恋した瞬間、世界が終わる -第3部 記憶の底を視るもの編-

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恋した瞬間、世界が終わる -第3部 記憶の底を視るもの編-
  1. 第14話「SNSに遺されたある文章」
  2. 第15話「SNS -あなたの場所からも、視えるもの-」
  3. 第16話「SNS -宙ぶらりんになる-」
  4. 第17話「SNS -人が交錯する場-」
  5. 第18話「SNS -土砂降りを視る-」
  6. 第19話「SNS -遠景に視るもの-」
  7. 第20話「SNS -1分、過ぎてしまった-」

第3部 記憶の底を視るもの

第14話「SNSに遺されたある文章」

第14話「SNSに遺されたある文章」

何かが再発したように感じた
精神的なぶり返しの
辛かったあの時期の感覚
これまでの自分を後悔のものに変える感覚

自分の行為を肯定する手段を見失った——



私は独りになろうと遠ざけてしまう
人を遠ざけてしまう
可能性を遠ざけてしまう
遠ざかる足取りに迷いつつ
生きていた

そこで私の息が止まる

たぶん、耐性が
物事に対する呼吸が
身に付いていなかったから

そこで私の息が止まる

人々の馴れように
反射的な側面に
私はおののく

こうやって死のうとする 文章を書くのは止めた方がいい

自分の息を止める作業に入るのは止めた方がいい


でも、生きるの止めた方が賢明だ

私は幸せだ
なぜなら、こうやってSNSに残して
生きた心地を感じているから
生きた心地を感じているから
それが幸せなんだろう?

充実したひとときが外にはあるのだろうか?

「それでも、独り、部屋に居る」


生気を失ってゆく日々に居て、
心を丸ごと預けてしまいたいと思うほど、焦がれた

そんな出逢いがあった

 
屈託ない笑顔の人
やさしさに触れるといつも、私はいじわるをしてしまう
「照れ」じゃなくて、嫌悪感があるんだ思う
「優しさ」についての嫌悪感がある
私は考え過ぎてしまう
頭がパンクして、物事をいい加減にしてしまった
逃げたくなった

「巻き戻しますか、時間を?」
「変えますか、現在を?」

「その痛みを変えられるのか?」

 自分の到らなさにただ悔いるのさ


言葉が欲しかった
ただ、肩に、肌に
背中をさすり、掛けてくれる言葉を
その出逢いから欲しかった

私を覆う雲の群れ
地上のコンクリートに雨のしずくを撒いた
雨音が私の耳に、肌に、
記憶から焼き直す
 
大きな心の動きを感じ取ることが出来れば
自分も大きく動き出せると思った

そうすれば、
他人を遠ざけようとすることもなく、死のうとすることもない


「笑ってほしいのかい?」

「あげないよ。きみには
 やさしさはあげない」

「歪んでいるのは…私だ」

 
 どんな感情にも肩入れできる気になると、
 自分の怠惰な行為についても甘くなって考えてしまう


活き活きと生きてゆくためには、『剪定』することが大切だ
「犠牲」と為る部分に拠って、自身の活き方を洗練してゆくのだ
あらゆる「茎」を見分けなければ、
自分に必要な栄養を無駄に奪われてしまうわけである
あらゆる空気の入れ替えをする働きが、随所随所で必要になってくる

だから、人を遠ざけて
出逢いを不意にしてしまった

そのとき、すでに足音は壊れていた
面と向かって…目は伏せながらも、笑い顔で話し合えた時間
想い出して、こうして忘れてゆくとしても
 

いつもの雨

私を文字通りの人間だなんて、思わないでほしい
言い表せない躊躇いが、言葉に含まれるんだ

いつもの雨

私を文字通りの奴…だなんて、思わないでほしい。
今は言えない、喉の詰まりが、
一瞬に投げ出された引っ掛かりが、言葉に出ていないんだ

いつもの雨

私を、文字通りの奴、だなんて、思わないでほしい
止めてしまった、過ぎてしまった言葉が在る

もう一度、私の前を通り過ぎたら思い出してくれないか?

いつもの雨

文字通りに居なくなってしまうのは、悲しいよ



いつも雨降りだった

私はただ、君が生きる活力になりたい

君は私を通じて、人間の弱さを観てほしい

私を通じて、人間の痛みを…

みんなも、そう

 みんなも、そう

  みんなもそうやって、
 
  自分の気持ちを伝えるだけが、精一杯なんだ。


なんで、こんな人間になっちまったんだろうか?



いつもの雨のあと
私の横を通り過ぎてゆく自動車が水を撥ねかけてゆく
ズボンの裾に掛かり、刻まれる
動き出したのは、時間か…?
それとも、心か

目線の上
  嘘みたいに晴れた空が
 
     一面に広がっている



「いつか枯れてしまうのかな?」と、あなたは手に取る。
 あなたが摘み取った最盛期の花。

 ここら一帯に、掴みきれない花が、精一杯に、咲き誇っている。



 

 
 

第15話「SNS -あなたの場所からも、視えるもの-」

第15話「SNS -あなたの場所からも、視えるもの-」

考え事をするために、車を運転する
ーー3日間

この世界と「ログアウト」するのか、どうかを決める

出会いを求めたのだろうか?
わからない

わからない理由を定めるために、車に乗り込む

もう旧い車だ
「ダイハツのミラジーノ」
クラシック風の軽自動車

「ミラ」の意味は、イタリア語だと「羨望(せんぼう)」という意味

「ジーノ」は、同じくイタリア語で「容姿端麗」

「ミラ(mira)」をラテン語にすると「素晴らしいです」「びっくり」

12星座の秋の星「ミラ」は、周期的に明るさが変わる変光星



     明るいときは、あなたの場所からも視える

     暗いときには、あなたの場所からは視えない


                     「赤い星」


「mira」は英語の「miracle(奇跡)」でもある

期待しているわけではない
もう旧い車だ
ちょうど切りの良いところか
これが済んだら、手放すだろう

どこまで行こうか?
行ったことがないところまでなのか?
私が「ログアウト」して乗り降りる、人生の始まりと成る場所へ
私が変わる、私を変える瞬間まで


ーーきっかけまで


 『車』


「便利」なものである


どう生きるかではなく、どう迷うかをするために



     明るいときは、あなたの場所からも「視える」もの

     暗いときには、あなたの場所からは「視えない」もの


                         『赤い星』

第16話「SNS -宙ぶらりんになる-」

第16話「SNS -宙ぶらりんになる-」

マクドナルドで昼食を摂ることにした
郊外にあるマクドナルドの駐車場は広かった
頭上をしっかりと曇り空が覆った

雨が降りそうだった

店内の客数は少ない
今日は平日だった
メニューに迷い曇った表情の私に、店員はマニュアル通りの笑顔を射す

空いていたから、私は4人掛けのテーブルに座る
通路を挟む向こう側には、カップルの姿がある
一瞥し、たどたどしい雰囲気が会話に見て取れる
彼らの頭上にも晴れ間が見つからないようだ

私はポテトを一口
スマホでSNSの更新を確認する
世の中のことは、宙ぶらりんになっていた

3日間の猶予を自分に作った
私に与えられた自分を考えるための時間
私は、次の職場も決めないままだった

会社は人手不足だった
辞めていく人間に優しい言葉を掛ける余裕もなかった
使い捨てるように辞める前の連続勤務が続いた
同僚は「仕方ないよね。」という、職場環境への諦めがあったから
「気持ちは察する。」という態度ではあったようだ
私は人手不足の中で退職することに申し訳ない気持ちであった
ただ、個人の幸せは別だと思う
人の人生を決めるのは、環境だというのが悲しかったし、抗いたかった
私が人生の意義を、こんなところで終わらせたくなかった

えびフィレオを食べ終えた

特にすることもないので
私の意識は向こう側のカップルに気が向いた

見ていると
会話の中に余白があり
その静まりの中で、コーヒーをすする
音がある

噛み合わない二人が居て
噛み合わないままの会話を大切にする
接点を持つ二人
接点を大切にする
噛み合う瞬間の訪れを大切にする

コーヒーを飲み干すまでの間に
決断をする
男の手が止まる
コーヒーをテーブルに置く
音がある

飲み口に残った雫が薄く広がり
ある躊躇いを
待つための間を作る
手に取るたびに、ためらい
間を置く
飲み干すまでに、巡る
飲み干すときまで

私は、この曇り空を見ていたことに気づく
もう直ぐ来るであろう
にわか雨を
待つだけ待って
来るであろう人のことを

「季節感のない服だね」と、女が言った
そう言われてから、男は自分の服装に目を向けた
私も、私の服装のことを考えた

自分自身が世の中と上手く噛み合っていないように思う
何から考えるべきか判らなくない
マクドナルドで宙ぶらりんになった
そこからどうやって着地をしたら良いのか?


食べた後、車内で休憩することにした
空から、にわか雨が始めった
私は自分の生い立ちに気を向けた

今夜はどの場所で寝るのだろうか?

第17話「SNS -人が交錯する場-」

第17話「SNS -人が交錯する場-」

「相変わらず、この通りは人が行き交っている」

マクドナルドの駐車場では考え事が右往左往し、落ち着かず
夕方になる前に高速道路を走った
辿り着いたのは、大学生の頃に住んでいた街

大学から徒歩2、3分の大通り
駅が近くにあり、今も大学生の姿がぶつかるように行き交っている
通りにあったヴィレッジバンガードは、ファミリーレストランに代わっていた
消えずに残るものは人の行き交う姿だけなのだろうかーー

大学の頃、一人暮らしをしていた
本当にまったく良い記憶がない
私は大学を中退している

初日から肌に合わない感覚があった
そこには馴染めない空気があり
ただ合わない人種の場所で
ただただ、場違いな環境だった

私は引きこもった
自分を守るための空間を求めた
その頃に、SNSを利用しインターネットの住人たちと交流を始めた
主にチャットを行なった
私はマイナーな小説を読むのが好きだった
好みの作家や作品を通じて、コミュニティに参加をした
パソコンの画面はずっと付けっぱなし
私はずっとそこで黄昏ていた
私はそこで永遠を感じた

パソコンの前から離れ、外に出るとき
下を向いて歩いた
私が視たいものは外にはなかった
背けたいことだった

メジャーな通りには、メジャーな大きな生き方や趣味がぶつかるように行き交っている
マイナーな通りには、マイナーな小さな生き方や趣味で、世界から溢れた人の居場所がある

私の現実にはもう居場所がなく、耐えられないことを痛感した

インターネットの中では何かが起こる
何かを当てにしていた

SNSを通じて、私に訪れる何かを期待していた

なんでそう思えたのだろうか?


大学から徒歩1分
人通りの少ない場所
写真を撮ってみた
昔、大学の頃に暮らしたアパート
中に入ることはもう出来ないようだ

空の色が変わり始めた
日没の薄明の中
ファインダーに人を惑わす光の粒子が交錯し、飛び込んできた

私の居場所だったアパートの外から撮った画像は
光で錯乱しながら、永遠の黄昏を映した


久しぶりに本を読もうと思った
今晩の過ごし方は、読書にしようと思う
どこかの本屋で買って、またどこかのマクドナルドにでも行こうか
愛車の古い軽自動車と、車の鍵がある時代
10年よく頑張った
この旅で、役目を終えるーー

今日と昨日と、明日の3日間

そこで役目を終える


車の車窓から
西の空に、黒い雲が群れる
私の心は、どこへ行こうとするのか?

昨日言われたことを忘れ
今日やることに縛られ
明日の気分が億劫になる

自分の歩んだ道すがら
自分がやるべきこと
自分が到達すべき使命
見通せない全てが、予定を引き延ばしてゆく

昔、「3日間あれば、人は変われる。」
そう言ったことがある
誰に対してだったかは覚えてはいない
でも、誰かに対して、そう感じていた

この3日間で自分の感情を纏め上げる

第18話「SNS -土砂降りを視る-」

第18話「SNS -土砂降りを視る-」

大学を辞めてから
20代の前半、私はフリーターだった

色んな仕事に就いた
と言っても、特殊な仕事などではなく、
簡単な、どこにでもある仕事

本屋、コンビニ、ライン作業の工場、スポーツ用品店、郵便局など
簡単な「マニュアル」に沿った内容がほとんど
それらが本当に「マニュアル」が必要だったのかはわからない

私の心に沿った方法で「マニュアル」が組まれていたなら
私は、私の人生に疑問を持たずに、そのまま生きていたのだろうか?


「心を失うこと」とは、どういう事なのだろうかと考えた

「疑問を持つことを止めること」

「相手の気持ちを考えることを止めること」

誰かを恨む気持ちがあった


私の心の中、何度も蘇る引っかかりがある
もう、記憶も曖昧になり、正確なことなど覚えてはいない

私の心を回復させたあのひとは
今はどこにいるのだろうか?



何故なのか?
一昨日の予報では、今日は「晴れ」だったはず

この「薄い灰色」フード付きのパーカー
この「スエード素材の灰色」スポーツシューズ
この「色落ちした灰色がかった」ブルージーンズ

空はもう暗く、
夜になり、
私は私自身で、自らの表情を曇らせている



元気かい?

なんだか私は疲れたよ
なんの意味もないことに時間をかけることに
もう何処かに行ってしまったものに
愛情をかけることはできないよ


マクドナルドの夕食
駐車場
雨が始まり
足元を濡らしながら、店内へと向かう

雨は染み、灰色を深めてゆく
人生に転がったまま
色味を失い
何処か行く宛てもない落ち葉が吹かれ
何度も蘇り引っかかり続ける

私の足元をかすめた

落ち葉
いつのものか
いつからのものか
1年を越えた風にも拾われず
地上の網に引っかかったままで
落ち葉
いつのものか
いつからのものか
去年のわたしを遺したまま
行方不明にならずに
落ち葉
今年は
今年こそは


車内で本を広げた


バランスを欠いている

どの部分か
人生のどの部分か
欠けたもの 埋め合わせるもの
物事の厚みと広がり
物事の行方
得ること
失うこと
護ること
喪うこと
バランスに気を使う
バランスに気が向く
うまくいっているかい?

第19話「SNS -遠景に視るもの-」

第19話「SNS -遠景に視るもの-」

いつも通る道の景色
天候によっての見え方
雲が立ち込めて、覆い、押し潰れされそうな感覚
気分
空が晴れ、大きな雲の群れが連なって向こう側へと道を作る
未来が広がってゆく感覚
気分

連休を旅行するのではなく、身近で
いつもの景色の中で
人を変えてゆくこと

見え方を変えること


日常のありふれた楽しみの中から見つけることーー


(2日目)

天気の移り変わりと
予報していた天気が雨に変わったこと
服装と、色合いと、自分の表情の変化に
息詰まりを感じた

おみくじを引こうと思った

私のミラジーノには、カーナビを取り付けていなかった
理由は信じていなかったからだ
機械に提案されるがままに自分の行く場所までも
迷いのない「ルート」で
「マニュアル化」されたくなかった

自分の記憶や
そこまで辿り着くための選択の繰り返し
それを信じていたかった


とは言うものの、私は方向音痴で
場所や道のりを覚えるのが苦手だった
自分の記憶の不正確さや
選択の間違いによって、迷子になること
その苦労を共にすることを覚悟しなければならなかった
馴染みの場所や想い出の地であるならば、記憶は信用できるものではあった

神社を探してみた
道の駅により、観光案内所でちょっとした地図を手に入れた
有名なのか分からないが、それなりに地域に馴染んだ神社

この街には、かつて私が好きだった女が住んでいる
多分、まだ住んでいる
馴染みのある場所だ
この土地で会っていた
その女とこの神社へ行くことはなかった
その時は、この場所の事など知らなかった
境内に足を踏み入れると
また、私の足元をいつかの枯れ葉がかすめて行った
散り際だった頃に気づかずにいつかを忘れず引き摺ったままの
あの枯れ葉が
風が吹いた
一掃していく
道が開け放たれた
招かれるように一点に視線が注がれる
女の姿が視える
雨は止まったまま
曇り空からは晴れ間が覗いた
境内に明るさが灯る
もうすぐ雲が追いかける

通り過ぎてゆく横顔に
見覚えのある姿はなかった
あの女は枯れ葉のように
私の足元をかすめて行ったままだった

末吉だった


末に広がるーー



車内では“doc watson”の曲がラジオから流れた
盲目のギタリストなのだが
目が見えないのに、道が選べるのかと思った
自分の選択を信じることが、私なんかよりも重いことで
「眼というナビゲーション」無しに人生を遂行する
自分の間違いや迷いに対して、
ある慎重さがあるのか
それとも大胆さがあるのか
ギターのフレット上では自分の記憶と癖との手触りで
自分の知ることの中で間違わず、
その上では開眼された目で物事が視えている

喫茶店へと向かう

記憶を辿りに
車の速度が窓からの風を通す
隙間を埋める景色
近所の移り変わりが見える
公園は寂れたままだ
スーパーの店員は入れ替わっているのだろうか
信号は赤になり
停止線で止まった
doc watsonの音がフレット上で往来する

miraーーと、

ミラジーノの天井を雨音が打った
「絶対、見えてるよね」と
視覚障害者が横断歩道沿いの縁石を避けたとき
あの女は疑いながらも感心していた
経験や記憶から避けられたのであろう
しっかりと開眼された目で

明るいときは、あなたの場所からも視える

暗いときには、あなたの場所からは視えない


             「赤い星」

また本を手に取った
3日間の間、読み続けて
何らかの考え方や生き方の下地になると思って買った
間違いだったのだろうか


いつもと違う行動

どこかへと行こうとする気持ち

離れられない心

居場所

おみくじ



ここでは、何も出来ないだろうと

久しぶりに感情が動いた



でも飽きるほどに

日差しが帰ってきた

第20話「SNS -1分、過ぎてしまった-」

第20話「SNS -1分、過ぎてしまった-」

車のキーを差し込み、回す(捻る)

いつもなら、エンジンが掛かるのだが
エンジンの掛かりが悪い

何度か試みて、やっと掛かったーー


神社で視たのは誰かの面影

あのひとかと思った

こんな場所には居ないはず

でも


 思い出したくないことを、思い出した


裸眼で、考える



見つけたはずだった
自分の未来
幸せを見つけた
自分が向かうべき先
だけど

何度も、これだと思うことを試し
合わせようとする努力もした
自分を変えようと
賭けてみた
見つけられなかった

どこに宝物が
どこに幸せが

暗闇の中
灯りを求めた
だけど
たった独りのシルエット


頭上に、
日差しが帰ってきた

私が果たして、待っていたものなのか
分からない

日差しの中、2日目をどう過ごして良いのか
分からない



私は、どの道に寄るべきなのか?

寄る道と、寄らない道がある


私の選択は、敷かれたレールは
大学を中退して、脱線し
低所得者の日常を送り
未来に向けての資産を残すことなく
日々を繰り返し、繰り返し、浪費した
本当の危機を感じていなかった

独りだということ

誰かと、大事な部分を「分かち合う」ということ

脱線したら、交差もなく
「分かち合えず」終わるということ



正しい道を、運命よ
しかし、私が望まぬものではなく
今、私が望むこと
苦しさ、この心から解放されたい

私の心はもう、ギリギリのところ
運命よ、動き出して欲しい
この胸の苦しさを、救って欲しい
今、私が望むこと

答えがあれば、返答があれば
保留や、停滞や、引き延しは、もう
ただ、もう、助けて欲しい

神よ、本当に見ているのか?
苦しみを重ね塗られ、そして、心を留められ
私は生き地獄にいる
これは、私の望むことではない
幸せを導いて欲しい
私の愛は、素直だった
愛は通じていたのだろうか?
私の愛は、一方通行だったのだろうか?
何度目の失敗だったのか?
私は、ただ運命に弄ばれているのか?
救って欲しい
神よ、本当に見ているのか?

私は、心を求めていた


私の心は尽きた
愛は贈れるだけ送り
でも求めた応えなどなく
愛は無駄だったのか?


決して、帰ってこないものを待ち続け
無駄に心を使い
無駄に心が疲れ、果て
いつも私は振り回されてばかりだ

神よ、ただ、私は愚かだったのだろうか?

そうならば、ただ、もう
死なせてください
私の運命に、私が望むものはないのならば
一緒になりたいという想いが、叶わないのであれば

私は、生きたい
だが、運命が死なせる
私の心をいつも、いいところで死なせる
神よ

神よ



最後に会ったのは、去年の今頃だったろうか?
デートの約束をしていた
あの女の都合で
結局、うやむやに

約束した場所
「行きたい場所があるの」と

車内の時刻に、彼女の誕生日が
数字に現れた

去年の今頃、お祝いするはずだった

瞬間が間延びする

一度限りを伸長する

たった一度限りの

笑顔が欲しかった
きみの屈託のない笑顔
私が焦がれて、息を吹き返すことができたもの

私を、私の人生を、再生して欲しかった


 次に目をやると、1分、過ぎてしまったーー


疲れた車のまだらな進行
その中にいる
日々に、いや、全てに
疲れた人のまだらな群れ

夜道を照らすものは
人工的なもの
機械的な温もり
もう生きたくないように思える

等間隔で 夜道を照らす
広範囲ではなく 小さな範囲を

-そこに物語があるかのように-

人それぞれの背負う物事
人生は、まだらだ
その中にいる
日々が、等間隔で置かれている
広い範囲ではなく、小さな範囲で
まだらに

末に広がるーー



街灯が照らす
自分の道

意欲や気力
それを失ったまま
明日へ向かう
私は耐えられるのか

人生がまだらに

人生がバラバラになった時


ただ 街灯が照らす



人生に飽きていた

合わない服を着ながら
ここまで動き回った
違和感にも慣れた頃
でも、きっと無理をしていた

そして、自分自分を失った

ツケが回った
無理をしてきたから
何にも分からなくなった
見上げた街灯が直接に
視界を覆う人工的な眩しさがある


車を駐めた

街灯に沿って、歩いた
どこへ行く予定もなく
考え事があるはずだ
まとまりのつかない考えが
溢れて、零れるばかりの悩みが

楽しいそうにスキップして歩けたら
明るい方向へ行けるだろうか

心配事が積み重なり
歩く道を照らす街灯が
めまいのようで
今の僕
積もり積もって
果てた

くら っと
視界が歪み
地面に立つこと
バランスを失い
8月の意識が消えかかった

不思議なメロディーを聴いたーー
浮いた音が漂い始めーー
バランスを失ってーー
調和を欠く- ー--

倒れこむように
伏せこむように
軸を失った



星がいっぱい


 無数の明かりが乱反射し、眼に飛び込んできたーーー塊のように見えるところに目が向いた
 その隅や、縁、暗く薄暗い部分について、何か考えてしまう自分に気づく
 それはとても危ないことなのかもしれないと、心では分かりながらも、気が向いている自分がいた


幸せが消え
繋ぎ留めていた希望が消え
あらゆる価値がなくなり
感情を失ってゆく
手で触れるもの
目で見て、確かめたこと
当てになどならない
私の曜日は消えた
平べったい起伏もない
もういいんだ

もういいんだ

安楽死があったなら、私は選ぶだろう


-明るいときは、あなたの場所からも視える-


星が穏やかになり、
無数の乱反射した明かりは、視界から離れていった


駐めていた車へと戻り
エンジンを掛けた
車の調子が悪い
キーを回してもエンジンの掛かりが悪い

エンジンがやっと、掛かった
夜風に当たり
普段は寄らない場所へと走る



※第3部 記憶の底を視るもの編完
  第21話へと続く(近日中にアップロード予定)

恋した瞬間、世界が終わる -第3部 記憶の底を視るもの編-

ダメだったら、そっちから行けばいいよ

恋した瞬間、世界が終わる -第3部 記憶の底を視るもの編-

地上の上 路上 ログアウト マニュアル ビートニク 恋した瞬間、世界が終わる

  • 小説
  • 短編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-05-26

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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