夏の短歌
ため息をついて見上げた空暮れるなりたい自分と今の真ん中
世界史Bついた頬杖その向こう0.1秒駆け抜けた恋
チーターの檻の目の前人垣の後ろでこっそり歩く青虫
ばあちゃんと同じ目をしたマレーバク私ももうじき四十になります
朝露に濡れる足元花を取る吹けば飛ぶような命でさえも
息継ぎをするのかせぬのか止まるのか亀の泳ぎを真似てみたくも
月見れば月はうるはし月の上地球を見れば地球うるはし
南極のカンブリア紀の氷いまメロンソーダの中で溶けてる
見頃にはまだ少し早い紫陽花の道を風行く美術館へと
本棚の片隅にある僕の歌載った雑誌も埃かぶって
こんなにも祝福されて人間は生を受けるのか悔しくもある
愛してる耳だけで聞く心まで届けば落ちて涙濡れそう
もう二度と会うこともない人達と語りしことを思い出す花
いくつもの頭を越えてピアニスト僕の胸だけ開いてしまった
今日もまた暑い日暮れて夜が来る給水塔の二羽のカラスにも
手首から下げたビニール時を忘れ死んだ金魚は重くなかった
夏の短歌