なんだかやれそう

ベタつく汗で夏が来たことを知る午後
布団のシーツを変えようかとか思いながら
冷蔵庫のコーヒーを飲む
煙草を買いに外へ出る

早くから開いた呑み屋の煙が懐かしくて
無性に涙を流したくなったりする
海辺の旅館のにおいとか
銭湯のにおいとかを思い出したりする

日が暮れるとちゃんと涼しげな風が吹いて
昼間はすまなかったとでも言うように
夏は割と意地悪だけど
どの町にも等しく味を添えてくれる

セブンスターの安っぽい煙を吐きながら
真っ直ぐな恋がしたいと思った
ぼくはそっとiPhoneを取り出して
Tinderのアプリを消した

なんだかやれそう

なんだかやれそう

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-04

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