冬の短歌
名も知らぬ土地の施設に父を置き
子どもにかまう私が笑う
あなたからもらった指輪も外したら
明日のご飯に消えてしまうのね
泳ぎ越す尖塔振り向き口づける
少年少女を染める赤い風
鮮やかなくちばし潜る水中も
飛び立つ空もエトピリカのもの
一顧だにされず手足をちぎられて
それでも生きる甘藻 我らも
元日の路地に行き交う黒帽子
母に会ひたる心地もぞする
はい、僕は薄情ものです。
震災のニュースを聞いて飲めるくらいには。
この暗い部屋には俺しかいないから
ビル・エヴァンスよ まだ行かないで
息子より小さな頃にクレヨンで描いたぼくの絵
天才だった
色あせた写真にうつる赤ん坊
ぼくとは違う笑い方する
初閻魔舌を抜くなら抜いてみろ
舌なら何枚だって持ってる
君とまた映画を観てる夢をみて
枕にあたま押し付けている
冬の短歌