騒音

騒音

 うるさい。
 この感情が僕の脳内で鳴り響いてたまらなかった。
 人の足音、冷蔵庫の待機音、本をめくる音、小鳥の囀り、キーボードを叩く音。
 試しに耳栓をしてみたけれど、血の巡る音が喧しくてたまらなくてすぐにやめた。
「何も聞こえなくなりたい」
 そう口にするのも煩くて僕は黙った。
 話しかけられても全て無視して、聞こえなかったことにした。
 
「ねぇ、私の話聞いてる?」
 聞いていない。
「あなたのためになりたいの」
 聞こえない。
「あなたが苦しいと私も苦しいの」
 うるさい。

 愛情って不思議よね。
 やっぱり一番大切なのは自分なの。
 苦しみを半分こなんていうけれど、その半分の苦しみから逃れたくて相手を責めるんだ。

 ああ、うるさい。
 誰も心臓を動かさないでくれないか?

騒音

騒音

ああ、うるさい。 誰も心臓を動かさないでくれないか?

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-05-31

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