一本

暗い波の下。一層暗い生き物の影が躍るように蛇行している。もの凄い速さだ。船の淵を両手で掴んで僕はその行方を追った。徐々に飛沫が荒くなる。刹那、見上げた先の姿は巨躯の鰹であった。その口先には針がかかっていて、僕のお師匠が齢七十歳の腕で勢い良くリールを回して、竿を勢い良く振り上げた。

一本

一本

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-08

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