男子校の島 地獄巡り

「一日で五万は稼げるよ!」
進学塾で出来た友達、亮太郎は得意気に語る。
中学生にとって、五万円は莫大な金額だ。光介には信じられない。そんなバイトがあるとは。
瀬戸内海のある島に、仏教大学の研修所があるという。そこは女性立ち入り禁止で、生徒達は連日厳しい修行に努めているが、やはり若者だから欲求を抑え込むのは難しく、同性愛のような逸脱行為が後を立たない。学校側はそれを防ぐ為に、外部から見た目のいい少年を呼んで女装させ(女性立ち入り禁止であるため)、アイドル的なショーを開いて生徒の欲求不満を和らげているとのこと。ショーに出演する少年には給料が支払われる他、観客の生徒達からおひねりももらえる。島に閉じ込められている学生達はお金の使い道も無いから、かなりチップを弾んでくれるらしい。このバイトは中学生からOKだという。
「俺もお前も顔で絶対合格するし!夏休みになったら行こうぜ!」
光介は、大金が手に入るという話を信じたわけではなかったが、せっかくの中学二年の夏休み、特別な出来事に出会いたいと思って、亮太郎の誘いを受けることにした。
そして七月の終わり。写真付きの履歴書を送ってバイト応募した二人は見事合格しており、神戸港から学校所有のフェリーで島に向けて出発した。そこまでの交通費は支給されるし、食事は豪華だしで、厚待遇である。光介は夏のイベントを楽しんでいた。
しかし船の旅の途中でアクシデントが発生。夜間、火災が発生したとのアナウンスがあり、実際に船上は火に包まれていた。救助に来たボートによって、少年達は全員助けられたが、フェリーは海に沈んだ。
ショッキングな出来事だったが、人は死ななかったようだし、中学生の光介にはこれも楽しい事件に思えた。が、大人達は不穏な様子になっていた。
学校の関係者達が、少年達に着替えを指示した。服は支給されたのだが、女物である。学校側の説明によると、もうすぐ島に到着するが、その時点から仕事は始まっている。だから仕事用の衣装に着替えていなくてはならない。
光介は女装に抵抗感は無く、ひそかに憧れさえあったから、素直に着替えたのだが、その服は胸元が大きく開いているし、ミニスカートだし、スースーして落ち着かない。それどころか下着まで女用のものに替えさせられて、言いようの無い不安を感じた。
誰かと話したかったが、亮太郎が見つからない。全員救出されたはずなのに、どこにもいない。
そのうち見つかるだろうと思っていたが、段々心配になってきて、探し回ったが見つけられない。
女装した少年達は、見た目で選ばれただけあって非常に綺麗な女の子に見えて華やかだ。だが一様に不安気な顔をしている。
そのうちの一人、まるでアニメの美少女キャラが現実に出てきたような子に亮太郎の特徴を伝えて見覚えが無いか聞いてみた。
「僕も友達を探してるんだけど、どうしても見つかんないんだ。他の人も、一緒に来た奴を探してるみたいなんだよね。全員助かったはずなのに変だよね。」
どうやら行方の知れない人が、たくさんいるらしい。確かに、フェリーに乗っていた少年の数はもっと多かったように思われた。辺りは得体の知れない緊張感に包まれた。
夜のうちに島に到着する。小さな港に降り立った途端、少年達は眩しい光を浴びせられた。それと同時に四方八方から不気味などよめきが上がる。
いつの間にか取り囲まれていた。若い男達の大集団が四方八方をふさいでいる。
けだもののような顔つきで、目がギラギラしている者ばかりで、中にはよだれを垂らしている者もいた。
ここまで引率してきた教師が言う。
「我が校の生徒達です。皆さんを歓迎しています。」
歓迎というより、補食しに来たように見えて少年達は怯えた。
教師が告げる。
「では、早速仕事をはじめてもらいます。内容は簡単です。島の反対側の灯台まで歩いてもらいます。時間はどれだけかかっても構いません。ルートは自由、地図を配りますので参考にして下さい。灯台にたどり着ければ仕事から解放されます。」
渡された地図は島の詳細なロードマップだった。ゾーンが細かく分けられ、別々の色で塗られていたが、それについての説明はされなかった。
島の学生達の視線にさらされているのは恐怖で、無性に解放されたかった光介は、さっさと出発することにした。
分かりやすい海岸の道路を行くことにした。ちゃんと街灯があって明るい。しかし人通りは皆無。光介の他に、何人かの少年が灯台を目指して歩いているだけである。
ふと気づくと、先程のアニメコスプレ風の格好の少年がすぐそばにいて、目が合うと話しかけてきた。
「ねえ、気づいてる?僕らを見てる奴がいるよね。」
「え?」
「気づいてないの?僕が視線に敏感なだけかな。結構あちこちに人が隠れてるよ。見てるだけだから気にしなくていいかもしんないけど、気味わりーよね。」
光介には彼の言葉が信じられなかった。
「ほら、そこの塀の隙間からも見てるよ。」
「マジー?」
冗談半分で塀に近づいた光介。街灯が射し込む塀の隙間の暗がりに、何者かの目がこちらをじっと見つめているのを発見してしまった。
気づかないふりをして道の真ん中に戻る。恐ろしくてたまらなかった。
「僕らが歩いてんの見てるだけでも楽しいのかな?変質者だよね。」
アニメ風美少年は、別段怖がってない様子。彼は、名前を星明といった。
しばらく進むと、道路がゲートで閉じられていた。そこには説明書きがあって
『靴と靴下以外の着衣を全て脱がないとここからは進めない。脱いだらセンサーが反応してゲートが開く。』
とあった。
「何だこれ。ヤバすぎだろ。」
思わず叫んだ光介。
「ああなるほど、裸なら見てるだけでも満足出来るよね、ゲイ野郎なら。」
クールに言い捨てた星明。
「納得すんなよ!こんなのもうバイトの範囲じゃねーだろ、犯罪じゃねーの?」
「犯罪者なのかもね、あいつら。普通の感じじゃないし。だったら戻っても犯罪者しかいないわけだね。」
星明は服を脱ぎだした。
「おい!よく脱げるな、見られてんのに!」
「男同士で気にするのがおかしいでしょ。ゲイなんて怖くないし。」
「俺はやだな。別の道を探すよ!」
光介は引き返すことにした。
「あ、待って!」
呼び止めた星明、地図を開いて言った。
「このゲートの先は色が違う。色ごとに進むためのルールが違うってことなのかも。」
見てみると、確かに、ここまでの道は黄色に塗られているが、ゲートを境に先はオレンジに変わっている。
「じゃあね、光介。また会おうね。」
星明が全裸になると、ゲートのロックが解除された。真っ白なお尻はなまめかしくて、とても男には見えなかった。星明が通るとゲートはすぐに閉まる。白い裸を頭から振り払う努力をしつつ、光介は元来た道を引き返した。
しかし港に戻っても仕方ない。地図を見ると、別のルートが幾つも分岐している。少し遠回りになるが、灯台に行ける道は幾つもある。
そのうちで、一番距離の短い道を選択することにした。
それらしい分かれ道に入る。森の中の道だが、ここも街灯が立ち並んでいて明るい。見たところ、他に歩いている少年は居ない。地図ではこのルートも黄色に塗られている。しかし、少し先からピンク色に変わっている。
しばらく歩くとゲートがあったが、扉が開いていて通行出来る。説明書きは無し。ここからピンク色ゾーンのはずなのだが。
ゲートの先も街灯がしっかりあって、特に変化は無いように見える。
地図だとこの一本道をゆくと、再び黄色ゾーンになっていて、何か危険があったとしてもすぐ安全地帯に逃げ込めると思われる。
光介は、用心しながらゲートを通り抜けた。森の中は静かで、何も起こらない。道の両側の藪の中から島の学生達がこちらを見ているのかも知れないが、怖いから考えないようにする。
歩いていると、道が細くなっていった。幅一メートルくらいしか無い。
突然、すぐ横の藪がガサッと音を立て、何者かに腕を捕まれた。大きな手が暗がりから伸びて光介の体をまさぐっている。びっくりするより前に、反対側からも手が伸びて光介の腰の辺りを触る。
考えるまでもなく体が反応し、全速力で駆け出した。次々に森から手が出てきて、女装した光介の体中をもみくちゃにする。
いくつもの手を振り払って必死に走ると、ゲートが見えた。そこで一つの手にスカートががっしり捕まれて逃げられなくなる。脱がされそうになってスカートを掴み返すと、ビリビリと破かれた。それほど薄手の生地でも無いというのに、簡単に引き裂かれる。物凄い力である。光介は心底恐怖を感じた。
しかしスカート半分とともに手は離れた。全力ダッシュでゲートに飛び込む。
ゲートの先には、手は現れなかった。やはり黄色ゾーンは安全らしい。
道幅は広く、静かである。だがスカートが半分消失したために女物のパンツが丸出しになっているせいで落ち着かない。物陰からこのパンツを見ている人達がいるのだろうか。光介は必死に恐怖を圧し殺して歩いた。
少しゆくと、道が三つに別れ、それぞれにゲートがある。地図ではそれぞれ別の色になっている。説明書きは無く、何があるかわからない。とても怖いが、かといってあの手だらけのゾーンには戻れないし、進むしかない。
灯台への最も短距離のルートにすることにして、左のゲートを通った。その先はすぐ、道が細くなっている。
いきなり道端の茂みから男の顔が突きだした。驚いて足を止めた光介の太腿をベロベロ舐めてくる。左右から複数の顔が出てきて腕も脚も気色の悪い舌でねぶられる。
もがいていたらパンツ越しに股間に噛みつかれそうになって、必死に逃げた。女の子のような悲鳴をあげてしまっていた。
気付くと元のゲートの前にいた。黄色ゾーンに引き返していたのだった。手足がヌルヌルして、気持ち悪い。島の男達の唾液は、おかしな臭気を発していた。光介は吐き気をこらえた。
ゲートのそばに水道が設置されているのに気付き、汚された腕と脚をゆすぐ。夏の夜なので水の冷たさが心地よい。それ以上に、きれいに出来て救われた気持ちになった。
変な臭いを洗い落とし終えて、次は右の道に進む。このルートの先は再び黄色になっている。光介は、黄色ゾーンまで走って通り過ぎようと決めた。
ゲートをくぐるや即、走る。道幅は広く、走りやすい。しかし街灯の光をキラキラ反射する何かがひっきりなしに飛び交っている。最初は雨が降りだしたかと思ったが、すぐ違うと気づいた。左右から何かが飛んでいる。手に生暖かい液体がベットリとかかった。走りながら手をよく見た。
白濁した粘性の高い液体にまみれている。一瞬で正体がわかった。精液だ。
光介は泣きわめいていた。息を切らしてもスピードを上げて、ゲートまで走り抜けた。
ゲートを通ると、限界まで筋肉を酷使したせいで地面に倒れてしまう。膝や肩にも異臭を放つ液体がこびりついていて、一刻も早くどうにかしたい。
その願いが天に通じでもしたのか、シャワーの音がする。そちらを見ると、街灯に照らされた真っ白な細い脚。
「光介じゃん。シャワー使うならちょっと待って。なかなかきれいにならなくてさ。」
そこには別ルートに入るゲートがあって、その横に屋外シャワー。それを浴びていたのは星明だった。
シャンプーやタオルなどは無いらしく、シャワーの水を使って手で体中の粘液を落とそうとしている。髪から垂れるトロリとした液は、光介の手に付いたものと同じだった。
そして、その液体がお尻の穴からも流れ出ているのを、光介は見てしまった。
「全くひどい目にあったよ。赤ゾーンには絶対入らない方がいいよ。」
光介は目をそらした。
星明は笑ってクールに言った。
「でも別に大したことじゃないよ、僕にとっては。親に性的虐待されてるから。こんなの慣れてる。」
光介は無言だった。何も答えられないというより、星明の姿に体の中心が変な反応をしてしまっているのを隠すのに必死だったのであった。
シャワーの音が止まる。
「シャワー使っていいよ、もう行くから。光介が可愛く見えて変な気分になりそうだからさ。灯台で会ったらゆっくり話そう。じゃあね。」
靴を履く音、そして遠ざかる足音。顔を上げると、道の先へゆく白い後ろ姿が見えた。
「星明!気をつけろよ!」
とだけ、声をかけた。
「光介もな。」
星明は軽く振り向いて笑い、そのまま歩き去った。
よろよろと立ち上がって、シャワーで手や膝の汚濁した液を流す。上着にこびりついた液は、脱いでゆすいだ。きれいにしてからまた着る。びしょびしょだが夏だからまあなんとかなる。
洗い終わった時には脚力もだいぶ回復していた。危機感のせいか、疲労が取れるのが早い。
星明が行った道を進む。追いつけるだろうか。地図だと、すぐにゲートがあって、その先は紫色に塗られている。これも未知のゾーンだ。何があるかわからない。
程無く、ゲートに着く。ここには説明書きがあった。
『ここは一方通行。通ると門は閉まって二度と開かなくなる。』
と書かれていた。先に何があるかは記されていない。しかし恐怖を煽る文章である。
だが引き返すのは悪夢だ。星明もこの先へ行ったはずであるし、光介は進むことにした。
扉は閉じている。星明が通って閉まったのだろう。レバーを回すとカチャリと、恐らくはロックの外れた音がした。大きな扉はゆっくり開く。
その向こうに一人の少年が立っていて、光介はギクリとした。そしてそれが誰かわかって、ますます驚いた。
「亮太郎!」
そこにいたのは、行方不明になっていた友人だった。女装姿だったがすぐにそれとわかった。
しかし光介は素直に再会を喜ぶ気にはなれなかった。友達とはいえ、この状況での突然の登場は不気味に感じられたし、それに亮太郎の浮かべた笑顔がどこか禍々しかったのである。
「光介、パンツ似合ってて可愛いじゃん。」
亮太郎は目線を下げてニタニタとする。破れたスカートからのぞくパンツへの視線に強い羞恥心を感じる光介。だが女の子のように羞じらうわけにもいかず、気にしないふりをする。
「亮太郎、フェリーの火事の後どこにいたんだよ。」
「お前とは別に救助されたんだよ。なあ、この先に行く気か?やめた方がいいぜ?」
亮太郎の表情がそこはかと無く、卑しく、サディスティックに変わる。それを見て光介は、目の前の相手が味方ではないことを察していた。
「何でだよ?」
「この道はマジでヤバいんだ。」
「お前は何ともなさそうじゃねーかよ。」
「この島の側だかんな。お前みたいに可愛い男の子を騙して連れてくる為に島から出てきたんだよ。ほら、フェリーからいなくなった奴が他にもいただろ?皆同じだよ。元から島にいた奴だ。」
光介は恐ろしくてたまらなくなった。亮太郎が自分の友達になったのは最初から誘拐するためだった。逃げ出したくなるが、意地を張って踏みとどまる。ビビっている姿を見せるわけにいかない。
「ふーん、本当のことを聞いても俺が怖くなんないのか?フェリーが燃えたのは、あれはわざとだ。お前ら全員が死んだことにして永久に島に閉じ込めるためだよ。そんなこと出来る犯罪者の仲間なんだ、俺は。これでも怖くねーか?」
「ヤバい奴だな、お前。頭イッちまってんだろ。」
「あははは!脚ガクガクしてんじゃねーか光介!」
亮太郎は一歩、光介に近づいた。
「なあ、俺の言うこと聞けよ光介。この島はさあ、男達に何でも気持ちいいことさせる為にあるんだ。何でもありなんだよ、隠れて盗撮されんのもあり、痴漢されんのもあり、精子ぶっかけられんのもありだ。当たり前だけどレイプもな。お前、別ルートで来たら二十人以上に強姦されてたかもよ?ケツに色んな男のデケーのをぶっ刺されんだよ。大人の男のは凄いぜ?マジで超デケー!いくら泣いても許してくれないんだ、次々ぶち込まれて腹ん中潰れそうになる。」
亮太郎の話は生々しく、光介は幼児のように泣き出しそうになるのをこらえるのに精一杯だった。
「でもよ、この島はもっとヤベーことがあるんだ。」
亮太郎はさらに近づいてきた。間近に顔を寄せてきて、ささやく。
「ここからのゾーンは、リョナの場所なんだ。」
リョナという言葉は、光介も知っていた。思わずビクッとなって、後じさる。
亮太郎は相手の反応に満足したように勝ち誇った顔で、高らかに語る。
「超凄いぜ、めっちゃハードなリアルリョナだぜ?これ見ろよ!」
亮太郎は数歩戻って、地面に置かれていた大きな箱を蹴飛ばした。それはゲートの向こう側すぐの所にあった。
「近くで見ろよ。ゲートは閉まんないようにしてやるから!」
言いながら亮太郎は箱の蓋を開いた。中には、真っ白な肌をした全裸の美少年。その血まみれの姿があった。
星明だった。光介の位置からでも顔は見えた。角度的に、首から下がどうなっているかよくわからないが、少しだけ見えている異物は、腸ではないだろうか。右腕が途中から無いように見えたのは見間違いだろうか。
すぐに目を反らしたが、辺りに充満する濃厚な血のにおいからは逃れられない。
かすかな声が耳に届く。
「あああ、あああ…………」
まだ生きているのだ。こんなに空気を充たす程の血を流しながら。
光介は衝撃で倒れそうになった。それを、背後から抱きすくめる者がいた。亮太郎だった。
「なあ、お前も仲間になれよ。毎日、男に犯されるだけでいいんだ。慣れると超気持ちいいぜ?俺はお前のこと好きなんだよ。殺されたくねーんだ。なあ、いいだろ?」
光介の尻には、熱く硬いものが当たっていた。光介はもう我慢が利かず、泣きじゃくっていた。
「やだ、やだ………離せよ……俺、灯台行くんだ………!」
「ヒヒヒヒヒ!!」
亮太郎は残酷に笑った。
「灯台行ったらお仕事から永遠に解放されんけどよ、お前意味わかってる?即行殺されるってことだぜ?」
光介は全ての希望を失って、失神しそうになった。抵抗力を失くした彼の顔を掴んで、亮太郎が唇を近づけてゆく。
その時、周囲が目映い光に満たされた。街灯の光より何倍も明るいサーチライトの光で、何も見えなくなった。遠くからヘリコプターの爆音がした。

島は不意に機動隊に襲撃された。これまでの幾多の誘拐、猟奇犯罪が発覚しないわけもなく、警察はとっくに大学関係者逮捕の為の証拠固めを進めていたのだった。
島にいた教師、学生は残らず捕まった。連れてこられていた少年達は全員救出された。残念ながら、何人かは死体になっていたのだが。生きて帰れた子も多くが性的暴行を受け、肉体的にも精神的にも深刻な障害が残ることになった。
光介は幸い、レイプされたりしなかったため、日常に復帰することが出来た。
島の出来事は一晩の恐怖体験としてトラウマになってはいるが、特に生活の支障になったりはしていない。
あちこち遊びに行ったり、普通に平和な夏休みを過ごしている。

「何でお前は捕まってないんだよ。少年院行きだろ、どう考えても。」
「俺は被害者だかんな。警察はそう思ってんから。」
公園で、光介は亮太郎と会っていた。
もう会うことがあるとは思っていなかったが、LINEが今朝来て呼び出されたのだった。
「もうお前なんか友達と思ってねーんだ。気軽に呼ぶなよ。警察にチクんぞ虚言野郎。」
敵意を露にする光介に、亮太郎は全く怯まない。
「お前だって嘘ついてんじゃねーか。何も性的被害受けてないって家族とかに言ってるよな?精子ぶっかけられたこと秘密にしてよ。よかったなー、機動隊員が優しくてよー。スカート破られてたこと隠してくれてるみたいじゃん。泣いて可愛く媚びたのが効果あってよかったな。」
光介は愕然として震えた。
「何でそんなこと知ってんだ………?」
亮太郎はゲラゲラ笑った。
「適当言っただけなんだけど!マジでそんなことしたのかお前おもしれーな!超可愛い!」
笑い終わると、島でそうしたように、距離を詰めてきて言う。
「なあ、つきあってくれよ。俺の部屋に来いよ。俺、今、孤児院的なとこに住んでんだ。すげえ大事にされててよー、友達連れてきたなんて言ったら先生達大喜びだぜ。プライバシー配慮もしてくれっからさー、部屋で余裕でセックス出来るぜ?」
光介は亮太郎を押し退けた。
「ふざけんな。消えろよ。」
亮太郎はしつこく近づいてきてささやいた。
「お前、死にかけの星明見たことも内緒にしてるよなー。自分はなんにも汚れてないってことにしてーの?言いふらしてやろうか?お前がもうやばすぎんの見て取り返しつかない奴だって。」
光介はビクビクして言い返せなかった。亮太郎の言っていることは完全に図星を突いていた。
「あきらめて俺のモノになれよー。俺、男を気持ちよくするやり方散々教わったからよー、超天国味あわせてやれるぜー?ともかくガンガン犯しまくってどんなに苦しがってもやめないでますます痛めつけんだ。逆らうならボコす。そうされっと、途中で急に気持ちよくなんだ。そこからはヤバい、何されても気持ちよすぎてヤベエ。」
「やめろよ………来んなよ………」
全身が震えすぎて立っていられなくなりそうになる。それを見て亮太郎は一歩退がって笑った。
「ビビりすぎだろ!ギャハハ!」
そしてさらに距離を離して言った。
「今日は帰ってやんよ。呼んだらまた来いよ。」
そのまま立ち去るようである。光介は心から救われた気分だった。
近くで鳩の群れが飛び立つ。亮太郎はふとつぶやいた。
「俺、最近、鳩を殺すのハマってるんだ。」
振り向いた顔は邪悪だった。
「虫取網で捕まえて、ナイフで刺しまくるんだ。血を見ながらオナると超捗るんだよ。ヒヒヒヒヒッ!!」
青空に暗いボーイソプラノの歓声が響く。
「ほんとは人間刺してー!いつかよー、あの島みたいなところ作って年下の子をいたぶりまくってやんぜ!光介、一緒にやろうぜ?秘密バラされたくねーだろ?じゃ、またな。」

男子校の島 地獄巡り

男子校の島 地獄巡り

  • 小説
  • 短編
  • サスペンス
  • 成人向け
  • 強い暴力的表現
  • 強い性的表現
更新日
登録日
2020-08-24

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