんぴら美味しいって言ってくれてたじゃん、、、。
何か夕食の前に食べてきてるのかな。
流石に、耐えきれなくなって一粒の勇気を出して思い切って、
「吉村さん、なんかあった?どうしたの?」と尋ねたら、
「うん?何もないよ、佐倉さんの思い過ごしじゃない?」
とさらりと言ってのけた。
いけないのはわかってる。でも、もう、、。
私は吉村さんがお風呂に入ってる時に、、、
やたらお財布を大事にしてる感じだったので、
直感を信じて吉村さんの財布を開けた。
当然入ってるお金の他に、髪ゴムが入った。
なんで使わないのに女性物持ってるの!あ、だめだめだめだめ、、、だめ、手が勝手に吉村さんの携帯電話に、終わっちゃう。終わったらやだよ。
ゆうこ、止めな。止めときなって!
私は吉村さんの携帯電話を開いた。
心臓の鼓動が耳の前から聞こえるみたい。メールは、、、大丈夫そう。
メモ帳も見てみよう、、、あ、、、え、、
私が吉村さんの携帯を覗いていたら、そういうときに限ってすぐにお風呂から上がってきた吉村さん。
私は神経衰弱で手持ちの最後のカードが揃って場に出したかのように言った。
「話したいことがあるから、テーブルに座ってくれないかな・・・」
「わかった。ちょっと待って」
急に始めた習慣であるクマちゃんのお揃いのマグカップを2つ用意して、牛乳たっぷりのコーヒーを2人分用意してテーブルに置いた。
私は深く一呼吸した後、短髪な吉村さんに向けて言葉を切り出した。
目を合わせることができない。
「吉村さん、髪短いから髪ゴムとか使わないよね」
「うん?使ってないよ?」吉村さんは自分のお風呂入りたての髪を片手で触りながら訝しげに伝えた。
「じ、じゃあ。これはなんなの、、、」
私は吉村さんの目の前のテーブルにグーで握って隠しもっていた髪ゴムを静かに開いて置いた。これがただのマジックショーだったらどんなにいいことか、、、
「この髪ゴム、吉村さんの財布に入ってた。ねぇ、使わない髪ゴムが何で持ってるの?」
「え?!佐倉さん、僕の財布の中を見たの?」
「いいから答えて!お願い」
「え、それは、、、」
答えづらそうな吉村さんの姿をしていた。見たくなかった姿。
あー、この状況つらい。もうどっちかはっきりしたい。
「もう、じゃあ、もう一つ聞くよ。スマホの中のメモ帳に、
1.横顔が好き。
2.笑ったときのえくぼがいい。
3.香水が似合いそう
、、、
ってこれどこの女の人のこと、書いてるの!」
「え!人のスマホまで見たの?!佐倉さんどうしちゃったの?!」
「どうしちゃったのって!?あなたがそうさせてるんじゃない!」
「吉村さん、浮気してるんでしょ!」
あーあ、、、、、言っちゃった。。。。
吉村さんは、私の声の大きさに圧倒され、銃を突きつけられて両手を挙げているように感じられた。
私は喉をゴクリとした。目が滲んでくる。
時間にしては数分かもしれないけど、私には何十倍、何百倍にも感じられた。
動きがあったのは吉村さんの方からだった。
「佐倉さん、せっかく淹れたコーヒーだから飲んで欲しいな。」
何を今更、それで許されると思ってるの?!
「そして、携帯のさっき言ってたメモ帳を最後までよく見てみて」
吉村さんは自分の携帯を、私の前に差し出した。
メモ帳
“好き”を10個書き出す
1. 横顔が好き
2.笑ったときのえくぼがいい
3.香水が似合いそう
4.気付いてないけど人にやさしい
5.コーヒーを熱がりながら少しずつ飲むとこ
6.牛乳を切らさないこだわり
7.昔のテレビドラマを何回も真剣に見てるとき
8.書く字が少し丸文字
9.きんぴらごぼうが絶品!いくらでも食べれる
10.ダメなところがたくさんある僕と結婚してくれたこと
私、猫舌だし、テレビドラマも好き、あ、きんぴらごぼう。
そして、結婚のこと、、
「これ、、、私のこと?私の好きなところ書いてたの!?」
「そ、そう。佐倉さんのこと。いざ改めて文字で書くとなかなか書けないものだね」
緊張してた私の体がいっきに解放された。
「なんで!こんなことしてるの?!そういうことする人じゃないよね」
「えーと、それは・・・」この期に及んでまだ言いづらそうな吉村さん。
「佐倉さんとの結婚生活をより良くするためにどうすればいいか?を生成AIに相談したら、そう言われて、、、」
「生成AI?人工知能に聞いたの?!私たちのこと?
ああ!だから、携帯いじることが多くなってたんだ!」
ホッとしてテンションが妙に上がってしまう。
「あ、え、そうです、、」吉村さんは神妙な顔で言った。
「うーん」もう私は唸るしかなかった。
「それに、色々気になるけど、この10番目、ダメなところがたくさんある僕と結婚してくれたことって。ダメなところとか、そういうのよそうよ」
「だって、嫌わないのを感謝してるし、すごいなって」
「私は、そんなすごいとか言われることでもなくて、単純に、もしそんなことで気持ちが変わってしまうような人から私が好きと逆に言われたら嫌だなってだけ。だから、自分はそうはなりたくないってだけだよ」
「そうなんだ・・・なんか、ありがとう・・・」
「あ。いえいえ」
吉村さん、佐倉さんは小さく交互にゆっくりとお辞儀をした。
私は椅子を立ち上がり、
吉村さんの手を私の胸に、私は吉村さんの胸に手を添えた。
「ねぇ、話そう。私の中に、吉村さんの中に、答えはあるんだよ」
「ふたりで見つけていこうよ」
吉村さんは言葉を噛み締めながら、小さく頷いて。
「うん。そうだね」
そして、いったんお互い携帯電話の電源をオフにした。
「ゆ、ゆうこさん、まずはコーヒー冷めたから入れ直すね」
<了>
吉村さんの携帯電話がここにある。
読者だけ、佐倉さんも見ていない生成AIに相談した全てが見られるようだ。
了解しました、吉村さん。
以下、生成AIとの会話形式・手短モードでお届けします。
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吉村さん:「佐倉さんと、もっと仲良くなるにはどうすれば?」
AI:「“おそろい”のものを1つもつと、ご縁が結び直されるとされています。マグカップ、靴下、歯ブラシでも効果ありです。」
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吉村さん:「……ありがとうって、言いすぎても変じゃない?」
AI:「10回までならOKです。“言霊“が巡り、運気も循環すると言われています。“ありがとう貯金”ですね。」
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吉村さん:「じゃあ、その……願い事とか、いつ言えばいい?」
AI:「深夜が最適です。寝静まった頃、こっそり小声で。気配に乗って、叶いやすくなると伝えられています。」
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吉村さん:「佐倉さん、昔ドラマ好きだったんですよ。ああいうの見といた方がいいですか?」
AI:「はい。相手の趣味を“理解しようとする姿勢”が、大吉とされています。見ておくと縁が深まります。」
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吉村さん:「……あの、好きなとこ10個って、どうなんですかね……」
AI:「書くことに意味があります。言葉にすることで、想いが形になります。“言霊”が宿るという考え方です。」
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いつでも、続きをご相談ください。
吉村さんの行動がお二人にしっかりご利益ありますように。
<おしまい>
◽️プチストーリー【吉村さんと佐倉さん】(作品No_06)