気ままに生きた日

気ままに生きた日

 電車に乗った。街まで一時間。初めて読む作家の詩集を開いて言葉を感じていた。片道で読み終えてしまった。余白が語るものが愛おしいと思った。

 駅からつながるビルへ向かい、たまに行くセレクトショップで今まで買ったことのないブランドの福袋を予約した。ネットで見て可愛いと思ったからと、完売寸前の文字に迷いは消えた。

 ビルの中にある本屋で、読んだことのない作家の小説を買った。ハードカバーの表紙の手触りが心地よかった。

 駅に戻って入ったことのないチェーンの喫茶店に入った。黒糖入りコーヒーがウリだったが、練乳入りの豆乳ラテを選んだ。耳栓で店内の騒がしさを遮断し、買ったばかりの小説を読んでいる風を装って考え事をした。何を考えていたのかは覚えていない。きっと冷めたホットコーヒーが好きと言うとアイスコーヒーを飲めば? と言われることへの憤りとか、そういうことだったと思う。

 コーヒーを飲みきって店を出た。電車に乗って家とは逆方向の電車に乗った。少しだけ遠回りをして、車窓から濃紺の空を眺めていた。

 今日も気ままに生きた。満たされた心地だった。

気ままに生きた日

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気ままに生きた日

決めないという自由。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-05-18

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