わけ合えないもの

わけ合えないもの

 この前ママが話してたんだ。一つのものを皆で奪い合ってはいけないよ。って。もし皆が一つのものを欲しがったら、分け合いなさい。って。でも僕は言ったんだ。これはおもちゃじゃないか。って。リョウタくんと分け合ったらおもちゃが壊れちゃうよ。って。するとママは言ったんだ。そういう時は、使う時間を決めて、代わりばんこに使いなさい。って。だから僕はリョウタくんと時計の長い針が一週する度に代わりばんこしようね。って言ったんだ。リョウタくんは、うん、分かった。って言ったんだよ?でも時計の長い針が一周しても、リョウタくんはおもちゃを僕にくれなかったんだ。僕がおもちゃを取ろうとしても、リョウタくんは放さなかったんだ。約束したでしょ。って言っても、リョウタくんは、大人なんだから我慢しろよ、おじさん大人だろ。って言うんだ。僕は子供だよ、おじさんじゃないよ。って言いながら引っ張り合っていたら、おもちゃが壊れちゃったんだ。バラバラになって、遊べなくなっちゃったんだ。

 お医者さんが言ってたんだ。僕にはいくつかのじんかくがある。って。僕の身体には、僕と何人かのせいしんがあるんだ。って。本当のじんかくは体に合ったもっと大人のもので、僕は後から生まれたんだ。て。
 僕はその人たちと体も分け合ってたんだ。ママの言う通り、時間を分けて。でも僕は我慢できなくなって、その人たちから体を取ろうとしたんだ。だって他の子はそんなことないのに、僕だけ自分の体をずっと使えないなんて酷いじゃないか。でもその人たちは、嫌だ。て言ったんだ。リョウタくんと同じように僕に体をくれなかったんだ。だから僕はその人たちと体を取り合ったんだ。
 それで最後には、体はおもちゃと同じようになっちゃったんだ。

わけ合えないもの

わけ合えないもの

  • 小説
  • 掌編
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-05-31

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