うしなわれてゆくもの

 きみは、うつろで、どこまでも、なにかに追われている感覚が、あって、夜の、ハイウェイで光る、のは、あれは、昼のあいだに生まれた、誰かの憎悪の、集合体が、なんとなく、生命として、形を得たもの。
 こわいな、と思うのは、つくりもののやさしさが、きみを、ころすことで、しらない女の子の、スカートのすそから、はらはらとこぼれる白い花びらの、埋葬を、ぼくたちは無意識にしている。
 静寂を切り裂く、飛行機の音が、ふるわせる空間を、もう、みんな、眠っているはずの、街のビルのかげでおびえる、ちいさなねこにも、愛を。
 夏の手前、日に日に透けてゆく、きみが、どうか、かたすみでもいいから、世界、という漠然と大きなカテゴリーから、はじかれないようにと、祈ってる。
 午前零時。

うしなわれてゆくもの

うしなわれてゆくもの

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-06-03

CC BY-NC-ND
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