ヒトとして生まれて:第16巻
翠(かわせみ)ダイアリー 001
今年(2025年)の初夏は、九州四日間の旅として別府温泉方面に
出掛けてみた。旅先選びは家内の得意とするところなので、今回も膨大
な量のパンフレットが寄せられてくる阪急交通社の旅案内から、家内の
「選択眼」任せで旅に出た。
団塊の世代の夫婦旅が旬を迎えていることから、今回の旅人のサイズ
は43名で昨年比では膨張傾向である。早朝に出発の飛行機旅に懲りた
私たちは今回はお昼ごろの飛行機便で帰りも早目の帰り便の旅を選んだ。
今回の旅程で、一番に、気に入ったホテルは三日目の「杉乃井ホテル」
(別府温泉)で今までに泊まったホテルで五指に入ってくる宿と云える。
ホテルの宿泊棟は、3棟から構成されており、棟と棟を繋ぐエリアには
大きなゲームセンターが配置されていて温泉は屋上にレイアウトされて
いるため、ホテルが丘の上に位置しているという立地条件もあり昼には
温泉に入りながら別府温泉の湯けむりを眺めて、夜には別府市街の夜景
を一望できるという絶景で設計センスが垢抜けている。
「室内の設計も旅人の気持ちを良く把握している」という印象で・・・
「設計センスが優れているな」と、いう点では洗面所と風呂とトイレが
別になっているところまでは誰でも思いつくが洗面所が二人で同時利用
出来るデュアル仕様になっている点は、エクセレント評価だ。
総じて、若者向けゲームセンターに趣を置いている点や、洗面所内の
デュアル思考など新しい感覚でデザインされているところから、三世代
&四世代ファミリーで一緒に宿泊するには最適のホテルと云える印象で
鎌倉ファミリーとの一緒の旅が想像された。
今夏には我が家と鎌倉ファミリーとの北海道旅行が話題になったこと
もあり、昨夏は、下見も兼ねて仙台港から北海道に向けての船旅なども
体験したが、鎌倉の孫が今春の大学受験で鎌倉からなら自宅から通える
ところの慶応に合格、それまでは逗子開成高校で共に受験勉強に励んで
いた仲間と意気投合して、北海道のスキー旅行に出かけて、親と一緒に
出掛ける旅からは卒業、今夏も学生仲間で連れだって北海道旅行に出掛
ける様子なので、毎年の恒例行事であった「鎌倉ファミリとの二世帯旅」
は当面はお預けの様である。
したがって、当面は、鎌倉の孫と一緒に食事がしたければ、鎌倉まで出かけて海上に花火が写る「鎌倉の花火大会」などを狙って鎌倉に出掛けるなどの選択肢を設えて鎌倉に出掛けるのも一案だ。鎌倉の祖母は102歳までの長寿を全うしており、生前に鎌倉の70年超の洋館を建て替えることを思い立って、息子に
指示(鎌倉ファミリーの親父さん)もともと建築好き、大手建築会社の重役で一級建築士ということもあり、洋館を壊して「メーターモジュール方式」の家に建て替えた。メーターモジュールというのは我々の常識では「1800×900サイズの畳サイズ」で家の間取りを設計するが「2000×1000サイズ」で間取りを設計して行くので、家の階段などもだいぶゆったりした印象で広々としている。
孫の可愛さ百倍の親父さんにしてみれば、自分の息子(長男)の書斎よりも、孫の部屋は三倍の広さで二階部分に設計したため、我々が鎌倉を訪問した時には孫の部屋に泊めてもらうことになる(1階には客間もあるが孫と一緒が良い)。だから北海道旅行をはじめ、これからは、学生同士の旅の土産話を鎌倉に泊めてもらって聞かせてもらうのも楽しみだ。そうはいっても、先日は「孫の大学合格のお祝い」として、鎌倉ファミリが川越まで出かけて来てくれて、イタリアとフレンチの融合レストランで合格祝いの食事を共に楽しませていただいた。
この様な祝いの席のセッティングは、鎌倉ファミリーの娘の特技とも云える分野で、今回も、お任せの祝いの席であった。川越のビル内に、その趣向の凝ったレストランは存在していた。様式は「イタリアンとフレンチの折衷」といった斬新なレストランで、店の名前は「SENTIAMO」店の入り口にはオーナーシェフの似顔絵が描かれており、その段階から顧客の興味を惹く趣向になっている。案内されたのは個室で5名以上の利用が原則の様である。周囲は暗く、正面の照明でお互いの顔が際立つように工夫されている。献立に沿って料理が運ばれ三人の女性スタッフによって料理の提供が進行されて行く。
翠(かわせみ)ダイアリー 002
その川越の趣向の凝ったレストランは「イタリアンとフレンチの折衷スタイル」で提供される料理にもシェフからの洒落が効いていて思わず笑ってしまう。
〇 先ずは、弥生の献立と謳っているだけに、前菜は季節感たっぷりの新鮮な野菜と、点のように浮かび上がったソース類
〇 風車豚とモルタデッラとキノコの盛り合わせは絶妙な味覚
〇 ここで「たい焼き」には驚かされた。まさに、泳げたい焼き君の出で立ちでソースの海の中をたい焼きが泳いでいる。これはシェフの洒落で、たい焼きの皮を剥ぐと、中に正真正銘の鯛を焼いた具材が内在しており気の利いた駄洒落といったところだ
〇 ブラックアンガス牛はレアで提供され美味であった。添えられたパンも香ばしく、パリのレストランを想像させる印象であった
〇 春トリュフはアイスクリームとの相乗りで美味しかった
〇 焼き菓子は五種類、これも洒落が効いていて、お寿司の五品風の皿に盛りつけてあった、これはオーダーしたアールグレーの紅茶にピッタリ
最後にシェフのご尊顔を拝したいという、我々の要望に応える様にオーナーシェフが挨拶に見えたが「恵比寿様のようなご尊顔」にて有難く、入学お祝いのキャンドルを囲んで鎌倉ファミリーと共に記念写真を撮っていただき目出度く祝宴を記念に収めて小江戸川越の街に繰り出し大賑わいの市街地を散策した。
イタリアンにしてもフレンチにしても毎日の様に豪華な食卓が続くと飽きて来るので、イタリアンとフレンチの折衷スタイルは、シェフの遊び心としては良いかもしれない。特にフレンチの場合、毎日の様にこれでもかという勢いで豪華な食卓が続くと心底から飽きてくるので、イタリアンとフレンチの折衷スタイルというのは、今回のレストラン「SENTIAMO」の様にオーナーシェフが遊び心に溢れている場合などは客席で拍手が湧くかもしれない。願わくばフレンチと和食の折衷スタイルなどは我々が望むところだ。実際に、私が日本生産性本部からの要請で「インダストリアル・エンジニアリング(管理工学)」の講師として「生産性の船」に乗船した時に、連日のフレンチの食事が続く中で、ある日(突然)和食の日本蕎麦が昼食に振舞われた時には、生産性の船という堅苦しさもある雰囲気の中で豪華客船が揺れる程の拍手が湧いた。
生産性の船に講師として乗船する案件については日本インダストリアル・エンジニアリング協会の管理部長が、当時、航空宇宙事業本部のTQC推進部を訪問して、航空宇宙事業本部の幹部会に諮られ、講師としての収入:108335円は当事業本部の雑収入として計上することで承認された。
当時は、生産事業部の統括部門からTQC推進部に異動したばかりのタイミングで、それまでに携わった瑞穂工場における生産性向上運動の一環で、ジェットエンジン製造における最終的な組立作業やオーバーホール作業における動作分析において「ビデオIE」という独自の管理技法導入が評価されて広く普及させて欲しいという要望が関東地区のIE協会だけでなく、トヨタ生産方式が席巻していた中部IE協会においても講演などが要請されていたこともあり、これを全国に普及させたいという日本IE協会の狙いもあっての「生産性の船への乗船依頼」であった。
(続 く)
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