三題噺「波長」「電波」「受信」
――月の裏側
「メッセージ受信しました」
無機質な声が船内に響く。宇宙船を自動制御している機械の声だ。
「そうか、読み上げてくれ」
「かしこまりました」
そう言うと無機質な声はメッセージの中身を読み上げる。
「――親愛なる宇宙の同胞よ。あなた方の来訪を歓迎する。以下の座標にて貴殿らをお待ちしています――」
メッセージは以上です、と機械は再び待機モードに切り替わる。
「ふむ、それでは新たな同胞達の惑星へ向かうとしよう」
宇宙船は静かに地球へと旅立った。
――日本の研究施設
「メッセージが返ってきました!」
白衣姿の若者が声を張り上げる。途端に研究所内が歓喜の声で包まれる。
「宇宙へ電波メッセージを飛ばし続けて20年。ようやく波長の合う宇宙船に出会うことができて私は幸せだよ」
研究所を立ち上げた所長が今までの苦労を思い出すように呟いた。
「なに言ってるんですか、所長! 彼らとの対話にはもちろん所長も参加してもらいますからね!」
若い女性の研究員が所長の肩を叩きながら笑った。
「東京ドーム10個分はある着陸スペースは確保してあります。あとは歓迎方法とスピーチの内容を考えましょう」
――数日後
――日本の研究施設
「……なんてことだ。今すぐに彼らに帰ってもらうんだ!」
「無理です! 電波が乱れてメッセージが送れません!」
白衣姿の研究員達は呆然と空を眺めるしかなかった。
――宇宙船
「それにしても見れば見るほど綺麗な惑星だ。着陸予定時刻はあとどれくらいだね?」
「あと5分ほどです」
無機質な声が返答する。
それを聞いて宇宙船の船長は母船の船長と言った。
「我々の母船の着陸地点にあんな大きな浮島を用意してくれるなんて、地球人はさぞかし大きいんだろうな」
三題噺「波長」「電波」「受信」