カレーのしみ、あるいは
こんな格好で カレーを食べたのが間違いだった
お気に入りの白いパーカー
あの人は好きじゃなかったみたい
人混みが嫌いだったから花火大会には行かなかった
待つ時間が嫌いだったから遊園地には行かなかった
本当は耳をつけてはしゃぎたかった
浴衣で花火を見上げながらこっそり手を繋ぎたかった
あの人は好きじゃなかったみたい
しみついた汚れはなかなか取れず
あの人との思い出もなかなか取れず
木の葉の隙間からもれる光
しおのにおいかもめのなき声
いつもの散歩道
隣で光に手を透かす
あの人が好きだったもの
しみついた汚れは全然とれず
その内なんの汚れか忘れるのでしょう
ただしみをつけたという事だけをふっと思い出すのでしょう
眩しかった くすぐったかった
しょっぱかった あたたかかった
あの人が 心のそこから好きだったみたい
カレーのしみ、あるいは