騒音
騒音
 うるさい。
 この感情が僕の脳内で鳴り響いてたまらなかった。
 人の足音、冷蔵庫の待機音、本をめくる音、小鳥の囀り、キーボードを叩く音。
 試しに耳栓をしてみたけれど、血の巡る音が喧しくてたまらなくてすぐにやめた。
「何も聞こえなくなりたい」
 そう口にするのも煩くて僕は黙った。
 話しかけられても全て無視して、聞こえなかったことにした。
 
「ねぇ、私の話聞いてる?」
 聞いていない。
「あなたのためになりたいの」
 聞こえない。
「あなたが苦しいと私も苦しいの」
 うるさい。
 愛情って不思議よね。
 やっぱり一番大切なのは自分なの。
 苦しみを半分こなんていうけれど、その半分の苦しみから逃れたくて相手を責めるんだ。
 ああ、うるさい。
 誰も心臓を動かさないでくれないか?
騒音