「ケイ×ドロ=ギャップ」第1話

警察と死刑囚の話

第1話



AM7:00


ここは東京拘置所。

そして俺の名前は京葉宗助(けいばそうすけ)。
46歳子持ち。

俺はここの部署の担当だ。自慢ではないが、つい最近警視総監からお声がかかった。

俺の日頃の活躍が項をなして、はれて俺も警視参事官に出世する。

今日を無事乗り越えられていれば……。



水野
「警部。お子さんからお電話です。」


受話器を受けとる。


京葉
「またか。」
「はい。もしもし。」

京葉の息子
「パパー?今日はいつ帰ってくるの?」

京葉
「高。ごめんね、パパは今日も夜遅くになっちゃうんだ。」


「えー。」


息子の残念そうな声に、すまないと心の中で答える。すると今度は妻の声がした。


京葉の妻
「あなた。仕事中にごめんなさい。高ちゃんがどうしても電話したいって。今日も遅くなりそう?」

京葉
「ああ。すまないな。この前話した通り、今日でこの部署からでて、警視庁にいくんだ。だから、今まで以上にお前らに時間を作ってやれない。本当にすまない。」

京葉の妻
「そう…。仕事だからしょうがないわ。それに、幼稚園で高ちゃんがお父さんはすごい。お父さんは強いんだって、みんなに自慢してたわよ。体には気をつけて、頑張ってね。」

京葉
「ありがとう。じゃ、切るぞ。」


高は幼稚園の年長組。
もうすぐ小学校に入学する。
そんなときに出世でまた忙しくなる。
嬉しくもどこか引け目を感じる。


水野
「警部。今日でここでは最後の仕事になりますよ。今までありがとうございます。」

京葉
「まだ早いぞ。今日も仕事はたっぷりある。水野。お前も頑張るんだぞ。」


水野というのは俺の昔からの後輩。
家が金に困ってるらしく、よく俺が飯をおごったりしていた。

それも今日で終わり。
どこか、悲しい。



AM8:00


京葉
「今日は俺が朝食配ってくるから。挨拶もかねて行ってくる。」

ここ東京拘置所には、今、23人の死刑囚が収容されている。
毎日毎日巡回のさいに顔をあわせるから、親しみがわくやつだっている。
しかしそいつたちも、月日がたつと、いなくなる。

ここのやつらの死刑執行は全部みてる。
みるたびに思う。
お前らは何で人を殺めた。何で道を間違えた。
ほとんどの死刑囚が後悔している。

生きたい。死にたくない。許してくれと。


一人をのぞいて。




続く

「ケイ×ドロ=ギャップ」第1話

「ケイ×ドロ=ギャップ」第1話

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-07

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