糖衣錠
短歌集「糖衣錠」
糖衣錠
長雨の視線交わり胸押さえ「今、見ていたでしょ」君が隣に
花畑手と手を取ってダンスする唇寄せて頬に花咲く
五月雨の乱れる夜に満たされる抱き寄せられて求めらむなら
君が今、知らない女の肩抱いて背をかがめてる首筋の嘘
ただ愛が欲しいと開く身体だけ彼は求めているのでしょうか
霧の朝小鳥たちが合い鳴き(愛無き)と私の姿嗤うように
気付くとは傷付くことだ恋なんて欲を丸めた糖衣錠だ
かさぶたにならぬ傷に爪を立て痒みと痛みに雫が落ちる
「さよなら」のたった一言それだけが言えずに今日も性を差し出す
純白のドレスを夢見て恋すれどあなたの隣じゃなくてよかった
糖衣錠