波と血潮

掌で耳を押さえると低く唸るような音がする。それは血流の音らしい。今日も僕の血液はゆっくり、確実に全身を巡っていた。昔、海で拾った貝殻を耳に当てると、波の音が聴こえると教えてもらったことがある。今思えば、あれは貝の血潮であるか、単に殻が僕の波の音を反響していただけなのかもしれない。

波と血潮

波と血潮

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-08

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