純潔
ララ、きみのためなら花をも、摘もう。
だれにもみえない、おそらく、ララにしかみえないものが、星のすきまで静かに呼吸をしている。きょうも、きみは、あの空のしたで、やさしさをくだいて、だれかにあたえているのでしょう。ドーナツをわけあうみたいに、ケーキを切りわけるみたいに。空白とは、いつも、となりあわせで、ララが、わたしのからだから抜けおちたあとの、わたしのからだは、まぎれもなく、あなのあいたチーズであり、ただの、肉のかたまりである。ソフトクリームをたべながら、土曜日の、すこしだけ鈍い感じの空気の音や、調子のわるいラジオからきこえてくるような人間の声にまじって、例の、ララにしかみえない、星のすきまで静かに呼吸をしているものの微かな息づかいが、わたしにもきこえて、なんだか憂鬱になる。こういうときは、きみのやさしさを、ひとりじめして、きみだけのやさしさに、おしつぶされて、ねむりたいんだ。ララが、あの、華奢なからだいっぱいに抱えるのならば、白い百合がいい。ぜったいに。
純潔