戯曲「ナオユキ&シヅイ」

これは、僕のおじいちゃんおばあちゃんの若き日の恋愛冒険物語です。
ほぼほぼ史実通りなのが驚きです。
激動の昭和期を8割の馬鹿馬鹿しさでふたりは駆け抜けます。
誰か演出して下さい。

8割が馬鹿馬鹿しい!本格アナーキズム演劇脚本!

 戯曲
 「ナオユキ&シヅイ」


   脚本 堀川士朗
   演出 ????


 登場人物
 ナオユキ&シヅイ
 佐藤
 菅原文太
 コウメ太夫
 堀川士朗
 緑の兵隊たち
 警官たち
 ルイちゃん
 ヒルタスケタロー


開演前。無人の舞台。スモークが焚かれている。

M、椎名林檎「自由へ道連れ」が爆音で流れる。派手な照明。カクテルライトの明かり。
シヅイ登場。踊っている。
やや遅れてナオユキ登場。
ペアでコンテンポラリーダンスを激しく踊る。

M、カットアウト。

急に二人、まるで性交を終えたみたいに背中合わせで座り妙によそよそしい。

ナオユキ「俺たち」
シヅイ「ん?」
ナオユキ「俺たち将来」
シヅイ「将来…?ん?」
ナオユキ「俺たち将来チンドン屋にでもなるか」

間。

シヅイ「ん?ん?ん?将来、ん?チンドン、チ、ん?将来結婚とかじゃなくてチンドン、え?え?けっこ、結婚じゃなくて、え、明るい家庭を築きましょうとかじゃなくてチン、チンドン屋えチンドン屋え意味分かんない、え?」

照明、フェードアウトする。


舞台奥の白い幕に「1941」という数字が写し出される。

明転。
ナオユキとシヅイ、前景と同じ位置で板付き。
ナオユキ、やおら立ち上がる。

ナオユキ「なあシヅイ。俺…時代のアジテーターになりたいんだ。見ろっ!戦争はついに始まってしまった。大東亜戦争!為政者の陰謀により情報は操られ大衆が望んだ結果、軍靴の音がザックザックザックザックと鳴り響く世の中になってしまった。非常事態だ。異常な光景だ。こんな時代を、こんな世界を、こんな日本を俺は変えなきゃならないんだ!ならば時代を変えるアジテーターに俺は喜んでなろうっ!」
シヅイ「アジ定食」
ナオユキ「アジテーター」
シヅイ「アジ定食」
ナオユキ「アジ」
シヅイ「アジ」
ナオユキ「テート」
シヅイ「定食」
ナオユキ「アジテーター。アジテートする事」
シヅイ「アジ定食。アジ定食食う事」
ナオユキ「アジ……もういいよいやよくないアジ定食って何だよ!マジ。焼いてんのかよアジそれとも刺身の方の奴なのかよアジ。何だよマジ。人が。人が国や政治の事真剣に考えてあれしてんのにお前ときたらアジ定アジ定ってそんなんならどっかの定食屋でも行って独りで全力でアジ定食でも食ってこいよマジで。バカじゃん?本当に。あのさあ。あのなあ。本当に」
シヅイ「ごめん。あたしあれだよ」
ナオユキ「あ!?」
シヅイ「あたしあれだよ、あんたとアジ定、食べに行きたかっただけなんだよ。御免なさい」
ナオユキ「あ?」
シヅイ「最近あんた忙しくて外食連れてってくんないじゃん、だから」
ナオユキ「あん」
シヅイ「あたしがアジフライの奴頼んで。あんたが焼いたアジの定食で。御免なさい」
ナオユキ「うん」

シヅイの目から涙がこぼれ始める。

シヅイ「うえ~ん」
ナオユキ「んん」
シヅイ「あ。刺身のでも良いんだけど。そこは自由で」
ナオユキ「お前何で泣いてんの」
シヅイ「分かんない。分かんないよ。うえ~ん。でも御免。だったら~」
ナオユキ「泣くなよな」
シヅイ「だったらあんたがアジフライの方の奴で良いから~うえ~んうえ~ん!」

ナオユキ、シヅイを強く抱きしめる。

ナオユキ「泣くなよ。泣いて花実がなんとかのあれなんだっけまあ良いや」
シヅイ「花見も行きたいよ~!最近どこも行けてないじゃないかよ~!うえ~ん」
ナオユキ「うん行こ花見。来年。な?アジ定食も食べよう。日曜。ときわ食堂行こ。日曜。な」
シヅイ「うえ~ん。うれしい。ときわ食堂~。お出かけだよ~。久しぶりのお出かけだよ~。うれしいよ~!うわ~ん」
ナオユキ「な?な?な?」

ナオユキ、シヅイを愛撫する。

シヅイ「え?うえ~ん。え?」
ナオユキ「な?な?な?」
シヅイ「え?え?え?」
ナオユキ「な?な?な?」
シヅイ「え?え?え?」
ナオユキ「な?な?な?」
シヅイ「え?え?え?」
ナオユキ「な?な?な?」
シヅイ「何胸もんでんの?」

間。

ナオユキ「好きとかだから。な?Hじゃないから。これ好きとかの奴だから」
シヅイ「え?うん。え?え?」

ナオユキ、シヅイを押し倒す。素早くスカートをめくろうとする。

ナオユキ「これ好きとかの奴だから。Hの方の奴じゃないからねこれ。好きとかの奴だから、あ、つまり愛してるとかの」
シヅイ「良いよどっちでも」
ナオユキ「俺はお前を愛してるんだからねつまりは愛し」
シヅイ「ねえうるさいから少し黙って」
ナオユキ「ごめん」
シヅイ「ううん」
ナオユキ「んんん」
シヅイ「ああん」
ナオユキ「んん」
シヅイ「あん」
ナオユキ「ふぅん」
シヅイ「あぅん」

照明、カットアウトする。

M、Kula Shaker「303」が流れる。
舞台奥の幕に、大きな♥️マーク。次いで緑色の数字で「1940」「1938」「1941」「1945」「1946」「1942」「1939」「1943」等が大量に羅列され滝のように流れ落ちていく。それらが消え、大きな文字で「ナオユキ&シヅイ」。それも消えてM、カットアウトする。


白い数字。「1939」。

ナオユキ、紋付き袴姿で黒田節を踊っている。シヅイはそれを見てうっとりしている。シヅイの頭には角隠しがされている。
ナオユキ、黒田節を踊り終える。シヅイ拍手する。

ナオユキ「俺たちついにこの日を迎えた」
シヅイ「見合いじゃないってとこがすごいよね。自由恋愛だからねあたしたちマジで」
ナオユキ「そうさマニュアル通りにゃ行かないのメーン。旧態依然の見合い制度なんかにゃ中指立てるメーン。俺たち若い二人は誰にも止められないんだメーン。親が決めた結婚相手なんかクソ喰らえだファックだメーン」
シヅイ「やだ格好いい。倉庫のバイトでピッキングばっかやらされてる自称ヒップホッパーみたい。ねえ、あなた。ここでキスして」
ナオユキ「良いぜメーン」

二人、長いキスをする。

ナオユキ「音曲を聴くやうに、
お前の声を言葉を
立てる音を足音を
聴いている
お前の髪をかきあげる音も」
シヅイ「それは何?」
ナオユキ「五行歌」
シヅイ「び、微妙」

間。

ナオユキ「俺たちの挙式、特別ゲストに来てもらったよ」
シヅイ「え?」
ナオユキ「さあどうぞー」

コウメ太夫、登場する。

コウメ太夫「チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン、チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン、衝撃が走ったかと思ったら~、衝撃が側転してました~。チックショー!!」

間。

シヅイ「え?何」
ナオユキ「な」
シヅイ「え?」

間。

コウメ太夫「チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン、チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン、勇気を出して結婚しよう!と言ったら~、よく見たらサツマイモでした~。チックショー!!」

間。長い間。

シヅイ「何。意味分かんないんだけど。何を思ってのコウメ太夫なの?」
ナオユキ「な。祝福してくれてるんだよ彼は。いや彼女は。コウメ太夫は」
シヅイ「や、いらないから。コウメ太夫の祝福とかだいぶいらないから」
コウメ太夫「チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン、チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン」
シヅイ「虫酸が走る」
コウメ太夫「引き抜きが当たり前の世界かと思ったら~、引き抜かれませんでした~。チックショー!」
シヅイ「不愉快よ」
コウメ太夫「チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン、チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン」
シヅイ「全くの不愉快でしかない」
コウメ太夫「湯もみ体験に参加したら~、私の板だけアイスの棒でした~。チックショー!!」

間。

シヅイ「ねえ」
ナオユキ「ん?」
コウメ太夫「チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン、チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン」
シヅイ「これはいつまで続くの?」
コウメ太夫「世界に誇れるチクショウかと思ったら~、国の恥だ言われました~。チックショー!!」
ナオユキ「たぶん永遠に続くよ」
シヅイ「はぁっ!?」
ナオユキ「たぶんコウメが飽きるまでこれは永遠に続くよ」
コウメ太夫「チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン、チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン」
シヅイ「出てってもらってよ」
ナオユキ「え?」
シヅイ「出てってもらってよっ!」
ナオユキ「そんな。せっかくコウメ」
シヅイ「結婚早々離婚するよ悪いけど」

ナオユキ、慌ててコウメ太夫のえり首をつかんで追い出そうとする。

ナオユキ「失せろ!いらないんだよお前なんか!いらないんだよお前なんかっ!Get out ! Get wild and tough !」
シヅイ「TM NETWORK ?」

コウメ太夫、何か言いた気。

コウメ太夫「……チャンチャカチャンチャン」
ナオユキ「なっ!?もう良いからぁぁっ!」

ナオユキ、コウメ太夫にご祝儀を渡して肩をポンポンと叩く。コウメ太夫、しぶしぶ帰る。

シヅイ「不愉快よ。せっかくの今日という日に」
ナオユキ「ごめんねシヅイ」
シヅイ「もう許さないっちゃダーリン♥️」
ナオユキ「機嫌直してくれたのかいハニーバニー」
シヅイ「パンプキン。あたしの方こそ御免なさい、ワガママで」
ナオユキ「ううん。そんなお前で良いんだよ」
シヅイ「ありがとう。好き♥️」
ナオユキ「愛してるよシヅイ。永久永劫永遠の海、幾億幾万幾千の星々の如く愛し続けるよ」
シヅイ「愛してるはまだ分かんない。だからまだ愛してるとかは言えない。でも、好き♥️」
ナオユキ「そっかそっか。大好きだよ♥️♥️シヅイ♥️」
シヅイ「あたしも♥️ナオ♥️ナオの事ぜ~んぶ好きっ♥️♥️♥️」
ナオユキ「超うれしいよ。シヅイ俺もだよ。俺たち幸せになろうな」
シヅイ「うん。Hな事いっぱいしよっ♥️」
ナオユキ「うん。向こうのキングサイズのベッド行こ」
シヅイ「うん。え、あんの?キングサイズのベッド」
ナオユキ「あるに決まってんじゃん、ここ帝国ホテルだよ。帝国主義嫌いだけど。窓から皇居が一望出来るスイートルーム取ってあるよ。あいつの事大嫌いだけど。帝国主義反対。帝国ホテル最高。な?ベッド行こ」
シヅイ「うんっ♥️」

ナオユキ、シヅイを抱きかかえて去る。


白い数字。「1940」。

緑色の全身タイツの集団が行軍していく。右から左へ。左から右へ。孤を描くように。あるいは直角的に、鋭角的に。非常に統制が取れており、ものすごく美しく、予め用意された死を前提にしているからこその哀しさが彼らには漂っている。

緑の兵隊たち「♪勝ってくるぞと勇ましく、ちかって故郷を出たからは、手柄立てずに死なれよか。進軍ラッパ聴くたびに、まぶたに浮かぶ旗の波。
♪土も草木も火と燃ゆる、果てなき荒野踏みわけて、進む日の丸鉄かぶと、馬のたてがみなでながら、明日の命を誰が知る。
♪弾丸もタンクも銃剣も、しばし露営の草まくら、夢に出て来た父上に、死んで還れと励まされ、さめて睨むは敵の空」

緑の兵隊たち、美しく去る。
入れ代わりにナオユキ、黒いコートを着て登場する。煙草を吸いながら。

ナオユキ「あーもうこれ止まんねーな」

間。

ナオユキ「あーもうこれ止まんねーな。無理だこれ。絶対戦争になるわこれ。マジで。俺一人の力じゃ、もうどうにも止まらない」

ナオユキ、緑の兵隊たちが去って行った方角を見つめる。

ナオユキ「『何千の命、何万の金をつぎこもうと、このわらしべほどの問題、とうてい解決できっこないのだ!富み栄え、平和にあきれば、かならずこのようなはれ物にとりつかれる。外からは何も見えないが、中はすっかりうみただれていて、こうして人は命を落とすのだ。』ハムレットのセリフさ。俺の強酸党、分断されて今や散り散りだ。一億総活躍社会だっけ。進め一億、火の玉だ、だっけ。聞こえは良いが、独裁政権に都合の良い奴隷を量産しているだけの、ただのセンチメントな言葉だ。嗚呼、強酸党シンパのlineも全部安倍晋三と東條英機に内容チェックされてるし。皇居にいるあいつはただの傀儡に過ぎない。大正の頃の方がずっと健全だった。まだ奴の治世の方が良かった。奴は全然暗愚なんかじゃなかった。知的障害なんかじゃなかった。消されたんだ……あいつに。嗚呼キナ臭い。キナ臭い匂いがぷんぷんすらあっ!」

緑の兵隊の一人がスッと現れ、ナオユキをジッと見つめている。ナオユキ押し黙り、しばらくして緑の兵隊去る。

ナオユキ「とんとんとんからりと隣組だった。全国防諜週間も作られそうなご時世だ。あいつはスパイだと通報されちまう。密告されちまう。容疑をかけられちまう。そんで……獄死だ!嗚呼、世知辛い世の中になったな。下手な事は言えねえ。またヤサを変えなきゃならないな。俺たち強酸党員は非合法のアナーキスト集団。アカだ非国民だと呼ばれ絶えず特高警察にマークされている。俺のホレイショー、佐藤の奴は元気かな。あいつに連絡取れるかな。lineが駄目ならば、そうだ!電報を打とう。ほんとこの国最悪だよ。また満州にでも潜伏すっか。向こうに三人彼女いるしな。はー、アジテーターはつらいよ」

ナオユキ、煙草を投げ捨てる。

ナオユキ「受動喫煙防止法?まるでナチスのやり口じゃねぇかよっ!」
ナオユキ、去る。


白い数字。「1944」。

ナオユキの隠れ家。激戦地サイパンから帰ってきたナオユキの部下、佐藤がいる。ナオユキと佐藤、楽しそうに談笑している。シヅイは不機嫌そうな顔をしている。

シヅイ「ねえ佐藤もあなたも煙草をやめてよ。臭いわ。排水溝の匂いがする」
ナオユキ「まあご苦労さま。一杯やってくれよ」
佐藤「頂きます」
ナオユキ「天麩羅もつまんでくれ、シヅイが揚げてくれた奴。海老の奴が美味いから」
佐藤「奥さん美味しい。とても美味しいです!」
シヅイ「そりゃどうも」
ナオユキ「やー大変だったろサイパン」
佐藤「正直くたくたに疲れ果てましたね。もう惨敗も惨敗。玉砕も玉砕。て言うか陶器で出来た手榴弾渡された時点でもうこりゃダメポと思いましたね」
ナオユキ「陶器?あぶねーよそんなの」
佐藤「無理ゲーです、この戦争。もうモノがないんですよ日本軍には。とにかく向こうはオートで撃てるM1カービンでしょう、キャリバーのマシンガンでしょう。こっちは明治時代から使ってるお古も良いとこの三八式歩兵銃ですよ、勝てる訳がない。陸軍造兵廠から回されてる故障ばっかの九七式中戦車なんてM4シャーマン戦車の格好の餌食でしかない。装甲が薄いから敵の76ミリ砲に段ボールのように面白いほど撃ち抜かれましたよ」
ナオユキ「まさに無駄死にだな」
佐藤「ええ」
ナオユキ「長渕剛のあのけったくそ悪いソングがお似合いだな」
佐藤「兵隊の何人かは口ずさんで死んで行きましたよ長渕の曲」
ナオユキ「そうか。そうなんだよ。最初っから無理があったんだよこの戦争。物量と国力とモチベーションが段違いで敵わないのに、そりゃ精神論一本で勝てたら世話ねえよ。あげくの果てには神風に期待してるんだからオカルト国家と言われてもおかしくねぇよな、はっはっはっはっ」
佐藤「その通りですよ」

ナオユキと佐藤、ビールをあおる。

ナオユキ「ふう」
佐藤「美味いですね」
ナオユキ「こっちの読み通りあと一年ぐらいで終わるだろうな。戦争」
佐藤「ですね。あと、ドリフターズ描いてる平野耕太も言ってましたけど海と陸で仲悪すぎました。ライセンス別々に買ったりとか。陸軍が潜水艦造ったりするんですよ。もう末期も末期」
ナオユキ「マジか。キショいなそれ」
佐藤「キショい軍隊です。キショい国ですよ大日本帝国は」
ナオユキ「終わった後の事、考えなきゃな」
佐藤「ですね」
ナオユキ「力を貸してくれるか?佐藤」
佐藤「ええ是非」
ナオユキ「全国に散り散りになっている俺の仲間を集めて、戦後の日本を立て直す計画を立案中なんだ」
佐藤「そりゃ。凄い」
シヅイ「ビールおつぎしましょうか?」
佐藤「ああどうも」

シヅイ、佐藤のグラスにビールをつぐ。佐藤、一気にあおる。

ナオユキ「どうだいシャバは最高だろ?」
佐藤「ああビールが美味い!戦車隊長で良かったですよ。大佐で。下士官だったらあのまんま残って玉砕でした。空気が美味いです。日本の空気美味い。海老の天麩羅も美味い。生きてて良かった!」
ナオユキ「お疲れさま。お前よく強酸党員のままでいられたな」
佐藤「心まで軍部に売り渡したりしませんや」
ナオユキ「そうか」
佐藤「ところでナオさんは赤紙どうやって回避したんですか?」
ナオユキ「ああ俺は徴兵検査の時の目の検査で、やり方が分からなくて全部上って答えたら軍医に『お前はアタマがいかれとるのかぁっ!』って言われて回避出来たんだよ、はっはっはっ!ザル法だよ結構」
佐藤「戦地に取られなくて正解です。確かに我々は戦いました。アメリカ兵とじゃなく、飢えと。奥さんもしっかり聞いて下さい。絶対内地じゃ流れない情報だから。我々は、血もすすりました。人の肉も喰らいました。臓物にかぶりつきました。地雷で吹っ飛んだ死骸の腕を美味そうにむしゃむしゃと喰らいました。それだけ飢えていたんです。我々はもはや餓鬼です。畜生道に堕ちた餓鬼です!」
ナオユキ「そうだ日本人なんかみんな餓鬼だー!」
シヅイ「ねえ二人ともやめて!いやよあたし。戦争とか。人が死ぬ話。たっくさん!」
佐藤「奥さん。でもね、戦争反対だけを叫んでも無駄ですぜ。現に牙をむいているんだから。その内日本も空襲でやられますよ、一大防衛拠点サイパンが墜とされたんですからね」
シヅイ「佐藤!」

照明やや暗くなり、サイパンの激戦の映像が流れる。硝煙に包まれる戦地、擱座する九七式中戦車、塹壕で息絶えている兵士、火炎放射器で焼かれる穴ぐら。etc. etc.…。スライド消えて照明平静に戻る。

シヅイ「とにかく大嫌いなものは大っ嫌い。戦争は嫌いよ。心がチクチクするの。ねえあなた止めてよ佐藤の話を」
ナオユキ「えええ」
シヅイ「離婚したいの?」
ナオユキ「佐藤。ストップ。ハウス。ステイホーム。佐藤。去れ。いねい」
シヅイ「佐藤帰って!Get out ! Get wild and tough !」
ナオユキ「TM NETWORK ?」
佐藤「何だい何だい二人とも敵性外国語を使って。分かったよ帰りますよ。チェッ。銃後の身分は楽で良いよな」

佐藤、去る。

シヅイ「あたし、あの人、嫌い。あたしたちの将来に何か暗い影を落としそうで」
ナオユキ「ああん。まあでもまあ俺の大切な部下だからなあ」
シヅイ「佐藤を取るか、あたしを取るか。それが問題よ」
ナオユキ「そりゃもちろんお前を取るさ」
シヅイ「当たり前じゃんそんなん」

シヅイ、食卓の膳を片付け始める。

ナオユキ「海老の天麩羅まだあったろ。揚げてくれよ」
シヅイ「もうない。ほんのちょっとのサツマイモしかない」
ナオユキ「えええ少なくね」
シヅイ「ずうっとあなたは満州行ってたから分からないと思うけど今日本じゃ物資が欠乏してんだこのバーカ!」
ナオユキ「そうか」
シヅイ「そういうとこうといなあ。まるでまるでお坊ちゃまだよね。でも好き、そういうとこ」
ナオユキ「俺も大好きだよシヅイ、一生愛し続けるよ」
シヅイ「愛してるはまだ分かんない。だからまだ愛してるとかは言えない。でも、好き♥️」
ナオユキ「へへへ。懐かしいなあ」
シヅイ「何が?」
ナオユキ「俺たちが初めて出会ったあの夜の事」
シヅイ「そうね、あれは雪の降る……」

シヅイ、いそいそと急いで着替え始める。

ナオユキ「何やってんの?」
シヅイ「……雪の降る。え、早替わり。今から回想シーンだから」
ナオユキ「そっか」

暗転。


白い数字。「1938」。
明転。
場面変わって銀座の一角にある高級ロシアンカッフェー。数脚のイスとテーブル。カウンターが設置されている。夜十時過ぎ。
店内ではシヅイと後輩のルイちゃんが可愛い可愛いメイド服を着て働いている。

M、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲が薄く流れている。
客が入ってくる。一人でブツブツ何か言っている。堀川士朗だ。

堀川士朗「まーなんだろねあれだよね俺は常日頃から思うんだけどね今流行ってるエンゲキ?岸田?國士クン?ありゃ駄目だね。全然駄目。スタイルだけだから。贅肉をそぎ落とした面白みのまるでない外連味(けれんみ)のまーったくないセリフをろうして、いかにもあー私今自然なリアルな芝居やってますよ~ミリ単位で計算した演技ですよ~どうです~上手いでしょ~リアルでしょ~感だけの三文芝居。ナンセンス!いっくら女子供に人気があっても駄目。全然駄目。ちゃんちゃらおかしい。笑っちゃう。もう俺笑っちゃう。はっはっはっ。リアル?リアル?興味ねえ。『紙風船』?はあ?人情紙風船ですかっつうの!同世代演劇人としてあいつは絶対に許せない。くそ。あんなのそのうち消えるね。二年ぐらいで。岸田國士?クズじゃんあんなん。はっはっはっ」
シヅイ「お客様、外套を預かります」

堀川士朗、全然聞いていない。勝手に席に着く。

ルイ「乞食ですねー」
シヅイ「乞食だねー」
堀川士朗「は?」
シヅイ「で?」
堀川士朗「え?」
シヅイ「で?」
堀川士朗「は?」
ルイ「あ?」
堀川士朗「ん?」
シヅイ「あ?」
堀川士朗「は?」
ルイ「は?」
堀川士朗「え?」
シヅイ「で?」
堀川士朗「え?」
シヅイ「で?」
堀川士朗「何?」
ルイ「で?」
堀川士朗「何?」
シヅイ・ルイ「オーダーは?」
堀川士朗「ああうん。ビールが飲みたい、ビールくれ。グラスの小」
シヅイ「グラスの小ひとつね」
ルイ「はーい」
シヅイ「一番安い酒じゃん」
堀川士朗「ブツブツ……」
シヅイ「お客さん、演劇でもやってるんですか?」
堀川士朗「え?」
シヅイ「やなんかさっき岸田國士とか言ってたから」
堀川士朗「ああそうなんだ、役者と脚本家と演出やってる」
シヅイ「へー。夢があって良いですねー」
堀川士朗「夢?夢って何だよ!夢じゃねんだよ!そもそも仕事でやってんだよこっちは。夢?馬鹿にするなよ。現実、現実なんだ」
シヅイ「はあ」
堀川士朗「俺は岸田とは違うんだ!才能に満ちあふれているんだ。で、岸田が國士の奴がいかに駄目だって事については後で話すわ。マジ熱く語っちゃうわ」

シヅイ、堀川士朗にビールのグラスを渡す。堀川士朗、美味しそうにゆっくり飲む。

ルイ「いや聞きたくねーから。早くそれ飲んで帰れ馬鹿ブタ乞食」

堀川士朗、頭をかきむしる。間。

堀川士朗「くそぅっ!あー。蜷川幸雄が死んでから人生がつまらなくてつまらなくてたまらない。何を観ても感動しないし、何を食べても砂の味しかしない。女とのセックスも全く面白くない。蜷川さんは偉大だった。僕は青春の全てを捧げたんだ、彼に!嗚呼、感情は消え失せ、僕の中の存在としてのゴーストはもはや永久凍土の眠りから覚めやしない。さっきっから耳障りな音楽が鳴っていやがるが、僕には決して聴き取れやしない。ヒースクリーフ!ヒースクリーフ!呼べど答えず……嗚呼、僕はもうきっと、あのリビングデッドの日常を生きて死んでいるんだろうなあああ」
シヅイ「辛気くさ。エンゲキくさ」
ルイ「ねー」

堀川士朗、テーブルにバタンと突っ伏す。

堀川士朗「ねえお代わり持って来いよ」
シヅイ「はい?」
堀川士朗「さっさとお代わり持って来いよっつってんの!」
シヅイ「窪塚洋介意識してんだろお前」
堀川士朗「あ?」
シヅイ「で?」
堀川士朗「は?」
シヅイ「で?」
堀川士朗「え?」
シヅイ「で?」
堀川士朗「何?」
シヅイ「金あんの?」
堀川士朗「へ?」
シヅイ「二杯目からは一杯弐圓だよ」
堀川士朗「……そうなの?」
シヅイ「ウチはそういうシステムだよ。銀座は大体そういうシステムだよ」

堀川士朗、財布の中身をごそごそと確認し、足りないので立ち上がる。

堀川士朗「……あのさあプロミスで借りて来て良いかな?黄色い看板プロミス」
シヅイ「は?」

ルイちゃん、入り口ドアを抑える。

ルイ「させねえよ」
シヅイ「だよ。無銭飲食かよ」
ルイ「上等じゃねえかよ馬鹿ブタ乞食」

間。

ルイ「座れよ」

堀川士朗、座る。

シヅイ「ちなみにそこ座っただけでまず弐圓だかんね」
堀川士朗「えっ!」
シヅイ「それ飲んだからあんた弐圓参拾銭置いてとっとと帰りな」
堀川士朗「えーと。えーと。えーと。えーと。えーとうーんとあのー。えーんと。えーと。えーと。えーと。あのー。うーんとあのー。あのー。えーんと。あのー。あのー。あのー。あのー。えーんとえんと、僕四拾銭しか持ってきてないの今分かった」
ルイ「はあっ!?」
シヅイ「正気かよ?ここ銀座の一等地だぞ。この、貧乏小劇場の乞食野郎が!」
堀川士朗「う、うるせえ。俺は役者だ!脚本家だ!演出家だ!俺は偉いんだ!ぜんの」
シヅイ「役者なんて全員乞食じゃん。やっぱエンゲキなんて、ただの夢じゃん」
堀川士朗「おいてめえっ!女給ふぜいがっ」
シヅイ「女給で結構。エンゲキ無職ブタよりマシだよ」
ルイ「シヅイ姉さん、こいつてめえとか言ったよ」
堀川士朗「……暴れっちゃうるぞっ!」
ルイ「おおっ!やってみろやっ!」
シヅイ「……奥からこわい人来るよ」
堀川士朗「へ」
シヅイ「……呼ぼうか」

間。

堀川士朗「いや…あのうすみま」
シヅイ「あーマジウザいウザいウザいウザいウザいウザいウザいお前腐りかけの残飯にたかるキモイうじ虫みたいごめん呼んじゃうわルイちゃーん」
ルイ「はーい」
シヅイ「文太さん呼んで来てー」
ルイ「あいー」

ルイちゃん、奥の間に去る。

堀川士朗「なに、なに……なに。なにがおこるの」

二階から着流し姿の菅原文太ゆっくりと登場する。手には日本刀。

菅原文太「立って」
堀川士朗「はいっ!」

堀川士朗、馬鹿だから条件反射でスックと立つ。

菅原文太「力抜いて」
堀川士朗「はぃ」

堀川士朗、馬鹿だから条件反射で脱力する。
菅原文太、袈裟斬り。

堀川士朗「アア、これが演劇の世界…に、蜷川さぁん……今行きま」

前のめりにドシャッと倒れ込んで死ぬ。

シヅイ「いや違うから。現実だからこれ。あんた現実で虫けらみたいに死んだから」
菅原文太「たまに来んだよな、こういうの」
シヅイ「迷惑ですよねほんと」
ルイ「クズ虫一匹処理だお」
菅原文太「おしぼりあるかい?」
ルイ「あいー」

ルイちゃん、菅原文太におしぼりを渡す。文太、日本刀を綺麗に拭いておしぼりを堀川士朗の後頭部に投げつける。
しばらくして警官二人がやってきて菅原文太に敬礼をして堀川士朗の死体をぞんざいに引きずって去る。

ルイ「お巡りさん早ーい」
菅原文太「呼んどいたんだ」
シヅイ「文太さん、ありがとうございました」
菅原文太「良いって事よ」
ルイ「また何かあった時はあたしたち可愛い可愛いメイドみゅんを助けてニャン♥️」
シヅイ「みゅん?ニャン?いくつだよ」
菅原文太「ああ。上でアブサン飲んでっから。何かあったらいつでも俺を呼びなァ」

菅原文太、ゆったりと奥の間に消える。
シヅイとルイはテーブルの上を片付ける。

シヅイ「ルイちゃんて何年生まれだっけ?」
ルイ「えー、あたし昭和元年生まれです」
シヅイ「ついこないだじゃん」
ルイ「えー。まだ13でーす」
シヅイ「ピチピチじゃん」
ルイ「処女です♥️」
シヅイ「嘘言うな」
ルイ「バレたぁ♥️」
シヅイ「あたしあれだから。大正9年生まれだからね。口のきき方に気をつけてよね。お姉さんだからね」
ルイ「えー、大正とかってもう分かんないですー。マジ太古」
シヅイ「年上だかんねいや太古ってなんだよ」
ルイ「あーいとぅいまてぇーん♥️」

間。ルイはカウンターの皿を洗っている。シヅイはテーブルの上を拭いている。

シヅイ「ねぇルイちゃん」
ルイ「はいシヅイ姉さん」
シヅイ「おととし、何してた?」
ルイ「はあ、まだあたし青森の寒ーい寒い山奥で一番下の弟背負って畑仕事してました。人買いに東京に連れて来られたの、去年だもんで」
シヅイ「あたし……おととし見ちゃった」
ルイ「何を?」
シヅイ「226事件」
ルイ「マジで?」
シヅイ「うん。季節は冬の終わり。雪の降る夜だったわ。いつものようにこのカッフェーでボーッと客待ちしてたらさ、あの六階建ての三井のビルヂングの角っこからザックザックザックザック足音だけが聞こえてきたの。で、あたし何だろうって恐る恐る窓から外を見たの。そしたら兵隊さんたちが行進していたの。二十人ぐらい。姿勢はピシッとしてるんだけど、みんな。みんな何だか寂しそうな侘びしそうな顔をしていたわ。あたし、声をかけちゃった、一人の兵隊さんに。とても若くて好みの顔をしてたのその人。『ねえ寒いでしょ?温かいブランデヰならありますよ』って言ったの。その兵隊さん、上官みたいな人と少し喋って隊列を離れて店に来たわ。で、『僕を暖めて下さい。少尉殿に許可は取りました。僕、今日これから死ぬんです』って言ったの彼。赤い顔して。あたし急に悲しくなってブランデヰを飲ませてやって、それから……」
ルイ「それから?」
シヅイ「寝たわ、彼と」
ルイ「わあ」
シヅイ「お互い名前も知らない。でも激しく求め合った。この店じゃいつもの事だけどその日は何か特別だった。彼はあたしに包まれて泣いていたわ。白い涙をこぼしながら」
ルイ「素敵」
シヅイ「あの、夜の事、思い、出し、ちゃった……はーあ今夜は冷えるわねっ!」
ルイ「はい。雪、降ってます。笑」

急にドアが開き、男が入ってくる。外から雪が漏れる。

シヅイ「お客様、ドアーを閉めて。雪が」
男「おおそうかすまん」

男、ドアを閉める。立てたコートのえりを直し、帽子を脱ぐ。ナオユキだ。
シヅイとナオユキ、目が合う。お互い吸い込まれるようにしばらく見つめ合う。

ルイ「お帽子と外套をお預かりします」
ナオユキ「うむ」

ルイちゃん、帽子とコートを受け取りナオユキにメニューを渡し、カウンター奥に引っ込む。メニューをめくるナオユキ。シヅイ、ゆっくりゆっくりとナオユキに近づいて行く。

シヅイ「お客様初めてですよね」
ナオユキ「ん?ああ。飛び込みで入った」
シヅイ「綺麗な指ですね。月並みですけどピアノとか上手そう」
ナオユキ「ふん、そうか?ピアノは弾かんがね」
シヅイ「高そうな時計ですね?」
ナオユキ「ああ。ロンヂンだ。フランスに留学した時に買ったものだ。百伍拾圓もした」
シヅイ「すごーい。お客様、相当な金満家なのね?」
ナオユキ「ホリカワ家は十四代続く武士の家柄だ。金なら腐るほどある」
シヅイ「……とろけちゃう」
ナオユキ「ふん」
シヅイ「ご注文は?」
ナオユキ「ここはどこの国の料理を出すんだい?」
シヅイ「メェンは英国とロシア料理です」
ナオユキ「そりゃあ好都合だ。二つとも好きな国だな。アイリッシュ珈琲とシベリアを二丁頼もうか」
シヅイ「雪ですねー」
ナオユキ「聞いてるのか?」
シヅイ「聞いてます。雪の音と、それからあなたのとっても素敵な声を」
ナオユキ「ふん」
シヅイ「渋い声をしてますね」

ルイちゃんは二人を見ながら、何だか事の顛末を予想したようにニヤニヤしている。

ナオユキ「ん?渋いか。よく言われる」
シヅイ「他に何か召し上がります?」
ナオユキ「ああ、ボルシチみたいなスチュー料理とペリメニももらおうか」
シヅイ「はぁい」
ナオユキ「何か受け答えがいちいち可愛いな」
シヅイ「まあ。上手いんだから」
ナオユキ「君は国は何処なんだ?」
シヅイ「栃木の今市市です。今市の小町に選ばれた事もあります」
ナオユキ「通りで。透き通るような白い肌をしているもんな。まるでコペンハーゲンの白磁器のようだ」
シヅイ「もう。口から先に生まれたの?」
ナオユキ「綺麗な女にはそれ相応の美辞麗句を以て答えなきゃ男稼業は張れないのさ」
シヅイ「お客様。女の子ほっとかないでしょ」
ナオユキ「ん。まあな。女に不自由した事はない」
シヅイ「お仕事は何を?」
ナオユキ「アジテーターだ」
シヅイ「アジ定食?」
ナオユキ「いや、違う」

シヅイ、水を入れたコップをテーブルに置く。わざと少しこぼす。

ナオユキ「わ」
シヅイ「あ。濡れちゃったん♥️」
ナオユキ「へ」
シヅイ「テーブル」
ナオユキ「ああ。あん」

間。

シヅイ「お名前何ておっしゃるの?」
ナオユキ「ナオユキ。ホリカワナオユキだ」
シヅイ「男らしい。凛凛しい名前」
ナオユキ「君の名前は?」

間。

シヅイ「アイリッシュ珈琲とシベリア二つ先にお持ちしますね。ブランデヰで良いですか?」
ナオユキ「ん?」
シヅイ「アイリッシュ珈琲に入れるの。入れ、るの」
ナオユキ「入れ、るの?」
シヅイ「ブランデヰ。入れるの。いっぱい入れちゃうの♥️」
ナオユキ「ふが」
シヅイ「そんなに入れたいの?」
ナオユキ「へ?あ、うん。はい」
シヅイ「うふふ。どうしようもないですね」
ナオユキ「女のからかいは好きじゃない」
シヅイ「ふふふ」

間。

ナオユキ「もう行こうかな」
シヅイ「もうイッちゃうの?待って。もっともっと、もっと楽しみましょう。夜を。あたしたち二人の、今夜一夜を」

ナオユキ、立ち上がろうとする。シヅイはそれを阻止し、後ろから覆い被さってナオユキの大事な部分を優しく両の手でつかむ。

シヅイ「こんなに……なっちゃってるのに?」

長い間。

ナオユキ「あ、うん…」

ナオユキゆるゆると座り直す。

シヅイ「え~と、二時間伍圓伍拾銭ですけどどうします?」
ナオユキ「何が?」
シヅイ「またまた。分かっててこの店来たんでしょ?」
ナオユキ「え、どうす」
シヅイ「あたしかルイちゃん。3Pだと拾圓ポッキリ」

長い間。

ナオユキ「あなたでお願いします」
シヅイ「はいありがとうございます。あ、ルイちゃんはまだ勉強中なんで部屋の隅で座って見せても良いですか?」
ナオユキ「見せるの?こんな子供に」
シヅイ「その方が興奮する?」
ナオユキ「はい」
シヅイ「じゃあ、お二階へどーぞ~」
ナオユキ「なあ。なあ。君の名前を教えてくれないか?」

間。

シヅイ「シヅイ。イシカワシヅイ。数えで十九」
ナオユキ「可憐だ」

三人、連れだって奥の間へ消える。
しばらくしてM、バイオリン協奏曲、フェードアウト。
暗転。雪の音が強くなる。音、止む。


白い数字。「1943」。

明転。

大人数のスタッフ兼キャストが猛スピードで前景のセットをバラし、段ボールや布や雑貨などを配置し、セットを作っていく。
無人になる。
舞台変わってナオユキの新しい隠れ家。
軽井沢。
ナオユキ登場。ベイシングエイプのTシャツを着てサングラスを掛けている。髪は金髪。

ナオユキ「良いねー。落ち着くねー。やー隠れ家買ってこれ正解だわ、マジ」

シヅイ登場。ナンシー・スパンゲンみたいなパンキッシュな服を着ている。

シヅイ「良いよねー。カブーン!やーまさにこの風光明媚(ふうこうめいび)な眺めとか、まさにウィンガワンワンだねー」
ナオユキ「ウィンガ、え?何?」
シヅイ「え?言った?そんな事」

ナオユキ、シヅイに近寄る。

ナオユキ「キスしようか?」

間。

シヅイ「あたしたちもあれだね、丁度結婚五周年だねー」
ナオユキ「え?あ、おめでとう」
シヅイ「他人事かよ」
ナオユキ「ん?」
シヅイ「あーあれだねー。こうやって川のせせらぎを聴くだけでまるで心がキトケトサントケイはセーネンダッキャだよねー」
ナオユキ「キトケ、セーネ?ん何それ」
シヅイ「あたしそんな事言ってないよ」
ナオユキ「シヅイ。ねえキスしようか?」
シヅイ「あー軽井沢最高だよ。まるでここにいるだけでゴックリンコンでビックリンコンねー。だよねー」
ナオユキ「お前また訳分かんない言葉使うのやめて?ちゃんとした日本語で話してくんない?」
シヅイ「軽井沢最高ーオッパポロポンブシ~!」
ナオユキ「ねえ」
シヅイ「うっさいな。あたしよく日本語ゲシュタルト崩壊するからほっといて。ロパーヒン。チェプトゥイキン。カンチャンズッポシ」
ナオユキ「出来るだけ崩壊させないでね頼むから。不安になるから」
シヅイ「不安?不安になるのはあたしの方だよ」
ナオユキ「何が?」
シヅイ「あんた最近反戦活動忙しくて全然相手してくんないじゃんかよー。寂しいよ~。寂しいとウサギは死んじゃうんだよ~」
ナオユキ「あん。う、うん。でも仕方ないだろう?俺は日本を軍国主義から救いたいんだよ」
シヅイ「関係ないじゃん、ほっとけば良いじゃんそんなん。いっぺん壊れちゃえば良いじゃん日本なんか。あんたと居られる事の方が大事だよ」
ナオユキ「んんん」
シヅイ「ゴックリンコンでビックリンコーン!」
ナオユキ「ねえそれやめて」
シヅイ「やめる」

しばらく二人、静かにしている。

ナオユキ「シヅイ、お前の事を愛してるんだよ俺は。だから心配になるんだ」
シヅイ「愛してるはまだ分かんない。だからまだ愛してるとかは言えない」
ナオユキ「シヅイ」

間。

シヅイ「ウズラヤクヤギー!ウズラヤクヤギー!アチョップマウマウ!ゾウニゲッチャガン!チ~ラシ~!ズシナ~ラマンチャラフランス!」
ナオユキ「うるさいから外でやって」
シヅイ「え、良いの?外行ったら三日は帰らないよあたし」
ナオユキ「この時期のシヅイは確かに心が病んでいました。あの小さな体の中に悪魔が棲みついていたのです」
シヅイ「ねえ」
ナオユキ「ん?」
シヅイ「あたしの事好き?」
ナオユキ「……うん。好きだよ」
シヅイ「本当?」
ナオユキ「ああ」
シヅイ「ここ来て何カ月が経ったっけ?」
ナオユキ「へ。来たばっかだよ」
シヅイ「あー…そう。もうずっとこの牢屋みたいなとこ。いんのかと……思ったよ。鉄格子。何であんの……」

間。

ナオユキ「お前大丈夫か?」
シヅイ「うん」
ナオユキ「実はここ軽井沢に部屋を設けたのはシヅイの療養も兼ねての事でした。街を離れ落ち着いた場所ならばシヅイの心の病も良くなると思ったのです。私はそれだけシヅイの事が愛しくてたまらなかったのです」
シヅイ「あのさー」
ナオユキ「何」
シヅイ「今日中に15キロ痩せて」
ナオユキ「無理だよ!」
シヅイ「そっか。あんたあんま頭良くないもんねー」
ナオユキ「頭は関係ないけど、あのなぁ俺は明大首席卒だぞ、政経学部きっての秀才だったんだ」
シヅイ「ああやっぱ馬鹿じゃん。その程度かよ。せめて帝大首席卒ぐらい言えよ、レベル低い馬鹿だなー」
ナオユキ「馬鹿馬鹿言わんでくれ。お前に言われると、切なくなる」
シヅイ「そう。男なら、もっと切なれ」
ナオユキ「切なれ?」
シヅイ「あんたほんとにあたしの事好きなの?」
ナオユキ「え?」
シヅイ「性欲だけならやめて。あたしが欲しいのは愛なの。欲じゃない」

間。

シヅイ「ほんとのほんとはあたしの事ちっとも愛してないんでしょう?」

長い間。

ナオユキが何か言おうとするが、シヅイは台所に立って包丁を取り出す。
シヅイ、「雨に唄えば」を唄いながらナオユキに包丁で襲い掛かる。

ナオユキ「助けてー!」
シヅイ「駄目ー!」
ナオユキ「助けてー!」
シヅイ「無理ー!」
ナオユキ「助けてー!」
シヅイ「却下ー!」

M、私立恵比寿中学「自由へ道連れ」が爆音で流れる。
シヅイ、金属バットを手にセットを徹底的に破壊する。
シヅイ「全部壊れちゃえニッポン!いっぺん全部ぜ~んぶ、ぜ~んぶぜ~んぶ壊れちゃえー!ニッポーン!いらねーよーこんな国ー!けーっけっけっけっけっ!」
ナオユキ「ヤメテーッ!」

シヅイ去る。
M、フェードアウト。

照明、暗くなる。


白い数字。「1945」。

ナオユキ、金髪のカツラを取り平素な服に着替え終わっている。

ナオユキ「壊れてしまった東京。焦土。焦土…。焦土だ…。全て、全て空襲で灰になってしまった。大好きだった街、ふるさとの東京が焼け焦げた事に対して、私は想像以上に怒りを覚えていた。絶望の中で私は怒りを失わなかった。ふつふつと湧き上がるまるでそれは、純粋な不純物の塊の如き怒り。万人の民の、震える怒りの声を聞け!私はそばに落ちていた石を、ハゲ頭のあいつの車目がけて石を投げつけた」

ナオユキ、スローモーションで客席に向かって石を投げる。

ヒルタ「はい消えたー。はーい投獄決定ー」

ヒルタスケタロー、数人の警官たちを引き連れて登場。
ナオユキを椅子に紐でくくり付ける。

ナオユキ「はっ!?ここは?お前は誰だっ!」
ヒルタ「ここは秘密の監獄だよ。私はヒルタスケタロー、特高警察の署長だよ。はいどうぞよろしくー」
ナオユキ「特高警察?くそぅっ!離せ!」
ヒルタ「前々からお前の事をマークしておったのだよ。ナオユキくーん。♪はーいはーいはーいはーい、武闘派のアカ野郎~」
警官たち「♪はーいはーいはーいはーい、武闘派のアカ野郎~」
ヒルタ「国家にあだなす売国奴め。今までよくもよくも反戦運動をしてくれたね。あまつさえ恐れ多くも畏(かしこ)くも東條英機閣下の車列に石を投げるなど言語道断!ああ、お前の居場所は彼が吐いてくれたよ。大事な大事な君のお仲間さ。おい」

佐藤、登場する。

ナオユキ「佐藤?」
佐藤「ナオさん…ナオさん…すまん」
ナオユキ「貴様」
佐藤「すまん。本当にすまない。俺、自分の家族を…殺されたくなかったんだ」
ナオユキ「貴様……いや。良い。良いんだ佐藤。気にするな、誰だってそうするさ」
佐藤「ごめんよ。海老の天麩羅、美味しかったよ……」
ヒルタ「はーいはいはい感動の再会そこまでー」

佐藤、警官たちに無理矢理連れ去られる。

ヒルタ「アカ根性はどこまで行ってもアカ根性だねー。お前らアカが特高警察に捕まったらどうなるかをじっくりとっくりと教えてやる。♪お前のカラダに~」
警官たち「♪お前のカラダに~」
ナオユキ「どうする気だ。やめろ」
ヒルタ「まずは水責めだ。おい」

警官の一人、水入りのバケツを持ち、もう一人の警官がナオユキの頭をつかみバケツの中に突っ込む。

ナオユキ「ぶぐ、ぶぐ、ぶぐ…プハーッ!」
ヒルタ「どうだ、他の活動家の居場所を吐く気になったかな?」
ナオユキ「おかげで目が覚めたぜ」
ヒルタ「む?」
ナオユキ「さっぱりと冷水で洗顔したかったからなァ」
ヒルタ「小癪(こしゃく)な。おい次」

警官、電極を手にしてナオユキの両手に電極を当てる。

ヒルタ「イッツァショーターイム!」

バリバリと電気が流れる音。照明、激しく明滅する。

ナオユキ「アビーッ!アビバーッ!」

警官、電極を離す。

ナオユキ「どぅぐお。どぅぐえ」
ヒルタ「焦げ臭いな。どうだ?仲間の居場所を吐く気になったかな?」
ナオユキ「丁度良かったぜ」
ヒルタ「む?」
ナオユキ「ひとっ風呂浴びた後の電気治療はよォ」
ヒルタ「小癪な。おい次」

警官、棒切れを手にしてナオユキの背中をめった打ちにする。

ナオユキ「えげぇっ!」
ヒルタ「どうだ?仲間の居場所を吐く気になったかな?」
ナオユキ「ありがてえぜ」
ヒルタ「む?」
ナオユキ「仕上げの乾布摩擦なんかしてくれてなァ」
ヒルタ「小癪な。おい次」

警官二人、ナオユキの右手を無理矢理広げて爪をペンチではがす。

ナオユキ「ぐげがあぁぁぁっ!」
ヒルタ「泣け、喚け、ナオユキ。アカのお前にはそれがお似合いなんだよおっ!」
ナオユキ「へっへっへっ。思ったより良いもんだぜ」
ヒルタ「む?」
ナオユキ「爪はがし健康法はよォ」
ヒルタ「小癪な。てかそれもはや無理がないか?爪はがし健康法って……爪はがし健康法って何だよ。おのれ!もうこうなったら最後の手段だ。おい。俺の服を脱がせろ!」

警官たち、ヒルタの服を脱がせる。下はピチピチのボンテージスーツを着ている。

ナオユキ「お前変態かよっ!?」
ヒルタ「うん、変態だよ。特高警察は八割が変態だよ。変態じゃなきゃやってけないんだよ。そもそも変態じゃないと人に拷問とか生理的に無理な職業なんだよ」
ナオユキ「何をする気だっ!?」
ヒルタ「決まっているのでございま~す。これからあなた様、殿方のオティムポの先端に、チュルリラ~チュルリラ~、この畳針をズブズブと挿入するのでございま~す。は~快楽の園なのでございま~す」
ナオユキ「ぶげあ。それだけはっ。それだけはやめてくれっ!」
ヒルタ「泣いても叫んでも他の活動家の居場所を吐いてもやめないのでございま~す。チュルリラ~チュルリラ~。もう吐くとか吐かないとか関係ないのでございま~す。もうここから先はアタクシの個人的趣味の拷問タイムなのでございま~す。酒池肉林でございま~す。チュルリラ~。チュルリラ~」
ナオユキ「や、やめらぁぁぁぁっ!!!!」
ヒルタ「チュルリラ~。チュルリラ~。酒池肉林でございま~す。黒木香でございま~す。魔性のワキ毛でございま~す。アタクシ、エクスタシーに達するとホラ貝を吹いちゃうのでございま~す。ぷお~。ぷえ~。チュルリラ~。チュルリラ~」
ナオユキ「ぎゃーっ!」

窓ガラスの割れる音。
M、杏里「CAT’S EYE」が流れる。
シヅイ、レオタード姿で登場。警官たちをばったばったとなぎ倒す。

ナオユキ「シヅイ!」
シヅイ「あたしのダーリンによくも拷問してくれたわね、この変態野郎。もう許さないんだから!」
ヒルタ「おのれ、女め~」

シヅイとヒルタ、学芸会みたいに立ち回り。キックの足があまり上がっていない。シヅイ、何となく勝つ。ヒルタ、「わー俺は今やられたー」とか言って去る。M、失敗したようにブツッと切れる。
シヅイ、ナオユキのロープをほどく。

シヅイ「ナオ、大丈夫?」
ナオユキ「ああ。こっぴどくやられたがね」
シヅイ「早く逃げましょう」
ナオユキ「おう」

二人、外に出る。
右往左往する群衆をかき分ける。

ナオユキ「東京の空。夕焼け色に照らされながら、東京の空はアメリカ軍機で覆い尽くされていた。爆撃機がポンポンポンポンと小刻みにそして確実に焼夷(しょうい)弾を投下していくのが見えた。もう、燃やす家など一軒も残っていないのに。家を燃やすのが目的なのではない。日本人の心を砕くのが目的なのだ。執拗(しつよう)だった。徹底的だった。彼らのやり方は。その時、一機の独特な機影を持つグラマン戦闘機が急降下してきた。ふとパイロットと目があった。少年のような顔をしたパイロットは少しすまなそうな表情で私たちに機銃掃射をしてきた」

次々と撃ち抜かれる群衆。ばたばたと倒れていく。

シヅイ「あなたっ!」
ナオユキ「シヅイ!」

ナオユキ、シヅイをかばって仁王立ちになる。
M、「ナウシカレクイエム」が流れる。

シヅイ「あなたーっ!」

照明、逆光の明かりとなり光で二人は見えなくなる。
暗転。

M、玉音放送が流れる。
しばらくしてナウシカレクイエムと玉音放送のミックス曲、フェードアウトする。


白い数字。「1946」。

明転。

シヅイ、モンペ姿に着替え終わっている。
ぐちゃぐちゃになったセットをせっせと片付けている。
しばらくしてナオユキがやってくる。

ナオユキ「俺たち」
シヅイ「ん?」
ナオユキ「俺たち将来」
シヅイ「将来…?ん?」
ナオユキ「俺たち将来チンドン屋にでもなるか」
シヅイ「ん?ん?ん?将来、ん?チンドン、チ、ん?将来チンドン、え?え?え、チン、チンドン屋え意味分かんない、え?」
ナオユキ「俺なあシヅイ」
シヅイ「はい」
ナオユキ「将来、保育園を作ろうかと思っているんだ。ほら俺子供が好きだろ。育てたいんだ。この手で。二度と戦争を起こさない子供たちを。俺のこの手で」
シヅイ「良いじゃん。応援するよ」
ナオユキ「何だ気乗りじゃないな」
シヅイ「だって。だってあなたまた忙しくなっちゃうじゃん。そしたらまたあなた仕事にかまけてあたしを愛してくれなくなるよ、きっと」
ナオユキ「そんな事、ないよ」
シヅイ「そしたらまたあたし頭おかしくなって、心がチクチクして、包丁持ってあなたを追っかけまわしちゃうよ」
ナオユキ「大丈夫。もうお前を孤独の海に独りぼっちにしやしないから」
シヅイ「ほんと?」
ナオユキ「本当さ」
シヅイ「じゃあ、あたしちゃんと応援するっ!頑張れ保育園っ!」
ナオユキ「ははは。ありがとう」
シヅイ「あ!」
ナオユキ「へ?」
シヅイ「あなたにありがとうって言われたの、きっと初めてだよー!嬉しいよー!きっと初めてだよー!」
ナオユキ「そっか」

間。

ナオユキ「そっかそっか」

間。

シヅイ「平和ね」
ナオユキ「ああ」

間。

ナオユキ「もうすぐ、もっともっと平和な時代がくるぞ」
シヅイ「じゃあ……じゃあ平和な時代になって、戦争を生き残ったまじめな日本人が戦後の日本の基礎を作って日本人超金持ちになって、でも二代目世代がバブリーな沼にハマって金融ゴッコで遊んじゃって知らない間に膨大な借金こさえちゃって凶悪犯罪とか新興宗教のテロとかいっぱい起きて、三代目になるともう空虚で頭の中からっぽでクソニートしかいなくてスマホのゲームしかやんなくなってリアルって何?とかももう全然思わない脳みそになっちゃって国民の大半が何も考えないゾンビ老人ばっかになっちゃってしまいには変な病気が流行って信じられないぐらい国がガタガタになっても?」
ナオユキ「……うん。それでも良い。戦争があるより、よっぽど。よっぽど良い」
シヅイ「そうね…………きっと。そうね」

二人、手を休めて客席を見つめる。

シヅイ「あなた」
ナオユキ「ん?」

間。

シヅイ「愛してるわ」

暗転(フェードアウト)。
M、Kula Shaker「303」が流れる。
舞台奥の幕に、大きな♥️マーク。次いで緑色の数字で「1940」「1938」「1941」「1945」「1946」「1942」「1939」「1943」等が大量に羅列され滝のように流れ落ちていく。それらが消え、大きな文字で「ナオユキ&シヅイ」。それも消えてM、カットアウトする。

明転(フェードイン)。

無人の舞台。
何もない舞台。
何も、起こらない。
カーテンコールも、ない。


                  幕。

                (2020.5.23)

戯曲「ナオユキ&シヅイ」

最後までご覧頂きまことにありがとうございました。
何とか、かたっくるしい話をオブラートに包んで皆様にお届け出来たかと思います。
なお副作用に関しましては当方全く責任を取りません。
これにてごめん。
まことにスイマメン。

戯曲「ナオユキ&シヅイ」

激動の昭和期。戦前戦中戦後を駆け抜ける若きふたり!(僕のおじいちゃんとおばあちゃん!)本格アナーキズム演劇脚本です。

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 時代・歴史
  • コメディ
  • 青年向け
更新日
登録日
2020-05-23

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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