subtle(番外編)

水野葵

Hate me

「―――ァっ!」

 いつまでもグダグダとうるさいんでひと思いねじ込む。
 すでに熱くなっていたそこは、すんなりとボクを飲み込んだ。

 甘ったるく響く声にボクはにんまりとほくそ笑む。
 嫌だ何だと騒ぐクセに、こうやってつながってしまえば
 素直に反応を返すんだから、キミもずいぶんとタチが悪い。

 身体(からだ)は正直だね、なんてうっかり軽口を(たた)いたら
 思いっきりビンタをされて、ボクは小さく息を吐いた。
 ジリジリと頬が痛む。何も本気で叩くこたァないだろうに。
 
「〜〜〜ッ!」

 腹が立ったんでめちゃくちゃにしてやった。
 散々(さんざ)()かせてぐったりしたところで
 一番奥に放ってやる。にっこりと笑って。

「何を ―――?」

 見せつけるように引き抜いたら
 なかからどっと白いモノが(あふ)れた。

「お前 ―――ッ!」

 起き上がろうとして力なくくず折れる。
 ムリだよ。キミ、疲れてるんだって。
 今夜はもうおとなしく寝なさいよ。

 そんな考えとは裏腹に、
 ボクは意地悪く言ってやった。

「困ったねェ」

 案の定、物凄(ものすご)い形相で(にら)まれて
 ヒドく、派手に、口汚く(ののし)られた。

「誰がお前の子どもなど……ッ」

 その言葉が胸に突き刺さる。

 ボクだって、と首をすくめてみせると
 キミの白い腹にそっと口を付けた。

 子どもねェ……

「これ以上、キミと厄介なコトになるなんてゴメンだよ」

 できていたらいいのに、と思う。

 ボクを(さげず)むその目で子どもの顔を見つめて、
 ボクを罵るその口で子どもの名前を呼んで、
 ボクを拒むその手で子どもを抱きしめたらいい。

 ボクを嫌うキミのまま、ボクの子どもを愛したらいいのに。

 そうしたら、ボクは ―――

「私はお前が嫌いだ」

 ぽつりとキミが(つぶや)く。
 奇遇だねェ、と返す。

「ボクもだよ」

 細い腕が伸びて髪を()でる。
 嫌いだ、と繰り返し言うクセに
 その手付きはヒドくやさしい。

「大嫌いだ」

 キミの薄い胸に頬を寄せて、
 ボクは(つか)の間の夢を見る。

 決して来ることのない、遠い日の夢を ―――――


 日本語題:見果てぬ夢

subtle(番外編)

subtle(番外編)

『subtle』の番外編です。 ※こちらの掲載は月曜日までです。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日 2020-05-20

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted