ナキなんてひと飲み《完全版》①

ちょっと不思議な人ならざる者達の世界でのお話です。
以前書いた物を改稿し、ほんの少し解りやすくしてみました。
全部で１０章前後になる予定です。
憚りながら、よろしくお願い申し上げます。

はじまり

　　　
　くじら。くじら。
　明日は誰の心を泳ぐ。
　くじら。くじら。
　残夜に誰の夢を喰(は)む。

　眼前を漂(ただよ)い悠然(ゆうぜん)と泳ぐは、瞬息万変(しゅんそくばんぺん)の人の世に在(あ)りても尚(なお)揺るがぬ、絶対の強き理(ことわり)。

　その唄を知る者は、皆(みな)一様(いちよう)に、眼前の彼のことを、『旧鯨(ふるくじら)』との字(あざな)で呼んだ──。

拙作をお読みくださり誠にありがとうございます。

三日月