夏の短歌

ため息をついて見上げた空暮れるなりたい自分と今の真ん中

世界史Bついた頬杖その向こう0.1秒駆け抜けた恋

チーターの檻の目の前人垣の後ろでこっそり歩く青虫

ばあちゃんと同じ目をしたマレーバク私ももうじき四十になります

朝露に濡れる足元花を取る吹けば飛ぶような命でさえも

息継ぎをするのかせぬのか止まるのか亀の泳ぎを真似てみたくも

月見れば月はうるはし月の上地球を見れば地球うるはし

南極のカンブリア紀の氷いまメロンソーダの中で溶けてる

見頃にはまだ少し早い紫陽花の道を風行く美術館へと

本棚の片隅にある僕の歌載った雑誌も埃かぶって

こんなにも祝福されて人間は生を受けるのか悔しくもある

愛してる耳だけで聞く心まで届けば落ちて涙濡れそう

もう二度と会うこともない人達と語りしことを思い出す花

いくつもの頭を越えてピアニスト僕の胸だけ開いてしまった

今日もまた暑い日暮れて夜が来る給水塔の二羽のカラスにも

手首から下げたビニール時を忘れ死んだ金魚は重くなかった

夏の短歌

夏の短歌

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-10-08

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