ウイルス-生き死にはウイルスだけじゃない-

このウイルス戦争の真っ只中、一人の老人が、私の所に話にやって来た。
彼は、
「今までお世話になって、ありがとう。」
実は、と、彼の肝臓に癌が見つかって入院することになった。と、私に告げた。
私は、「良くなって、また、来て下さいよ。」
と言ったが、どうも彼の様子は、このまま死ぬだろうと、覚悟をしている様子だった。
その老人は、85歳、高校野球が好きでシーズンには近くのグラウンドで試合の観戦をするのを毎年楽しみにしていた。
今年はウイルスの影響で、高校野球が中止になった。
毎日感染者と死者の数は増え続けているけれど、私の村ではまだ感染者はいない。
村人たちも近隣の市町村の人達も、緊急事態宣言が出されても実感がわかないようで、密集に対しての緊張感がない。
そんな中での肝臓癌での入院の話しとおそらくもう会うこともないだろうという、別れのあいさつだった。

当たり前なこどだけれど、感染して肺炎が重症化だけじゃなく、人の生き死があり、別れはあるのだ。
と思い知らされた。
感染に怯え不安と緊張で、血圧が10位上がっている最近の自分はいったい、何をどう見失っているのだろう?

真っ暗闇だからこそ、見える光っていったいどんな光なんだろう?

村の大きな工場ウイルスの患者が出たと、噂が立った。

村の福祉協議会と保健所の職員が慌てて、その会社に事実確認に出向き、クラスター感染も何もない全くのデマだった事が判明した。
まわりの地域では、感染者がどんどん増えて行く。

ウイルス-生き死にはウイルスだけじゃない-

ウイルス-生き死にはウイルスだけじゃない-

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • 時代・歴史
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-05-07

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