favorite

鏡の前で髪を梳かしていると、乙女の瞳に黒い蜘蛛が映った。お気に入りの口紅に近付いていく。いい度胸をしているわ。捻り潰そうと白く細い指を伸ばしたが、察知したのか蜘蛛は緊張した。手を引くと、再び動き出す。絡みつくような足取りは上品で、挑発的だった。蜘蛛は悠々と赤い口紅を昇っていった。

favorite

favorite

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-08

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted