つぎはぎの星

 月が腐ってゆくのをただ見ているあいだはひたすらに憂鬱である。二時の君はダンビュライトのように無色で爪を噛む仕草に宿る幼さを時々ぐちゃぐちゃにしたい。なまえもしらない鳥が鳴いている。鳥も眠れないのだろうかと考えるときの思考の澱み。宇宙はもうすぐそこで月は手を伸ばせばつかめるところまできている。腐食した月の破片をあつめる少女たちが爛れたそれで星を修復するのがおぞましいと君は云う。どうにもこうにもすべてはおわりそうでおわらないのだ。どこかでなにかがおわっても別のところでなにかがはじまってゆく。そして廻る。はじまりとおわりのループ。
 悠長にコーヒーを飲んでいれば海は小さくなるばかりで。
 おなじ顔の少女たちが拾いあつめる月だったものは僕らの星に成り果てて故に二度と月に戻ることはない。肉体を離れた細胞。本体が壊死しないよう切り離された部位。故郷をうしなった旅人。眠れないという理由で僕を弄ぶ君の指が青白く光って真夜中のあの生きものたちがみんな一時呼吸を忘れた空気の軽薄さに臓器のすきまがどことなくさみしい。

つぎはぎの星

つぎはぎの星

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-05-08

CC BY-NC-ND
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