メシア篇其の6

これちかうじょう

  1. 交換日記、再び
  2. 涙の綺麗な夜空に
  3. イエスタデイ

夏服になったらどこかに出かけよう、と言った。
電車に乗って、どこかの海に行こう。
でもそれは俺の夢。
夢を叶えるためには、犠牲だって必要だ。

交換日記、再び

破られないで済んだ、と僕は胸を撫でおろしている。
せっかく重ねてきた奇跡のような文章のやり取りを、僕は何度も読み返す。
素直だなあとか、拗ねてるなあとか、
いろんな君の姿をそこに見る。
それが、少しだけ行き詰った勉強の合間にする息抜きだった。

大地へ

最近は夏服も合ってきたというか、そういう気候になりましたね。
蒸し暑い夏は嫌いですが、
うちの学校にはクーラー設備があるので、
それはそれでかなりの救いですね。

古関先生のことは院長先生に相談しました。
今後はどうなるのか、僕には分かりません。
でも、僕は君を救いたいと思っています。
君だけの救世主になりたいと、そう、思っています。
傲慢かも知れないけど、
僕は、君が好きだからそうしたい、そうでありたいと思います。

天野真咲

とここまで書いて、我ながら堂々たるもんだなと思ってしまう。
まず、男子が男子を好きだっていうのが世間的に大丈夫かなとか、
そもそも大地が何を言ってるのか分からないときがあるので、
それを理解しないと前に進めないと思ってしまう。
大地は何を僕に思い出させたいんだろうか。
そして、古関先生のこと。
先生と大地は、どんな関係なんだろうか。
普通、ただの教え子にあんな薬、渡すだろうか。
それに古関先生は確か、1年7組の担任で、生徒会の顧問というだけで、
…ああ、書道部の顧問もやってたっけか。
まだまだ若い先生だし、一ノ瀬の話だとかなりのできる先生らしいし、
(お昼の校内放送でゲストになったことがあったらしい)
そんな先生が覚せい剤をねえ、と僕は首を傾げる。

追伸

大地、古関先生とはどんな関係なのかな?

涙の綺麗な夜空に

「…どんな、関係」
知ってるくせに、と俺は思ってしまう。
夏服になったらどっかに行こうって誘ってみたのに、
保留にされちゃったしな。
あの日は、…あの日も、夏服だったんだけどな。

真咲へ

「…」
続きが思うように書けない。
書かないと思い出さないかな。
そもそも、思い出させて何になる?
この戦いに、終止符が打たれるとでも?


真咲へ

冬馬は、


「…何でだよ、何で」
だらだらと涙が出る。
こんなんなっちゃったの、全部全部、全部が全部。


真咲へ

冬馬は、俺の初めての人。

猪瀬大地

イエスタデイ

「…」
絶句した。
思い出せないことが、書かれてあった。
そもそも、僕は何も知らない。
大地が、先生とそういう関係だったことも、
今もそれが続いているのかどうかも、知らないんだ。
でも、それを書いてくれたってことは。
そういう、ことだろうか。

大地へ

今度、ゆっくり話しませんか。
君のことを知りたい。

天野真咲

メシア篇其の6

犠牲にするのは俺の心だけでいい。

メシア篇其の6

夏服になったらどこかに出かけよう、と言った。 電車に乗って、どこかの海に行こう。 でもそれは俺の夢。 夢を叶えるためには、犠牲だって必要だ。

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