揺れる陽炎のはるか上空で巨大な積乱雲が悠々と空を制していた。 人と人とがすれ違いに出会い別れてゆくこの世界で、夏に生きる彼らの願いとは何だったのだろうか。 進みゆく時間のなかで得られた価値を誰が決めていくのだろうか。 今一度蝉時雨の時の中で始まる若者たちの物語が、その答えを導き出してくれるだろう。 人の願いと記憶に問う、 つかの間の青春群像劇。
遣らずの雨と共に、今年もまたこの町に梅雨が降りたった六月。隔絶された小さな町で、若者たちは己の過去と未来の隙間で、立ち止まっていた。 個々の人間性を問う、 人と時の、青春群像劇。