猫の気持ちがわかりますか...浮雲

山田小町

まえがき
猫の気持ちが分かりますか。人さまにに聞いても分かるわけがない。串の先が口に突っかかる...串団子のようなご主人さまと、いろいろな事情を抱えた野良猫との日々の暮らしをシミリー、比喩を小道具にして語りかけています。床を3回手でたたくときは、こっちにこい。1回のときはあっちに行け、2回のときは勝ってにしろ。暇でやることがない...暇そうな雲に話かけてみました。外れジャンボ宝くじとご主人さまに登場してもらいます。

はい、小町ちゃんですよ。
古風な、つまり古いお家から引っ越しして一年になります。外壁のコンクリートの自然破壊はオブジェ的で、梅時はすき間に苔がはびこり...小鳥が落とした木の種が黄金色の花になる年もありました。

新しい...わが家は隅田川沿いにございます。
浮島が荒川と隅田川に挟まれたようないびちな形のなか、釣糸を投げたら隅田川にぽいと届きそうな所に位置します。一回りするだけで疲れを溜てしまう敷地内の住宅...窓のむ向こうには白いかもめの群れが、金粉の波のひかりとたわむれています。
川を掃除する船、洗濯ものを絞るように音を圧縮したモーターボート...水上オートバイなどがせわしく行き来する。

川を見るのがあきるとベランダにひっくり返って空を見る。
無限の青空にぽっかり浮いた雲が語りかけてきます。

「小町ちゃん、元気....。考えることもないから悩みもなさそうですね。」
雲が気になる云いかたするので...ひとこと。
「おたくだって空に浮いているだけ...なまけものにみえますよ。」
「遊んでいるようでも雲には...やがて雨となる日がきます。めぐみの雨ならうれしが、嵐となって洪水や地滑りをひきおこす原因にもなる...雲にも悩みがあるんです。」「.....。」
「考える知恵をもたない、小町ちゃんには空を飛ぶよりむずかしい問題...ですね。」

雲と押して問答しても負けそう。それにカミナリ様を呼ばれたらこまる。
かさなる病に不自由な歩きかたをする叔母さんが、水分補給に...べランンアのテラスにお水を置いてくれた。
その水の入ったお茶碗に...物申す雲が浮いている。慌てて水を飲んだら、雲が消えてしまいました。

猫であるわたしの顔の左右にはおひげが数本ずつございます。
このおひげは電波のような波数をもち、おひげをピクピク動かすと...、人さまのこころのうちが手にとるように読めるんです。
読めるうえにてんてんてんまり...てまりのように、あのうるさい雲が浮いている空にあげたり地上に落としたりする。
さらに...左右にお手玉、自由自在に...けん玉、このように人をあやつることが可能なんです。

ほら吹き猫...大風呂敷ひろげておしっこ、なんて云われるまえに外れジャンボ宝くじとご主人さまに登場してもらいます。

外れジャンボ宝くじに糸を通し、部屋のなかを引きずり回していると...眠そうにしていたご主人さまの目がきらり光った。
手招き猫...もしかしたら、あれは当たりくじ。
おい...猫、小町、ご主人さまはかんしゃく玉が爆発したような大声で追いかけてくる。
猫であるわたしが...ちょいと回転するだけで、勢いあまったご主人さまは...ドアで顔を打つ。凧のように外れジャンボ宝くじをとばすと、飛び上がって
絵の額で頭を打撲。
キッチンの冷蔵庫のすき間ににげると、器用にたこの手足のようにご主人さまのごつい手がのびてくる。すき間に落ちていた買い物レシートを渡すと
外れジャンボ宝くじと勘違い、大事ににぎるから...すき間から手が出ない...充血、すり傷。さらに逃げるわたしを方足で止めようとして...カラ足、捻挫挫傷。

顔・頭・手・足...に怪我を負わせて、ご主人さまには申し訳ございませんが、
人さまを自在に動かせる猫であることを分かって頂けました。

かみ様になったような気分でテラスでくつろいでいると空から大きな笑い声が聞こえてきた。
あの雲だ。
困ったときの猫だまし...こそばゆいとこを突く、耳かき。
縁のないお皿、平べったい猫の浅知恵で...しゃしゃり出ると寝てるカミナリ様が目をさます。
しっぽをくるくる回して世間の片隅にどいて下さい。

口のわるい雲...もう直ぐ成田空港からアメリカ行きの飛行機が飛んでくる。
雲をを二つに引き裂いてくれるはずだ。

果たして飛行機は飛んでこなかった。

雲は次第に黒く大きくなって...地上の嵐。
わが家は土手沿い、風の通りみち。せっかく咲いた草木の花を暴風雨が鬼のような手でむしり取ってゆく。
雲の怒りにふれた猫の気持ち...ひっくり返った茶碗のなか。
難をのがれるための忍びの術...木葉隠れともよばれる。

ああ...雲とあそぶのも疲れた。
タイミングよくご主人さまが床を2回たたいた。

こっちに来いと云う合図だ。
ご主人さまの寝転ぶまわりを一回りして...3歩まえに出て後ろに1歩退く、丁度...ご主人さまの足もとにごろり横たわる。
テレビの音でリズムをとりながらご主人さまが足でマッサージしてくれる。
雑だが、それでも心地がよい。
お前たちは寝て食って、うろうろして一日すごす。掃除がたいへんだから、あまりトイレにゆくなよ...無理難題は聞きながす。

日々の暮らし小さな憂うつも、つないでみれば鎖になる。ぐるぐる首にまわって呼吸ができなくなる。

上下も伸縮もない...うなるご主人さまの鼻歌、耳障りだが狂った音程にやすらぎをおぼえる。うつのくさりが解けてゆく。
ご主人さまの足もとは、猫であるわたしの呼吸をする場所でもある。

すっかり雲のことを忘れていたのに、テレビの天気予報で今日は雲一つない晴れ空です...とウソをついている。
いそいで窓際に...空をみると雲が消えている。
そうだ、猫であるわたしが吞み込んでしまったから雲はわたしの腹のなか、先程おしっこになってしまったのだ。

【はい、小町ちゃんでした。又、遊んでね。】

猫の気持ちがわかりますか...浮雲

猫の気持ちがわかりますか...浮雲

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-05-31

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二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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