海水浴
海が青黒く広がっている。日の光を反射してきらめいている。砂浜では、たくさんの人が遊んでいる。ざわめきの中、僕を呼ぶ声がする。
沖へ行こう、父の声だ、呼びかけている。
気をつけて、弟が言う。
分かってる。
早く行こう、父の声は波のように繰り返される。砂浜には、ペットボトルや花火のかすが散らばっている。こんなに優しい日は初めてだ。沖を見る。光は遊び戯れて、飛び跳ねてさえいる。入道雲が、お城のようにそびえている。
父さん、僕は応える、父さーん!
しかしどこを探しても、父の姿は見つからなかった。気の短い人だから、先に行ってしまったのかもしれない。
海水浴