【超短編小説】つま先

六井 象

 毎朝庭に撒く米粒に集まってくるスズメたちの中に、影のないのが一匹いた。他のスズメに比べて色が薄い。地面の米粒を一所懸命つつきながら、そのたびに首をかしげている。ちっとも腹が膨らまないのを不思議がっているようだ。ちょっとかわいかったので、つま先の影をちぎり、スズメの形にこねて、影のないスズメに繋げてやった。たちまちスズメの色がくっきりして、くちばしで米粒をつまめるようになった。満足そうな顔でチュンチュン鳴いている。食事を終えた群れが飛び立つ時、また明日、と声をかけると、件のスズメが寄ってきて、影のないつま先を軽くつついて飛び立っていった。意味はよくわからなかったが、やっぱりちょっとかわいかった。つま先がスースーするようになってしまったが、靴下を二重に履けば大丈夫だろうと思う。

【超短編小説】つま先

【超短編小説】つま先

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-05-23

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