宵闇の契り

 どうか、誰にも知られませんように。(アイリス・オルガーン『絵画のなかで』)

 わたしにとっての心の平穏は、他者を求めずにいられることだ。とこしえの苦痛がやわらぐ、一瞬の無重力を持続させること。ひとえに丹念な所作をもって現実の輪郭を揉みほぐすのだ……日々の細々とした雑務によって生活を彩るように。そうして痛みを遠ざけながら、おだやかな闇のなかに棲んでいると、よりいっそう幻想は澄んで景色に染みていく。そこに醜いものなどなく、世界はまだ絵画のままだ。

宵闇の契り

宵闇の契り

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-05-14

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