純潔

 ララ、きみのためなら花をも、摘もう。
 だれにもみえない、おそらく、ララにしかみえないものが、星のすきまで静かに呼吸をしている。きょうも、きみは、あの空のしたで、やさしさをくだいて、だれかにあたえているのでしょう。ドーナツをわけあうみたいに、ケーキを切りわけるみたいに。空白とは、いつも、となりあわせで、ララが、わたしのからだから抜けおちたあとの、わたしのからだは、まぎれもなく、あなのあいたチーズであり、ただの、肉のかたまりである。ソフトクリームをたべながら、土曜日の、すこしだけ鈍い感じの空気の音や、調子のわるいラジオからきこえてくるような人間の声にまじって、例の、ララにしかみえない、星のすきまで静かに呼吸をしているものの微かな息づかいが、わたしにもきこえて、なんだか憂鬱になる。こういうときは、きみのやさしさを、ひとりじめして、きみだけのやさしさに、おしつぶされて、ねむりたいんだ。ララが、あの、華奢なからだいっぱいに抱えるのならば、白い百合がいい。ぜったいに。

純潔

純潔

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-05-23

CC BY-NC-ND
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