5月18日

西木眼鏡

 もう随分と長い間待っているような気がしますが、まだ1週間だということに正直驚いています。
 この通信はまだ届かないのでしょうか、それとも電波の折り返しの途中なのでしょうか。
 元気にしていてとあなたは言いましたが、できるわけはないのです。あなたは私の一部だったのですから、今はただ貴方が帰ってくるのが待ち遠しいです。地球からはるか25光年先の星を目指しているのですから、そう簡単に通信できないということは私も知っています。
 宇宙の中心から地球は徐々に遠ざかっているのだと子供の頃に本で読みました。貴方が目指している星とは反対方向に遠ざかっているとしたら、この通信も届かないのではと心配になります。
 無事でいますか。それならば私は貴方の帰りを待ちつづけます。
 他の人の幸せなど私にとっては雑音でしかないのです。毎日、通信局に届く電波の中から貴方からの通信がないか探しています。他にも多くの船が太陽系外の星を出たのですから、私のいる地球には嫌というほどの通信が来るのです。
 貴方が惑星探査の任務に出ると聞いたときは誇らしく思いました。あの引っ込み思案だった幼馴染みが、部屋の隅で本ばかりを読んでいた貴方が宇宙を目指すと言い出したとき、私はとても嬉しかったのです。
 それからひとつだけ謝らなければならないことがあります。こっそり机の上に置きっぱなしにしてあった書類を見てしまったことは申し訳なく思っています。船の乗組員を見てしまったのです。仕事とはいえ、私以外の女性と長い航行の間、一緒にいることを考えたら不安になってしまったのです。素直に貴方を信じることができなかった私が悪いのだわ。ごめんなさい。
 地球を出る日、私にくれたブレスレットを今まで大切に身につけています。貴方とお揃いだっていうからつい嬉しくなってしまって。貴方が地球に帰ってくるまでに何度誕生日が来るかしら。同じ数だけのプレゼントを用意しているつもりです。そのかわり、貴方がは私に指輪をください。貴方が行った星で見つけた石で作った指輪。星に到着して、この手紙を思い出した時に、ふと、足元を見てください。私、その石がいいわ。きっとその石を地球に持ち帰って、指輪を作って私の左薬指につけてください。
 あまり私が書きすぎるとが大きくなる他の人が送る容量がなくなってしまうのでこれくらいにしておきます。一度に送信できる量には限界があるんですって。
 どうか元気にしていてください。

5月18日

5月18日

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日

CC BY-NC-ND
原著作者の表示・非営利・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-NC-ND