猫の気持ちがわかりますか....小野小町

山田小町

猫の気持ちがわかりますか....小野小町

まえがき
猫の気持ちが分かりますか。人さまにに聞いても分かるわけがない。串の先が口に突っかかる...串団子のようなご主人さまと、いろいろな事情を抱えた野良猫との日々の暮らしをシミリー、比喩を小道具にして語りかけています。床を3回手でたたくときは、こっちにこい。1回のときはあっちに行け、2回のときは勝ってにしろ。頬に手のひらをあてると好き...返すときらい。分銅天秤、おちょことぐい吞み...お椀が活躍します。

猫の気持ちがわかりますか....小野小町

猫の気持ちがわかりますか....小野小町

はい...小町ちゃんですよ。
美人過ぎてごめん、
そして、許して。

寒い寒い...ビルの路地裏。わたしたちが生まれた銀座ねこ通りには、絹糸のような風が口笛ふいて通りぬけていました。
以前、ご主人さま一家が住んでいた家も古かったので玄関のすき間から寒さが冷んやり抱きついてきました。
猫は炬燵でまるくなる...こたつがほしいのに、贅沢言うな...ご主人さまの一言で小さな電気じゅうたんで我慢。
冬は洗面所の横にある大きな温水器の上でわたしと兄のきなと交代で体を温めていました。
洗濯置き場と洗面所の仕切り戸を開けると大きな三面鏡があります。

どんな顔か...見てみるか。ご主人さまが覗かせてくれました。

美人だとは思っていましたが...天使のような顔立ちにびっくり。
風が吹けば桶屋が儲かる...その桶のタガが外れたように腰がくだけ、体の重心がバラついた程です。

そこで、猫である山田小町と小野小町...どちらが美人であるかはっきりしておく必要がありそうだ。

ふしぎなことに小野小町の絵はうしろ姿のものが多く...絶世の美女である資料が不足している。
かみ砕けば猫であるわたしの方が美人になりうるが、確証コードを世間さまに送らなければならない。

星とふん転がし...天文学を応用してみた。

星座におしりを向けてふんを運ぶ...ふん転がし。
現在と過去...分岐点にペルセウスの剣をさし、ふんの運ばれた方が美人と云う証明を成立させる。
考えたのが猫ですから、猫のいいように...ふんは山田小町の現在に...まよわず運ばれる。
確証コードは暗号化され、世界三大美人の一人は小野小町ではなく山田小町と返送される。

おい、猫。そこでなにをぶつぶつしゃべってんだ。
猫と呼捨てにするときのご主人さまは大変不機嫌な証拠です。世界三大美人の空想のが世界が、ちぎった紙くずのように吹っ飛んでゆく。

右手をちょいと上げる...何かご用ですか、あるいは分かりましたの手ことばで返事をかえす。

ほら、虫が入ってきた追い返せ。
左手をちょいと上げ...左足をぴクッと動かす。天井の虫には手も足も出ません、とお答する。
それでもてだめなら早口でニヤニヤニヤーンどなる。
寝転がってテレビ見てるな、自分でやんなさい...怒ってさしあげます。

お話しを戻します。

小野小町は美人さながら歌人でもあったんです。
【思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを】
千年も前に彼女が詠んだ歌です...思う人に会えたのに夢のなか。夢なら目を覚まさずにいたかった。
千年も色あせず恋心が夕焼け空の...真綿のような雲にやさしく切なく包まれている。
感動、感激で涙がバケツにあふれそうだ。

ご主人さまの本棚にはお仕事関係の料理の本とシャガール ゴッホ ロートレック ピカソなどの写真集が積まれています。
一冊だけ...なぜか、多分、焦げついた紙の色からして古本屋で買ったものと思われる歌人集がまぎれ込んでいます。
猫であるわたしは窓の風がめくる歌人集を読むのが...ご主人さまから頂いたストレスを解消する唯一のすべです。

お話しを戻します。
小野小町にまさるには歌人としても活躍しなければいけない。

<さにあらずよろずの方ぞひさかたの光欲さば小銭放つ>。

行いが神様のような人もわずかなさい銭で神様におねだりする...恐縮ながら歌人山田小町の、丹念にこねて詠んだ駄作...深く鑑賞しないでください。

虫がよほど気になるらしい...布団叩きを持って追いかけるご主人さま。
天井、窓ぎわのうえ、ドアのうえ、敵はたかいところを逃げまわる。
短い足ではむり...脚立を補充しないと。
黙って見過ごすこともできない。ただ食いと云われるまえに手伝うか...猫であるわたしはしっぽをくるくる回し虫をおびき寄せようとした。

なのに...ねこねこ、じゃまじゃま、どけどけ。
せっかくお手伝いしても邪魔者あつかいされてしまいました。

このときの猫の気持ちが分かります。

分かるわけがない...分からないと云うあなたに...あなたの前に灰皿をお出しします。

禁煙途中...さかなの焼くけむりを見ただけで途中下車したくなる。
一本、いや、一服...タバコを吸いたい気持ちが周波数になってあばれる。
まして灰皿を目のまえにしたら気がくるう。
吸いたい吸いたいのに吸えない...いらつき。
ボールペンですりつぶした渦巻状の台風の目...焦げついた鍋底にこもる熱、神経をストローでかき混ぜてしまったような...
このいらつきこそ、親切心を無視された猫の気もち...憂うつでございます。

分かって頂けました...。

はい、小町ちゃんでした。【次はご主人さまと短足のお話しです。】

猫の気持ちがわかりますか....小野小町

猫の気持ちがわかりますか....小野小町

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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